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タケルとトオル  作者: みゆき
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トオルの訪問

 トオルが深山家に訪問する日が来た。


「家族みんなで、トオルくんを歓迎しよう。」

 トオルの訪問を打診した時ソウタがそう提案してきて、タケルは驚いた。

 ソウタの申し出はすごく嬉しかったのだが、トオルの性格を考えると不安になる。

「えっ、すごく嬉しいんですけど、でも、トオルは人見知りが激しくって・・・。」

「うん、北村先生にも聞いている。でも、その方がトオルくんもいいんじゃないかって思うんだ。何だか相談があるようだし、みんなで考えた方が、いいアイデアが浮かぶかもしれないしね。」

 結局、ソウタに押し切られてしまった。


 そして、当日になってワタルまで参加すると聞いて、タケルは本当に驚いた。

「ワタルさんまで、忙しいのに大丈夫なの?」

「ああ、俺もトオルくんに会いたいんだ。すごく優秀だって言ってただろ?いい刺激になりそうだ。」

「私も、会いたかったわ。タケルの話を聞いてると、何だか繊細な美少年ってイメージで、すごく楽しみ。」

 少しオシャレをして無邪気にはしゃぐトウコに、タケルはため息をついた。


 午後になって玄関のチャイムが鳴り、トオルが初めて深山家へやって来た。

「いらっしゃい、トオルくん。よく来たね。」

 ソウタがにこやかに歓迎の意を表した。

 深山家全員で出迎えられて、トオルは少し緊張しているようだ。珍しく戸惑っているのかもしれない。

「初めまして、北村トオルです。今日は、突然お邪魔してすみません。」

 しばらく間を置いて、トオルはそう挨拶をした。

「いや、俺も会いたかったんだ。タケルや北村先生に君のことは聞いていたよ。」

「ご家族皆さんに、出迎えていただけるとは思いませんでした。」

 トオルは、恐縮したような素振りを見せる。タケルは、いつもと違うトオルの姿に少なからず驚いた。

 戸惑うトオルに、ソウタがにっこりと笑いながら言う。

「君はタケルの家族だろ?それじゃあ、俺たちの家族でもあるんだから、遠慮はいらない。」

 タケルは、ソウタの言葉が嬉しかった。そんな風にトオルを受け入れてもらえるなんて、改めて深山家に来れたことに感謝した。


「トオルくん、初めまして、いらっしゃい。本当に、美少年なのね。会えるのを楽しみにしてたわ。」

「・・・、えっと・・・、初めまして」

 トオルは、自分が美少年と評価されたことに戸惑っているようで、しどろもどろでトウコに挨拶をしていた。

 それでなくても人見知りが激しいのにと、タケルはトオルに同情した。

「トウコ、トオルが怖がってるぞ。」

「タケルとは真逆なのね。トオルくん、そんなに怖がらなくても大丈夫よ。とにかく、あなたを大歓迎するってこと。私のことはトウコって呼んで。」

 トウコの明るい笑顔に、トオルは安心したようだ。やっといつもの落ち着いた表情に戻った。

「ありがとう。僕の所は2人とも無口で静かだから、少し驚いたんだ。こんなに賑やかな雰囲気は村にいる時みたいで、懐かしいよ。」

「それって、タケルが1人でうるさかったってこと?」

「そうかもしれない。」

「なんで、俺がうるさいって話になるんだよ!」

 いつの間にか、2人の話のネタにされたタケルの抗議に、みんなで大笑いをした。


 ソウタがトオルをリビングへと案内した。ユミとトウコがお茶の準備をしている。

 ユミは朝からどうも、元気がない。今日の話し合いのことを心配しているようだった。多分、子供たちの反応が怖いのだと思った。

 心配するユミとは対照的に、トオルはすっかりリラックスしたようだ。タケルはトウコのコミュニケーション能力の高さに、改めて驚いた。

 思えば、タケルが最初に来た時も、トウコのこの明るさでタケルの緊張は解け、家族にすぐに馴染めたのだ。

 タケルは、ソウタがトウコまで一緒に参加させようとした意図が、何となく判ったような気がした。

 トウコには、どんな事もしなやかに受け入れることができるような強さを感じる。何を聞かせれてもトウコは変わらないだろうと、タケルは楽観的にそう思っている。それはトウコを、心から信頼していると言うことなのかも知れない。


「タケル、お前の後見人が深山先生の家で良かった。お前は僕のことを心配しているけど、僕だって心配してたんだ。まぁ、お前の話を聞く限り、ここで可愛がってもらえてるのは判ってたけどね。深山先生、これからもタケルのことよろしくお願いします。」

 まるで保護者のようなトオルの言葉に、ソウタは微笑みながら答えた。

「もちろんだよ。タケルはもう、うちの家族だと思っている。君もそうだよ。さっきも言ったけど、タケルの家族は俺たちの家族でもある。北村先生からも、君たちがどんなに仲が良かったかは聞いている。だから何も遠慮はいらない。君は今日何か悩みがあってここに来たんだろ?」

「悩みというか・・・、まだ自分でもよく判ってないんですが・・・。気になることがいくつかあって、それが別々のことなのか、それともどこかで繋がっているのかもしれないのか・・・、とにかくまだ情報が足りていないんですよね。」

 トオルは、言葉を選びながら話しているようだ。少しソウタの反応を窺っているのかもしれない。

「なるほど。俺が何か知っていて、ここに来ると何か判るんじゃないかと?」

「そういうことです。」

「・・・分かった。君の疑問を聞かせてくれ。」

 ソウタはしばらく考えるようなそぶりを見せていたが、やがて覚悟を決めたようにトオルに話すように促した。

 ソウタの態度に、トオルも吹っ切れたようでソウタの目を見つめて話し出した。

「では単刀直入に聞かせてもらいます。僕らはどんな遺伝子操作で生まれてきたのですか?サーちゃんはなぜ僕らを連れてあの村へ行ったのですか?」

 ソウタは覚悟を決めたものの、あまりにもストレートな質問に目を丸くし、やがて苦笑いをした。

「驚いた。本当に単刀直入だね。」

 トオルは少し微笑みの表情を見せて、ソウタを見つめた。

「少し、タケルの真似をしました。多分あなたに遠回しな質問をしても仕方が無いような気がして。それにどんな事を聞かされても受け入れる覚悟は出来てます。ただ・・・。」

 トオルは少しトウコを気にする様子を見せた。多分トウコは何も知らない。タケルもトウコが心配になる。

「私も聞きたい。タケルが来た時から私も気になっていた。だって、ワタル兄さんとタケルは本当にそっくりなんだもの。親戚ってだけじゃ無いことはわかっていたし・・・。本当のことを知っても2人とも私にとっって大事な人には変わりない。だから私にも聞かせてほしい。」

 トウコも何か思うことも多かったのだろう。真実を聞いても深山家に対する信頼は揺るがないとトウコの目は語っていた。

「・・・分かった。じゃあ俺も覚悟を決めよう。ユミもワタルも良いかい?」

 ワタルは、黙って力強く頷いた。

「はい。」

 ユミは少し震えながらも、ソウタに同意した。ユミの時折見せる戸惑いの表情はそこには無かった。ユミも覚悟を決めたのだろう。


「最初は、ほんの思いつきの発想だったと聞いている。」

 ソウタは、一度みんなの顔を見回して静かに語り出した。

 

 

 



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