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タケルとトオル  作者: みゆき
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深山家の人たち

 トオルを送った後、やがて車は深山家に到着した。

 タケルは、代議士と聞いて立派な邸宅を連想して緊張していたのだが、案外こじんまりとしたその家に、少し肩透かしを食らったと同時に、大きく安堵した。

 ただ、外からも綺麗に手入れがされているのが分かることで、そこに住む人の人柄が現れているように感じた。


「あなた、誰?」

 タケルが玄関に向かおうとした時、驚いたような声で呼び止められた。

 振り向くと、黒曜石のような澄んだ瞳の綺麗な顔をした、長い髪の少女が驚いたような顔をしてこちらを見据えている。


「トウコさん、こちらが今日からここに住むことになったタケルくんです。」

「あなたが・・・。」

 トウコと呼ばれた少女はじっとこちらを見つめたままで、タケルは落ち着かない。

「えっと・・・ここの家の人?俺、タケルって言うんだけど・・・。」

 タケルはしどろもどろに自己紹介をした。

「あっ・・ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃった。私、渡辺トウコです。」

 トウコはやっと我に帰ったようで、微笑みながら挨拶をした。

「なんで、俺を見てそんなに驚くの?」

「タケルくん、とりあえず家に入りましょう。深山先生も待っていますから。」

 篠山が、タケルの疑問を遮り、急かすように言った。

「そうね、中に入りましょう。」

 トウコも続くので、タケルは仕方なく彼らについて家の中へ入っていった。


 タケルは、深山夫妻が待つ居間へと通された。

 夫妻は、タケルの顔を見てやはり驚いたような顔をし、そしてひどく戸惑っているようにも見えた。

「深山先生、タケルくんをお連れしました。タケルくん、こちらが深山ソウタ代議士とユミ婦人だよ。君の後見人だ。先生、私はこれで失礼します。」

 篠山は慌ただしく紹介をして、そのまま出ていってしまった。


 ソウタは、トレーナーにデニムパンツを履いている。結構鍛えているのだろう、バランスのいい筋肉が服の上からも見てとれる。二重のくっきりした目と凛々しい眉毛が写真で見るよりも若々しく見えた。

 婦人のユミは、背が低く、少し痩せ形で、全体的に小さく可愛らしい印象がある人だった。

 

「タケルくん、待っていたよ。君とは、赤ちゃんの時にあっているんだよ。大きくなったね。俺は深山ソウタ、こっちは妻のユミだ。俺は代議士になる前は医者をしていてね。北村先生は俺の指導教官だったんだよ。」

 ソウタは目を細めながらタケルにそう言った。

「北村タケルです。よろしくお願いします。・・・ところで、皆さん俺を見てすごく驚かれているんですけど、なぜですか?」

 タケルは物おじすることもなく、ここに着いた時からの疑問をソウタにぶつけた。

 

 タケルのストレートな質問に、ソウタは思わす笑い出した。

「ごめんごめん。みんなにそんな目で見られてたら、そりゃ、落ち着かないよな。」

「すみません。俺、何がなんだか分からなくて。」

 タケルはそう言いながら、豪快に笑うソウタに親近感を持ち始めた。

「夜になると分かることだと思うんだけど、ウチにはもう1人いてね。君よりも7つ年上なんだけど・・・名前はワタルと言うんだ。」

「ワタル?俺たちと名前が似ている・・・。」

「・・・そうだね。君はそのワタルにそっくりなんだよ。あんまり似ているもんだから、みんなびっくりしているんだ。北村先生から写真を送ってもらってたから、ある程度は知っていたんだけど実際会ってみると、本当にそっくりで・・・今はまだ詳しく言えないけど、君は俺たちと血が繋がっているんだよ。」

「えっ!それは、親戚ってことですか?」

「まあ・・・そのようなもんだ。」

 タケルは本当に驚いた。自分に血が繋がっている人がいるなんて、想像もしていなかったし、その事は純粋に嬉しかった。

(それにしても、なんでこんなに歯切れが悪いんだ?)

 タケルは、ソウタが必要以上に言葉を選んでいるように思えてた。隣に座るユミもずっと黙っていて、タケルにどう接して良いのか分からないようだった。

 

「タケルさん、部屋へ案内するわ。」

 一通りの挨拶を終えると、トウコがタケルにいった。

「ありがとう。でもタケルでいいよ。”さん”付で呼ばれるとなんだか照れる。」

「ふふ、そうね私もトウコって呼んで。こっちよ。」

 2人のやりとりを見ていて、ソウタが声をかけた。

「君たちは、気が合いそうだね。君が早くここに慣れるように、俺たちも頑張るよ。ねえユミ。」

「え、ええ、そうね。タケルくん、よろしくね。」

 ユミが初めて口を開いた。その声は思いのほか柔らかく、優しく響いたので、タケルは別に拒絶されているわけではないのだと安心した。


 2階の部屋に通された。

 ベットと勉強机だけのシンプルな部屋だった。

「タケルの趣味とか分からないから、とりあえず必要最小限なものしか置いてないの。次の日曜に一緒に買い物に行って全部揃えるわよ。」

「えーっ。別にこれで十分だよ。別に趣味とかないし。」

「だめ、新京市の案内とか地下鉄の乗り方だとかも説明するんだから、一緒に行くの!」

「わかったよ。」

 トウコは、意外に気が強い。ミドリといい、タケルは気の強い女の子に縁があるようだと苦笑いをした。

「そういや、さっき渡辺って言ってたけど・・・。君も俺と同じように、深山さんに後見人になってもらったの?」

「えっ。ああ、私は5歳の時に本当の両親が亡くなったんで、ここに引き取られたの。」

「あっ、ごめん悪いこと聞いちゃった。」

 タケルは、慌てて謝った。

「いいのよ。すぐ分かることだし。深山のパパもママも本当の娘のように可愛がってくれてるし。兄さんも優しくしてくれてるから、私はすごく幸せよ。」

「そうなんだ・・・。」

 タケルはものすごくバツが悪かったが、トウコはまるで気にしていないという風に笑った。



 

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