轟博士
新京市駅に着くと、迎えの車が来ていた。
迎えに来た人は、篠山という男で、タケルの後見人になる深山ソウタの秘書だと自己紹介をした。
深山ソウタは代議士で、タケルもニュースか何かで見たことがある。そんな人がなぜ、タケルの後見人になってくれるのかは分からない。
本人が迎えに来たかったのだが、さすがに目立つし、マスコミに変に勘繰られても大変だと言うことで、篠山が代わり来たと説明された。
車の中から見る新京市は、想像を超える大都会だった。
幅の広い道路には並木が並んでいるし、見た事もない高層ビルが所狭しと建っていた。そんな景色がずっと続いているのだ。
新岡山も都会だと思っていたが、規模がまるで違うことにタケルは面食らってしまった。
何よりも、道を歩いている人の数がすごく多いし、歩く速度が速い。
顔見知りばかりだった村とは大違いである。
横に座るトオルの顔を見てみると、トオルも珍しくキョロキョロしている。
(トオルでも、こんな大きな街を初めて見たらドキドキするよな。)
タケルはなんだかおかしくなって、1人でニヤニヤ笑ってしまった。
新京市は、フレアの後に新しく造られた首都である。
同心円状に環状道路が4本、それを東西南北に大通りが貫いている。北の端に新京市駅があり、地下鉄が大通りと環状道路の下に走っている。中央には官庁街、その周りをオフィス街と繁華街が取り巻いている。都市の外側に住宅街が広がり、その中に教育機関が点在していた。
タケルとトオルは街の西側に住む。通う学校は南側なので2人は地下鉄で通学することになると教えられた。
地下鉄はこの街にしかない交通機関だ。タケルは初めて乗る地下鉄に、ワクワクしていた。
「地下鉄、楽しみだなぁ。」
「最初だけですよ。そのうち混雑した車内に、辟易すると思いますよ。」
タケルの無邪気な言葉に、篠山は笑いながら言った。
車は、街の案内をしながら走り、やがて轟と書かれた表札のある家に泊まった。
「トオルはここに住むのか。なんて書いてるんだ?」
「トドロキって読むんだよ。」
「難しい名前だな。」
2人の会話を横に、篠山がインターホンを押した。
インターホン越しにトオルが到着した旨を伝えると、しばらくして玄関のドアが開く。
背の高い、細身の男性が出てきた。
「この方が、轟博士です。博士、この子達がトオルくんとタケルくんです。」
篠山が簡潔に紹介をした。
轟博士は、白いシャツに黒の細身のパンツを履き、長めに切った前髪を真ん中で緩やかに分けていた。穏やかに微笑んではいるのに、なぜか冷たい印象を受けた。静かに反応する目元のせいかも知れない。サエコと年齢が一緒と聞いていたが随分若く見える。
「初めまして、北村トオルです。これからお世話になります。」
トオルが自己紹介をした。
「トオルくん、サエコから色々聞いているよ。君に会うのを楽しみにしていたんだ。」
「轟博士、トオルをよろしくお願いします。」
「君がタケルくんだね。君たちは本当に仲が良いとサエコから聞いている。いつでもここに遊びにきてくれるかい?」
「良いんですか?」
「もちろん。」
タケルは轟の申し出はとても嬉しかったが、なんだか反応を観察されているような気分になり、落ち着かなかった。
(この人は、多分何があっても冷静に周りを観察する人なんだろう。)
タケルは、会ってまだ数分しか経っていないのに、そんなことを考えていた。この人とトオルの生活が、なんだか心配で仕方なかった。




