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タケルとトオル  作者: みゆき
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フミカの日記

 フミカの家に行った日の夜、ミドリはチップに入っていたフミカの日記を読んだ。


 日記は去年の夏休み明けぐらいから始まっていた。

 毎日ではなく、何かあった時に書いているようだ。日にちが飛んでいる。

 ミドリは、フミカの心の中を覗く好奇心にドキドキしながら、読み進めていった。


 9月3日

 タケルくんが、私の絵を褒めてくれた。すごく嬉しい。タケルくんが褒めてくれただけで、すごく幸せ。


 9月7日

 ミドリちゃんは、なんであんな風にタケルくんと言い合えるんだろう。ケンカしてるみたいなのに、すごく仲が良い。私はただ、オロオロするだけ。なんだかミドリちゃんがうらやましい。


 フミカは、ミドリが思ってたよりタケルのことが好きだったみたいだ。ミドリは、タケルの行動に一喜一憂する、フミカのことを思い出す。


 10月12日

 タケルくんとミドリちゃんが私よりもずっと勉強が進んでいた。がんばらなくっちゃ、置いていかれてしまう。もっともっと勉強しなくっちゃいけない。


 10月20日

 みんなどうやって勉強してるんだろう?今日も、こんな時間になってしまった。明日も学校だ。もう寝よう。


 フミカは、学校の成績で悩んでいたようだ。勉強への悩みが綴られて行く。


「フミカって、そんなに勉強できないって感じじゃなかったけど・・・先生も褒めてたし・・・。」

 ミドリは、独り言を言いながら読み進めていった。


 10月24日

 今日、サッカーの試合があった。タケルくんがゴールを2本も決めて、試合に勝った!タケルくんすごいなぁ。ミドリちゃんもそうだけど、あんなふうに活発になれたら、自分にも自信が持てるのかなぁ。


 どうもフミカは、自分のコンプレックスを日記に多く書いていたようだ。誰にも言えない、悩みというほどでもない心のモヤモヤを日記に書くフミカの行動は、ミドリにはよく判らない。

 ミドリは、フミカがこんな風に思ってた事に少し戸惑う。


 日記は、タケルへの想いとフミカのコンプレックスが、行ったり来たりという感じで続いていた。


 4月3日

 今日、トオルくんの病気が治るようにみんなで神社へ行った。相変わらず、ミドリちゃんとタケルくんが揉めていた。2人はいつも喧嘩してるけど、ほんとに仲が良い。

 トオルくん、最近よく熱を出すけど、どうしちゃったんだろう?少し心配。

 トオルくんはいつも同じだから、辛いのが分かってもらえなくて1人で我慢してるのかなぁ?

 早く良くなりますように。


 初めて神社へ行った日のことだ。

懐かしいと思いつつ、トオルが、「いつも同じ」というところに少し引っかかった。

「フミカ、まるで大人みたいなことを・・・。」

 確かに、大人達はトオルのことをそういう風に言ったりすることはある。


 4月15日

 トオルくんが元気になった。

 タケルくん達が、やっと学校に来れて楽しそうな顔をしていると言っていた。

 私には分からないけど、2人がいうのならそうなんだろう。

 なんで、私だけトオルくんのことが分からないのだろう。なんだかそれがダメなことみたいで、分かっているふりをしているけど、なんだか悲しい。


 ミドリは軽い衝撃を受けた。

 大人はともかく、子供にはトオルが何を考えているのかなんて、分かって当たり前だと思っていたのだ。

 

 5月3日

 今日はディスカッションの日だった。

 テーマは、村と町の違いについてだった。ミドリちゃんは町の生活に憧れてると思ってたので、村のことをあんなに大事に思っているのが意外だった。

 あんなに綺麗で自信に溢れているのだから、新京市とかに行っても誰にも負けないと思うけど、村の方が好きだって、なんだか嬉しくなった。


「それは、フミカがいたからだ。トオルやタケルがいるからだ。」

 ミドリは以前、1週間だけ津山市の学習プログラムに参加したことがある。持ち前の快活さですぐ人気者になり、いつも子供達の中心にいたし、みんなと仲良くできてとても楽しかった。

 それでも、すごく疲れたのを覚えている。ここにいるのが本当の自分じゃないような、変な感じがずっとしてた。

 村に帰った時、凄くホッとしたことを思い出した。


 5月25日

 タケルくんが帽子を似合ってるって言ってくれた。帽子は私の一番の宝物になった。 

 田植え祭の前に、坂下のおじいちゃん達と神社へ行った。

 無理だって言ったのに、ついてきたメグミが帰りに疲れて、トオルくんにおんぶしてもらってた。トオルくんは本当に優しい。


 フミカは、その宝物の帽子を取ろうとして、池にはまったのだ・・・。

 フミカが、タケルのことが好きだったことは、見ていればすぐ分かった。フミカから聞いた訳ではないが、フミカはいつもタケルを見ていた。多分、トオルも気付いていたと思う。

 当の本人のタケルだけは、むちゃくちゃ鈍感で、フミカの気持ちなんて全く気づかなかっただろう。


 フミカのコンプレックスとタケルへの想いが、行ったり来たりで進んでいた日記が、フミカが亡くなる日に近づいていく。


 7月3日

 今日は、サッカーの試合を応援に行った。

 試合は引き分けだったけど、タケルくんカッコ良かった。

 私のレモネードを、美味しそうに飲んでくれるタケルくんの顔を見ているだけで幸せ。

 でも私、なんでトオルくんがブドウ味を食べて嬉しそうにしてるってわからないんだろう?

 トオルくん、凄く優しいのに、なんで私だけトオルくんの気持ちが分からないのかな?

 トオルくん、ごめん。


 7月17日

 夏休み直前の、先生とのカウンセリングがあった。

 同い年の4人の中で、私だけ成績が良くないのは、努力不足なのかと聞いた。

 先生は、あの3人は特別だから気にすることはないと言ってくれた。私は全国平均を大きく上まっているのだから、自分のペースで良いのだと言うけど、3人が特別って何?

 私は、1人で置いていかれるの?


 日記はここで終わっていた。

 その10日後にフミカは、死んだ。


 ミドリは、フミカの最後の言葉に今まで以上に苦しくなった。

 ミドリはフミカのことを、ずっと一緒にいる友達だと思っていたし、フミカを置いていくだなんて考えた事もなかった。

「でも、フミカは1人残されると怖がっていたなんて・・・。大体、私たちが特別ってなんなの?」

 

 ミドリは、日記を閉じて考えたが、答えは出て来なかった。


 


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