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転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第十一章 転生者、見届ける

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シーン4

 宿に戻ると、セラが廊下で待っていた。


「遅かったわね」


「少し話が長くなった」


「何の話?」


 俺は食堂に移動して、セラに今夜聞いたことを全部話した。フードの人物の目的、かつての仲間であるヴェルナー家の術師のこと、転生リストの話、そして守りたかった相手のこと。


 セラは黙って聞いていた。


「複雑な事情があるのね」とセラはやがて言った。


「そうだ」


「協力することについては、どう思う?」


「情報を共有するだけなら、俺は構わない。ただ、お前がどう判断するかによる」


「私の判断?」


「この依頼はお前が受けたものだ。関係する判断は、お前がする」


 セラはしばらく考えた。


「……協力しましょう」とセラは言った。「あの人の目的と、私たちの目的は重なっている。街を助けるという点では、同じ方向を向いている」


「それでいいか」


「それでいいわ」セラはお茶を一口飲んだ。「ただし、全面的に信頼するわけじゃない。情報を共有しながら、こちらも独自に判断する」


「賢い判断だ」


「あなたに褒められると、なんか複雑な気分ね」


「なぜ」


「あなたが褒めるときは、本当に思っているときだけでしょう。だから嬉しいんだけど、素直に嬉しいとも言いにくくて」


「言えばいい」


「うるさいわね」


 セラは窓の外を見た。夜の街が静かだった。


「ヴァン」


「なんだ」


「あの人、守りたかった相手がいたって言ったのね」


「そうだ」


「過去形だった」


「そうだ」


 セラはしばらく黙っていた。


「……辛いわね」


「そうかもしれない」


「あなたは、守りたい相手がいる?」


 俺は少し考えた。


「いる」


「誰?」


「今ここにいる」


 セラが俺を見た。しばらく、何も言わなかった。


 耳の先が、少し赤くなっていた。


「……そういうこと、急に言わないでほしいわ」


「聞いたから答えた」


「それはそうだけど」


「嫌だったか」


「嫌じゃないけど」セラは窓の外を見た。「なんか、ずるいわよ」


「どこが」


「あなたって、普段は何も言わないくせに、たまにそういうことを言うじゃない。心の準備ができていないのよ」


「準備が必要か」


「必要よ」


 俺は何も言わなかった。


 セラも何も言わなかった。


 食堂に、静かな時間が流れた。


 翌朝、フードの人物からの情報を基に、最終的な作戦を立てた。


 ヴェルナー家の術師が、もう一度大規模な魔獣を仕掛けてくる。今度は昨夜より規模が大きく、街の複数の方向から同時に来る予定だという。目的は、ガーランド侯爵が自ら降伏を申し出るほどの打撃を与えること。


「タイミングは今夜か明日の夜だ」とフードの人物の情報では言っていた。


「準備が必要ね」とセラが言った。「衛兵の配置を変えてもらって、私たちが最も効果的に動ける場所を確保する」


「侯爵に話すか」


「今から行きましょう」


 侯爵館で、俺たちは作戦を伝えた。侯爵は真剣な顔で聞いて、衛兵隊長に指示を出した。


「準備します」と隊長が言った。「ただ、セラ様と従者の方だけでは、複数の方向への対処は難しいのでは——」


「私たちのやり方があります」とセラは言った。「信じてください」


 隊長が頷いた。


 館を出てから、セラが俺に言った。


「ヴァン」


「なんだ」


「今夜で、決着をつけましょう」


「合意だ」


「あなたがいれば、大丈夫よね」


「大丈夫だ」


「……強がりじゃないの?」


「強がりじゃない。根拠がある」


「どんな根拠?」


「今まで何とかなってきた。今回も何とかなる」


 セラは少し笑った。


「それを根拠と言うのは、あなただけよ」


「十分な根拠だ」


 セラはため息をついた。しかし、その顔には笑みがあった。


 カルネスの夕暮れが、街を橙色に染めていた。今夜、全てが決まる。


 俺は静かに、その夕暮れを眺めていた。


 ——悪くない。


 誰に言うでもなく、そう思った。


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