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転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第十一章 転生者、見届ける

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シーン3

 翌日の夜、俺は一人で街の東の広場に向かった。


 広場は街の東端にある、こじんまりとした場所だった。中央に古い井戸があって、その周りに石のベンチが並んでいる。夜になると人通りが少なくなる場所だ。


 フードの人物は、すでにそこにいた。


 井戸のそばに立って、俺が来るのを待っていた。今夜は昨日より近くで見た。身長は俺とほぼ同じ。体格は細め。フードの隙間から、顎の輪郭だけが見えた。


「来てくれたのか」とフードの人物は言った。


「話があると言っていたが」


「ああ」フードの人物は井戸の縁に腰を下ろした。「座るか」


「立っていた方が好きだ」


「そうか」フードの人物は少し笑ったような声を出した。「お前は、どこか俺と似ているな」


「どういう意味だ」


「目立たないようにしている。余計なことは言わない。ただ、放っておけない相手には、ちゃんと動く」


 俺は黙っていた。


「俺も、かつてそうだった」とフードの人物は続けた。「この世界に来て、最初は目立たずに生きようとした。正体を隠して、静かに、誰にも関わらずに」


「何が変わった」


「仲間ができた。転生者同士で、繋がりができた。その中に、あの術師もいた」


「ヴェルナー家の術師か」


「ああ。名前は言えないが——良い奴だった。最初は。ただ、この世界でどう生きるかについて、考え方が違いすぎた」


「転生者リストの情報を求めて、人を利用することを選んだ」


「そういうことだ」フードの人物は静かに言った。「俺には、それができなかった。街の人々を苦しめてまで、情報を手に入れることに、意味を感じなかった」


「情報を手に入れても、何が変わる」


「変わらないかもしれない」フードの人物は少し間を置いた。「でも、あいつは変わると信じている。転生の仕組みを知れば、次の転生先を選べるかもしれない。あるいは、戻れるかもしれない」


「前の世界に」


「ああ」


 俺はその言葉を、しばらく転がした。


 戻りたい、と思ったことがあるか。


 前世を思い出す。アパートの天井を見上げながら「今日も誰とも話さなかった」と思った夜。誰にも必要とされない日常。それでも不幸ではなかった。


「俺は戻りたいとは思わない」と俺は言った。


「なぜ」


「前の世界に、戻る理由がない。今の方が——」


 俺は少し間を置いた。


「今の方が、悪くない」


 フードの人物はしばらく黙っていた。


「そうか」とやがて言った。「お前には、ここに残る理由があるんだな」


「そうかもしれない」


「羨ましい」フードの人物は静かに言った。「俺にも、かつてはそういう気持ちがあった。今は——複雑だ」


 俺は黙って聞いていた。


「本題に入る」とフードの人物は言った。「あの術師を止めるために、俺はここにいる。ただ、一人では限界がある。お前たちが今やっていることは、結果的に俺の目的と一致している」


「協力してほしいということか」


「情報を共有したい。お前たちが知っていることと、俺が知っていることを合わせれば、あの術師の計画を止められる可能性がある」


「見返りは何だ」


「俺が求めるものは、お前たちからは得られない。ただ、この街の人々が助かることは、俺にとっても望ましい結果だ」


 俺はしばらく考えた。


「一つ聞く」


「なんだ」


「お前は、この世界で何を選んだ」


 フードの人物は長い沈黙の後、答えた。


「……守ることを選んだ。誰かを守ることで、ここにいる意味を見つけようとしている」


「守りたい相手がいるのか」


「いた」


 過去形だった。


 俺はそれ以上聞かなかった。


「情報を共有することについて、セラに確認してから返事をする」


「構わない」フードの人物は立ち上がった。「ただ、時間がない。あの術師は、次の一手を準備している。明日か明後日には動くだろう」


「分かった」


「一つだけ、言っておく」


「なんだ」


「あの術師が求めている情報——転生者リストに、その一部が含まれているかもしれない。ただ、リスト自体は一つではない。複数の組織が、それぞれのリストを持っている」


「忍者組織も持っている」


「そうだ。ただ、それはほんの一部だ」


 フードの人物は広場の出口に向かった。


「お前に会えてよかった」と消える前に言った。「同じ転生者として」


 俺はその背中を見送った。


 広場に一人残って、夜空を見上げた。星が出ていた。


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