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転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第十一章 転生者、見届ける

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シーン2

 その日の昼過ぎ、ガーランド侯爵から連絡が入った。


 ヴェルナー伯爵家が、昨夜の件について正式に抗議してきたという。「我が家の使いが、セラ・エルヴェインという魔術師に脅された」という内容だった。


「逆に抗議してきたのか」とセラは言った。


「よくある手だ」と俺は言った。「先に被害者の立場に立てば、相手の行動を正当防衛に見せかけられる」


「計算されているわね」


 侯爵館で話し合いを行った。侯爵の側近たちも同席していた。


「この抗議に対して、どう対処すべきでしょうか」と侯爵が聞いた。


「無視する必要はありません」とセラは言った。「ただし、こちらも記録を残しておくことが重要です。昨夜、ヴェルナー家の使いが私に対して脅しをかけてきた事実、その内容、証人となった衛兵の証言——これらをきちんと文書化してください」


「文書化、ですか」


「はい。法的な争いになった場合、証拠の積み重ねが重要になります。感情的に対抗するのではなく、記録で対抗する」


 侯爵が頷いた。


「さすがですね、セラ様は」


「貴族として生きてきましたから」とセラは静かに言った。「こういうやり取りは、慣れています。好きではありませんが」


 話し合いを終えて館を出ると、俺はセラに言った。


「今日のお前は、いつもより貴族らしかった」


「そうかしら」


「言葉の選び方、対応の仕方。社交の場で鍛えてきたものが出ていた」


「……嫌だった?」


「なぜ嫌なんだ」


「なんとなく。貴族っぽい自分は、あまり好きじゃないから」


「なぜ」


 セラはしばらく考えた。


「貴族として振る舞うとき、本当の自分じゃない気がするの。計算して、言葉を選んで、相手の意図を読んで——それが上手くいくと、嬉しいより虚しい気持ちになる」


「でも、今日のそれが街の人たちを助ける手段になっている」


「……そうね」セラは少し間を置いた。「使える武器は使えばいいのよね」


「それだけのことだ」


「あなたって、本当にシンプルに考えるわね」


「複雑に考えても、答えは変わらないことが多い」


 セラは少し笑った。


「それも、あなたらしいわ」


 その日の午後、フードの人物から短い手紙が届いた。


 宿の主人が「見知らぬ人物から預かった」と持ってきた封筒の中に、一枚の羊皮紙があった。


「明日の夜、街の東の広場で話したい。一人で来てくれるか」


 俺はその手紙をしばらく見ていた。


「何が書いてあったの」とセラが聞いた。


「明日、話し合いの場を設けたいと言っている」


「一人でと書いてあったでしょう」


「読んだのか」


「横から見えた」


 俺は少し考えた。


「どうするの?」とセラが聞いた。


「行く」


「一人で?」


「手紙にそう書いてある」


「危ないじゃないの」


「危険があるなら、昨日窓の外で話しかけてこなかっただろう。あの状況なら、俺を消すことは容易だった」


「……それは確かにそうだけど」セラは不満そうな顔をした。「でも、私も行きたい」


「一人で来てくれと書いてある」


「あなたが行って、何かあったら?」


「何もない。ただ、話を聞くだけだ」


 セラはしばらく俺を見ていた。


「……信頼しているの? あのフードの人物を」


「完全には信頼していない。ただ、敵意がないことは分かっている。それで十分だ」


「十分なの?」


「今は」


 セラはため息をついた。


「分かった。でも、何かあったらすぐに逃げなさいよ」


「逃げる必要があれば逃げる」


「強がりを言わないの」


「強がりじゃない。判断して動く、ということだ」


 セラはもう一度ため息をついて、それから小さく頷いた。

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