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転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第十一章 転生者、見届ける

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シーン1

 セラが父親への手紙を書いたのは、カルネスに来て八日目の朝だった。


 俺が食堂に下りると、セラはすでにテーブルに向かっていた。羊皮紙とペンを広げて、何かを書いている。朝の光が窓から差し込んで、銀髪を白く照らしていた。集中した横顔だった。


 俺は邪魔をしないように、少し離れた席に座ってお茶を頼んだ。


 セラが書いているのを、俺は特に見ないようにしていた。見ようとしなくても、横目には入った。羊皮紙はそれほど長くない。何度か書き直しているらしく、丸めた紙がテーブルの端に二枚あった。


 三枚目を書き終えて、セラはペンを置いた。羊皮紙を読み返して、折り畳んで、封筒に入れた。封蝋を押した。エルヴェイン家の紋章ではなく、セラ個人の印だった。


「見ていたの」とセラが言った。


「まあな」


 セラは封筒を手の中で転がした。テーブルの端の丸まった紙を、少し気まずそうに片付けた。


「何と書いたか、聞くか」と俺は聞いた。


「聞く?」


「聞いてほしそうな顔をしていた」


 セラは少し間を置いた。


「……エルヴェイン家の名前ではなく、私自身の名前で依頼を受けました。それが私の答えです、と書いたわ」


「短いな」


「お父様に合わせたの。長い言葉より、短い言葉の方が伝わる人だから」


 俺は何も言わなかった。


「……怒るかしら」


「分からない」


「正直ね」


「怒るかもしれないし、怒らないかもしれない。お前の父親のことは知らない」


「そうよね」セラは封筒をテーブルに置いた。「でも、いいの。怒っても怒らなくても、これが私の答えだから」


 それは、セラらしくない言い方だった。いつもなら「当然でしょう」とか「間違っていないわ」とか、自信満々に言うところだ。今日は違った。確信はある、でも揺れている。そういう声だった。


「正しい選択だと思う」と俺は言った。


 セラが俺を見た。


「……また珍しいわね。そんなにはっきり言うなんて」


「言える根拠があれば言う」


「根拠は?」


「お前が自分で考えて、自分で決めた。それだけで十分だ。父親がどう思うかは、お前の選択の正しさとは別の話だ」


 セラはしばらく俺を見ていた。それから、小さく頷いた。


「……ありがとう」


「どういたしまして」


「今日は遅くなかったわね」


「練習した」


 セラが笑った。今度はちゃんと、声に出して。短い笑い声だったが、朝の食堂に響いた。


 隣のテーブルの宿泊客が、ちらりとこちらを見た。セラは少し照れたように視線を逸らした。


 朝食が来た。今日もパンとスープと薬草茶だ。


 食べながら、セラが言った。


「今日で八日目ね」


「そうだ」


「当初の予定では、五日くらいで片付くと思っていたんだけど」


「複雑な依頼だった」


「そうね」セラはスープを一口飲んだ。「でも、逃げ出したいとは思わない。面白いとも思わないけど、やり遂げたいとは思っている」


「それでいい」


「あなたは?」


「俺も同じだ」


 セラは少し意外そうな顔をした。


「同じって、やり遂げたいと思っているの?」


「思っている」


「なんで?」


「放っておけないから」


 セラは少し笑った。


「また同じ答えね」


「それが正直なところだ」

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