シーン3
衛兵の隊長が駆け寄ってきた。
「セラ様、大丈夫ですか! それと、従者の方が——あの速さで魔獣を……」
「問題ない」とセラが言った。「今夜の魔獣、統率された動きをしていたと言っていましたね」
「はい。本当に、普通じゃない動きで——」
「術師が制御していた。今夜は、その術師を探そうとしていたんですが、途中で別のことが入ってしまって」
「え、術師を?」
「魔獣を誰かが操っているとしたら、術師の位置を特定できれば、根本的な解決になる。ただ、今夜はできなかった。次の機会に」
隊長が頷いた。衛兵たちの応急処置を確認して、隊長は去っていった。
街に戻る道すがら、セラが俺に言った。
「今夜の件、ヴェルナー家は私たちの調査に気づいている可能性が高まったわ」
「同意だ。タイミングが計算されていた」
「魔獣で北を塞いで、その隙に南から脅しに来た。二方向から同時に仕掛けてくる作戦ね」
「ただ」
「ただ?」
「作戦としては荒削りだ。魔獣と人間を同時に動かすのは、調整が難しい。今夜のように、俺が魔獣を処理してしまえば、脅しの効果が薄れる」
「つまり、余裕がなくなってきているということ?」
「俺たちの調査が、想定より早く進んでいる可能性がある。焦っているのかもしれない」
セラはしばらく考えた。
「だとしたら、次はもっと直接的な手段に出てくるかもしれない」
「その可能性はある」
「準備が必要ね」
「そうだ」
宿に戻って、夕食を簡単に済ませた。今夜はあまり食欲がなかったが、何か食べておかないと体が保たない。セラも同じ気持ちらしく、パンとスープだけで終わらせた。
部屋に戻ろうとしたとき、フードの人物が現れた。
窓の外に、人影があった。三階の窓の外に、あの人物が立っていた。
「少し話せるか」という声がした。
俺は窓を開けた。
「入るか」
「ここでいい」
フードの人物は窓枠の外に立ったまま言った。
「今夜のことは想定外だった。ヴェルナー家が直接動いてくるとは思っていなかった」
「お前はヴェルナー家の動きを把握していたのか」
「ある程度は。ただ、今夜の件は別の誰かが決めたことだ。俺の知らないところで動いた」
「別の誰かというのは」
「ヴェルナー家の術師だ。もう一人の転生者」
俺は黙っていた。
「その術師は、最近焦っている」とフードの人物は続けた。「お前たちの調査が思ったより早く進んでいることに、気づいているらしい」
「今夜の件は、焦りから来た行動か」
「そうだと思っている。本来の計画では、もう少し時間をかけてガーランド家を追い詰めるはずだった。それを前倒しにして、直接的な行動に出た」
「目的は何だ。その転生者の」
フードの人物は少し間を置いた。
「転生者リストが絡んでいると言った。それは本当だ。ただ、リスト全体ではなく、その中の特定の情報を求めている」
「特定の情報?」
「この世界に転生者が来る仕組みについての情報だ。なぜ転生するのか、どこから来るのか。それを知ろうとしている」
俺はその言葉を、しばらく転がした。
「それは、俺も知りたいことだ」
「そうだろう」フードの人物は静かに言った。「ほとんどの転生者が、同じことを一度は考える。ただ、その答えを求めるために、街を巻き込んで人々を苦しめることは、俺には受け入れられない」
「だから、止めようとしているのか」
「止める、というより——別の方法を探している。力ずくではなく」
そういうことか、と俺は思った。
第三の勢力というのは、ヴェルナー家の転生者と対立する立場の、別の転生者だ。そして目的は同じかもしれないが、手段が違う。
「俺に協力してほしいということか」と俺は聞いた。
「今はそこまでは求めない」フードの人物は言った。「ただ、もし機会があれば、話を聞いてほしい」
「機会があれば、な」
「ああ」
フードの人物は窓枠から消えた。




