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転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第十章 転生者、再び陰に潜む

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シーン2

「セラ・エルヴェイン!」


 野太い声だった。松明の光の中から、五人の人影が現れた。重装備の男たちで、それぞれが武器を持っている。先頭の男が叫んだ。


「ヴェルナー伯爵閣下の命令だ! ガーランド侯爵への協力をやめろ! さもなくば、エルヴェイン家にとって不都合なことになると伝えろ!」


 セラの詠唱が止まった。


 俺は素早く状況を把握した。北からは魔獣の群れ。南からはヴェルナー家の手下。セラは両方から挟まれている。衛兵たちは北の魔獣の対処に手いっぱいで、こちらに来る余裕がない。


 北門の外では、衛兵たちが群れの先頭と交戦を始めていた。大型魔獣が衛兵の盾を弾き飛ばした。悲鳴が上がった。


「ヴァン」とセラが小声で言った。


「聞こえている」


「どうする」


 俺は一拍考えた。魔獣の処理が先だ。衛兵が全滅すれば、街への被害が出る。ヴェルナー家の手下は——今すぐ戦闘になるわけではない。脅しの段階だ。セラに対応させれば、その間に魔獣を処理できる。


「俺が魔獣を処理する。お前はあいつらに対応しろ」


「私が?」


「お前なら対処できる」


 セラは一瞬だけ俺を見た。


「……分かった」


 俺は北門の外に走り出した。衛兵たちが驚いて道を開ける。大型魔獣が一頭、俺に向かって突進してきた。


 肩の埃を払うくらいの力加減で、魔力を動かした。


 大型魔獣が消えた。


 周囲の衛兵が固まった。


 俺は中型の群れに向き直った。今夜の魔獣は、確かに統率された動きをしていた。中型が横一列に並んで、一斉にこちらに向かってくる。普通の魔獣にはない動きだ。


 俺は魔力を少し大きめに動かした。普段より出力を上げる。ただし、限界とは程遠い。川から水を両手で掬う程度だ。


 群れが消えた。


 残りの個体が、混乱した動きを見せ始めた。統率が崩れた証拠だ。術師の制御が、俺の処理の速さに追いつけていないのかもしれない。


 あるいは、術師が別のことに気を取られているのか。


 後ろを振り返ると、セラがヴェルナー家の手下たちと向かい合っていた。


「エルヴェイン家への不都合、とおっしゃいましたね」とセラは静かに言った。「それは脅しですか?」


「そ、そうだ! 大人しく引き下がれば——」


「お断りします」


 セラは杖を構えた。詠唱を始めた。


 低く、通る声だった。威圧のための詠唱だ。セラの詠唱は威力は大したことがないが、見た目と音の迫力は本物だ。ここ数日の経験で、セラはそれをよく分かっている。


 手下たちが後退した。


「い、一度持ち帰って——」


「二度と来ないでください」とセラは言った。「次に脅しを持ってくるなら、ガーランド侯爵を通じて正式に抗議します。そのときは、エルヴェイン家の名前を使ってでも」


 手下たちが逃げていった。


 俺は残りの魔獣を処理して、セラの隣に戻った。


「魔獣は?」


「処理した」


「全部?」


「全部だ」


 セラは周囲を見渡した。衛兵たちが呆然としている。遠くで、まだ一頭だけ残っていた魔獣が逃げ出しているのが見えたが、街の方向には向かっていなかった。


 セラが静かに言った。


「……お疲れ様」


「お前もな」


「私は何もしていないわ」


「脅しを跳ね返した」


「あれくらい、どうということはないわよ」


 セラは強がって言ったが、その手が少し震えていた。俺は何も言わなかった。

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