シーン3
宿に戻ると、セラが部屋から出てきた。
「調査の結果は?」と聞いてきた。
「情報が入った。詳しく話す」
二人で食堂の端の席に座って、俺は今日起こった事をセラに伝えた。南の掲示板のことから、フードの人物との会話まで。
セラは黙って聞いていた。途中で口を挟まなかった。俺が話し終えるまで、表情を変えずに聞いていた。
「第三の勢力」とセラはやがて言った。
「そうだ」
「ガーランドでもヴェルナーでもない、外から来た存在」
「フードの人物がそう言った」
「その人物自身が第三の勢力なの? それとも、別にいるの?」
「分からない。今日聞いたことを整理すると——フードの人物はヴェルナー家の術師と知り合いで、かつての仲間だと言っていた。二人とも転生者だ。ただ、選んだ道が違う」
「一方は権力者に仕えることを選んで、もう一方は……」セラは考えながら言った。「あのフードの人物は、何を選んだんだろう」
「まだ分からない」
「転生者リストが絡んでいる可能性があると言っていたのね」
「そうだ」
セラはしばらく黙っていた。お茶を一口飲んで、窓の外を見た。
「ヴァン」
「なんだ」
「転生者リストって、あなたは載っているの?」
俺は少し考えた。
「分からない。確認したことがない」
「確認しようとは思わなかったの?」
「リストの存在を知ったのは、あの二人組のせいだ。確認する手段がない」
「あの黒装束の二人組ね」セラは少し声を落とした。「あの人たちも、リストを持っているのよね」
「おそらく」
「……私、あの人たちが何者か、少し気になってきたわ」
「俺も気になっている」
「教えてくれるの?」
「まだ分からないことが多い」
セラは少し不満そうな顔をしたが、それ以上は聞かなかった。
その夜、俺たちは明日の作戦を立てた。
ヴェルナー家の術師が誰なのかを特定するために、もう一歩踏み込んだ調査が必要だ。ただ、直接ヴェルナー領に乗り込むのはリスクが高い。侯爵から情報を引き出しながら、同時に街の外縁部でより詳しく痕跡を調べる方針にした。
「ガーランド侯爵が、俺たちを使いたかった理由について」と俺は言った。「もう一度、整理したい」
「何が引っかかっているの?」
「侯爵は、エルヴェイン家の名前を使いたかった。最初にそう言っていた。しかし、それだけが理由か」
セラは考えながら言った。
「ヴェルナー家への牽制として、エルヴェイン家の名前が効果的だから——それだけじゃないの?」
「それだけなら、セラを名指しする必要はない。エルヴェイン家に直接交渉すればいい」
「……そうね」セラは少し眉をひそめた。「私を名指しした理由が、別にあるということ?」
「可能性として考えておく価値がある」
セラは少し黙っていた。
「父親への手紙の返事、書いたわ」と彼女は言った。「下書きだけど」
「どう書いた」
「エルヴェイン家ではなく、私自身として動いていると。それだけ」
「それでいい」
「短すぎる?」
「お前の父親に合わせた長さなら、ちょうどいい」
セラは少し笑った。
「……そうね」




