表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者が迫害される世界で  作者: 烏丸三月
第九章 転生者、駒に気づく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/50

シーン1

 ガーランド侯爵への中間報告は、カルネスに来て四日目の午前中に行った。


 侯爵館の応接室は、最初に通されたときと同じ部屋だった。窓から街の大通りが見えて、行き交う人々の様子が分かる。今日も、人々の足が速かった。街の緊張感は、一日経っても変わっていなかった。


 侯爵は俺たちを迎えると、すぐに椅子を勧めた。今日は側近のガーナルも同席していた。昨日市場で声をかけてきた人物だ。俺と目が合ったとき、ガーナルは小さく頷いた。


「早速ですが」とセラが口を開いた。「調査の中間報告をさせていただきます」


「はい、ぜひ」


「街を囲む四箇所に、魔獣誘導の術式の痕跡を確認しました。いずれも一ヶ月ほど前に発動されたもので、方向はいずれもヴェルナー伯爵領の方角に向いています」


 侯爵の顔が、わずかに引き締まった。


「確証はありますか」


「術式の残滓という形での証拠はあります。ただ、誰が発動したかまでは特定できていません」とセラは言った。「ただ、術式の高度さから見て、相当な実力を持つ術師が関わっていることは間違いありません」


「…………」


 侯爵は黙った。ガーナルが侯爵の様子を横目で確認した。


「侯爵」とセラは静かに続けた。「昨日、ガーナル様から、ヴェルナー家が最近新しい術師を雇ったという話を聞きました。素性不明の、外部から来た術師が一人いると」


「ガーナルが……」侯爵はガーナルを見た。


「申し訳ありません」とガーナルは言った。「私の判断で、お伝えしました」


 侯爵はしばらく黙っていた。それから、ため息をついた。


「……実は」と侯爵は言いにくそうに切り出した。「その術師について、私も少し情報を持っています」


「最初から知っていたのですか」とセラは静かに聞いた。


 侯爵が口ごもった。


「知っていた、というより……疑っていました。確証がなかったので、お伝えするべきか迷っていた次第で」


「確証がなければ言えない、という判断は分かります」とセラは言った。「ただ、今後は情報を共有してください。私たちが動くためには、できるだけ多くの情報が必要です」


「……はい。おっしゃる通りです」


 侯爵が話してくれた内容は、ガーナルから聞いた話より少し詳しかった。


 ヴェルナー家が雇った術師は三人。そのうち二人はこの地域でも名の知れた術師で、素性ははっきりしている。問題は三人目だ。二ヶ月ほど前に突然現れて、ヴェルナー家に雇われた。年齢も出身地も不明。ただ、その術師が来てから、ヴェルナー家の術式の質が格段に上がったと、侯爵のスパイが報告してきたという。


「その術師の外見は分かりますか」とセラが聞いた。


「背は中程度、フードを被っていることが多いと……」


 俺とセラは、一瞬だけ目を合わせた。


 フード。


 昨日路地で会った人物と、一致する可能性があった。ただ、あの人物はヴェルナー家と繋がっているとは思えない動きをしていた。あるいは、複数のフードを被った人物がいるのか。


「参考になりました」とセラは言った。「引き続き調査します。何か新しい情報があれば、すぐにお伝えください」


 館を出てから、セラが俺に小声で言った。


「フードの件、どう思う?」


「昨日の人物と同一人物かどうかは分からない。ただ」


「ただ?」


「昨日の人物は、俺たちに気をつけろと言った。ヴェルナー家の内部にいる人間なら、そういう言い方はしないかもしれない」


「二重スパイの可能性もあるけれど」


「ある。ただ、今は決めつけない方がいい」


 セラは頷いた。


「慎重にいきましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ