救済
前の話に比べると短めです。
ピチャン……ピチャン……
どこかで水が滴る音が聞こえる。骨格標本の僕の代わりに、この空間が泣いてくれてるんやと思う。余計なお世話やわ……なんやねん……ほんまなんやねん。
僕は左手の人差し指を軽く曲げ、あま噛みする。これは僕の癖で、考え事をしてる時にするってじいちゃんが言ってた。
いきなり黙りだした僕を心配したのか、梅村さんが声をかけてくる。
「あの……特例なのですが、加瀬さんの同意さえ頂ければ、加瀬さんの身体は我々で保護します。設備も整っているので安心して下さい。上司には許可も取っているのですぐにでも動けます。」
梅村さんの回りにいる人なんやろ、遠くの方で 加瀬ちゃん大丈夫だよ って野太いおっちゃんの声が聞こえた。野太い声で加瀬ちゃん言うなし。
でも、梅村さんとおっちゃんの言葉に僕のモヤモヤは一気に消えたような気がする。神はいた……僕の耳元に救いの言葉を伝えてくれた。脳内で歓喜が流れた気がした!でも……本当に信じても良いんやろか?新しい詐欺の可能性もあるし……。
僕が何て返事をすればいいか考えてると、神……もとい梅村さんは詐欺ではないと伝えてきた。
「我々もchange the world内のトラブルで死者を出したくありません。状況が状況なので、ランダム設定の時にされた同意書は適用されません。なので信じて下さい。」
言われたみればそうかもしれへん。ゲーム内で死人出したら、イメージも悪くなるし、最悪運営もできひんようになる。運営側もそれだけは避けたいもんね。
「あと、加瀬さんが使っているVRハードも直接見てみたいですしね。」
そっか!原因を知るために、運営側は絶対に僕の身体に接触しやなアカンのか!気付かんかったわ……ホンマ心に余裕無かったようやね僕。
「梅村さん、運営の皆さん……ご迷惑をお掛けしてすみません。そんで、ありがとうございます!」
目の前に相手がいないのに、カメラで見られてもいないのに、僕は頭を下げた。
「はい、任せて下さい。最善の処置をとりますのし、出来るだけ早く加瀬さんを現実世界に戻します。なので、今はchange the worldの世界を堪能して下さい。お友達にもこちら側で伝えますので、後で教えて下さい。」
するとまた目の前にディスプレイが現れた。
僕の身体をchange the world側が保護する事。
その際に、家に入る許可が欲しい事、住所に間違えは無いか、などが書かれていた。
一通り目を通し僕はOKボタンを押した。
「では早速、部下に向かわせますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
再び頭を下げ、そして僕は思い出す。
とてつもなく重要な事を……。
「あの……梅村さん?僕の部屋の事んですけど……。」
「散らかってても大丈夫ですよ、僕の部屋も結構汚いですし。ガスの元栓なども、確認してから出ていきますので。」
そうじゃない……確かに散らかってるけど……。
「僕の部屋……いや、僕の事なんですが……。」
「はい、なんですか?」
「実は……全裸なんです……。」
洞窟内で神のかわいた笑いが響いた様な気がした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。




