突然の方向転換
「それでは、こちらへ。」
兵士に案内され、俺は巨大な石造りの建物へ入った。
入口には立派な看板。
異世界テンプレート管理局 辺境支部
「…………。」
俺は三度見した。
「管理局?」
「はい。」
兵士は当然のように答える。
「テンプレを管理しております。」
「いや、それ管理するものなの?」
「管理しないと世界が混乱しますので。」
「もう混乱してるよ。」
***
「なんかもうすでに違う小説家ってくらい話の雰囲気が変わってるんだけど。
週刊ジャ〇プのテコ入れよりあからさまだな。」
***
受付へ行くと、眼鏡をかけた女性が営業スマイルで頭を下げた。
「本日はどのようなご用件でしょうか。」
「いや、俺は連れて来られただけで……」
兵士が書類を差し出した。
「勇者一名、転生一回、追放一件、悪役令嬢同行、辺境赴任、領主就任、従魔契約、ダンジョン譲渡の手続きです。」
受付嬢は慣れた手つきで頷いた。
「はい、いつものですね。」
「いつもなの!?」
「番号札をどうぞ。」
渡された札には、
A-847
と書いてあった。
「八百四十七人待ち?」
「本日は空いております。」
「混んでる日は?」
「三千人くらいです。」
「異世界どうなってんだ。」
ピンポーン。
『A-847番のお客様。テンプレ登録窓口へお越しください。』
早っ。
「空いてますから。」
「なら番号札いらないだろ。」
窓口には初老の男性が座っていた。
「はい、それでは確認します。」
パラパラと書類をめくる。
「勇者ですね。」
「はい。」
「追放済み。」
「はい……。」
「転生済み。」
「一回だけね。」
「悪役令嬢同行。」
「そうみたいです。」
「スライム契約。」
「昨日した。」
「領主。」
「今日。」
「ダンジョンマスター。」
「さっき。」
「……忙しいですね。」
「全部そっちの都合だから!」
男性は判子を押した。
ドン。
『テンプレ冒険者 四級』
「資格になった!」
「今後さらにテンプレが増えますと三級へ昇格できます。」
「昇格したくない。」
「なお、一級になりますと魔王討伐義務が発生します。」
「えっ。」
***
「魔王討伐義務ってどんなブラック企業。」
***
すると奥から女性職員が走ってきた。
「局長! 大変です!」
「どうしました。」
「この方、テンプレ適性値をご覧ください!」
男性が水晶を覗く。
その顔色が変わった。
「……馬鹿な。」
「何?」
「測定不能です。」
「え?」
「理論上あり得ません。」
「何が?」
職員全員がざわつき始める。
「全テンプレ適性……」
ゴクリ。
「100%です。」
静まり返る局内。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
***
「測定不能なのに適正100%って?
そんなあり得ない話を聞かされりゃ誰でも静まるわな。」
***
俺だけが状況を理解できていなかった。
「それってすごいの?」
局長は真っ青な顔で頷く。
「このままでは……」
「?」
「全テンプレが同時発生します。」
ドゴォォォン!!
建物が揺れた。
館内放送が流れる。
「緊急事態。緊急事態。』
『主人公暴走警報が発令されました。』
『テンプレ管理局全職員はマニュアル第七章「全部盛り主人公」対応手順を実施してください。』
「そんなマニュアルあるの!?」
局長が机の引き出しから一冊の分厚い本を取り出す。
表紙には大きく書かれていた。
『全部盛り主人公対応マニュアル 第18版』
「十八版!?」
「初版の世界は滅びました。」
「何やってんだこの世界!!」
***
「なにやってんだAI・・・。どこに行こうとしてる?」
***




