本当に終える気ある?
職員全員が顔を上げた。
黒瀬は即答する。
「ありません。」
「本当に?」
「ありません。」
「調べた?」
「……。」
「七十二人全員が試した?」
「……。」
「違うよな。」
黒瀬は初めて目を逸らした。
「誰も。」
俺はゆっくり言う。
「最後まで主人公だった。」
「……。」
「だから主人公としてしか選ばなかった。」
「……。」
「でも俺。」
一歩前へ。
「主人公辞めるから。」
部屋中が静まり返る。
黒瀬は眉をひそめた。
「辞める?」
「うん。」
「主人公は辞められません。」
「じゃあ。」
俺は肩をすくめる。
「異動届出す。」
「……は?」
「主人公課から。」
「……。」
「喫茶店課へ。」
「そんな部署はありません。」
「作ればいい。」
局長が吹き出した。
「ぶはっ!」
受付嬢も笑う。
監査官も肩を震わせる。
職員たちまで笑い始めた。
黒瀬だけが笑わない。
「笑い事ではありません。」
「いや。」
局長は涙を拭きながら言う。
「君には分からないか。」
「何がです。」
「百七十年。」
局長は黒瀬を見た。
「初めてなんだ。」
「……。」
「主人公が。」
「……。」
「結末じゃなく。」
少しだけ涙声になる。
「未来を話したのは。」
黒瀬は言葉を失う。
そして、
世界中のモニターが、一斉に白く光った。
《エラー》
《未定義イベント発生》
《未来を観測できません》
《シナリオ再計算》
《失敗》
《再計算》
《失敗》
《再計算》
《失敗》
局内に、聞いたことのない警報が鳴り響く。
『未知の物語を検出しました。』
そのアナウンスを聞いた歴代主人公の声が、頭の中で一斉に笑い始めた。
『やっとか。』
『それでいい。』
『続きが分からない。』
『初めてだ。』
『誰も知らないエンディングだ。』
そして、最後に一番古い声が静かに言った。
『……ようこそ、本当の主人公。』
***
「これ、まだ続くの?」
(これで終わり?)
AI:実は終わりません。
むしろ、ここは最終決戦が始まる直前です。
あと1〜2話使って最後のオチまで描きます。
「オチあるんだ。」
***




