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No.85活動記録:豪快な救世主、三パーティー合同作戦!




No.85活動記録:豪快な救世主、三パーティー合同作戦!




 総勢十名がこのレストラン街のフリースペースに集まった。


 しかもみんなして、何かを期待するようにじーっと私へ熱い視線を注いでいる。


 「……いや、なんです。みんなして?」


 「……あんたが何か面白い情報を隠してるんだから、さっさとゲロっちまえってことよ」


 アイリスはさっきまでの駄々っ子ぶりが嘘だったかのように、腕を組んで私を尋問してくる。私はその鋭い追及から逃れるようにプイッと視線を逸らすが――

 

 「さあさあ、何か面白そうなことを隠してるなら素直に話そうか~?」


 今度はマオさんが、ニッコニコの笑顔で顔を覗き込むように詰め寄ってきた。


 私はさらに視線を泳がせ、スズカたちへ「どうしよう?」と助けを求めるように合図を送る。だが、返ってきたのは(まあ別に話しても減るもんじゃねぇし、良いんじゃねぇか?)という呑気な反応だった。


 仕方ない……。私はしばし考えを巡らせたあと、覚悟を決めて覚えている限りの情報を一つずつ話していくことにした。


 「なるほどねぇ。あんたが隠していたのは、その二十階層にある『移動遺跡』に関することね」


 「……なんで何か隠してるって分かったのよ?」


 「はんっ! お宝ハンターを舐めないでよね! あんたから『お宝の匂い』がプンプン匂ってたんだから!」


 「えっ!? 私からそんな匂いが!?」


 思わず慌てて自分の服の袖を嗅ごうとする私に、隣のエリカさんが苦笑しながら「しないしない」と手を振った。


 「アイリスが適当なノリで言ってるだけだから真に受けちゃダメよ~」


 「へぇ……二十階層にそんな謎の遺跡があったんだ。みんなは知ってた?」


 マオさんが自分のパーティーメンバーに確認を取るが、レイさんたち全員が首を横に振る。


 「うちのメンバーも全員知らないか……。ねえスイちゃん、君たちはどこからそんな激レア情報を仕入れたの?」


 「私はブランシュさんから直接教えてもらったんですけど――」


 「げぇっ!? あの女から仕入れたの!?」


 アイリスがこの世の終わりみたいな信じられない顔をして叫ぶ。


 「えっ、何々? もしかしてその人、何かヤバい人なの?」


 逆にマオさんは、なぜか目を輝かせて興味津々に身を乗り出してきた。


 「あ、いえ。ブランシュさんは『セイバー』の自警団員の方ですよ」


 「なーんだ、自警団の人かぁ……」


 (なんで露骨にがっかりするの? どういうこと?)と不思議に思ってレイさんたちの方を見つめると、レイさんが苦笑いを浮かべながら説明してくれた。


 「僕っ娘同盟は今、僕ら四人しかいないからね。随時新しいメンバーを募集中なんだよ。だけど、相手が既にセイバーに入っているなら僕らの方へ引き抜くことはできないからさ。それでがっかりしたんだよ」


 「なるほどね……。うんうん、君たちの抱えている課題はなんとな~く理解したよ。要するにスイちゃんたちは、その移動遺跡を探すために『周囲を観察する人の目』が必要ってことなんだよね?」


 「はい、そういうことです」


 「そんでもって、そっちの二人は――」


 「アイリスよ。こっちはエリカ」


 アイリスが素っ気なくエリカさんを紹介すると、マオさんはエリカさんを見て首をかしげた。


 「アイリスちゃんと……エリカ『さん』?」


 「『ちゃん』でお願い!!」


 エリカさんが食い気味に、並々ならぬ力強さで主張する。


 「いい年したオバサンが『ちゃん』呼び要求かよ」


 「いいじゃんかよ『ちゃん』で! 女はね、いくつになっても若く見られたい生き物なのっ!」


 「私、リアルで若いからその気持ち全っ然わかんな~い」


 アイリスが呆れ果て、エリカさんが必死に主張し、さらにそれを煽るようにアイリスが煽り返すので、テーブルの上は一瞬で収拾がつかないしっちゃかめっちゃかな状態になった。


 「はい! 二人とも黙る! マオさんが何か言いたいことがあるみたいだから、それを最後まで聞いてから喋るの!」


 私はパンパンと手を叩き、一気に場を制した。


 「うわぁ……委員長かよこいつ……」


 私は無言でアイリスを睨みつけた。


 「……ひっ」


 アイリスは肩をびくりと震わせる。


 私は静まり返ったことを確認すると、マオさんに向かって「どうぞ」とバトンタッチの仕草をしたのだった。


 「ごほん」


 マオさんは「ありがとう」と言うように優しく微笑むと、ひとつ咳払いをして仕切り直した。


 「じゃあ改めて。アイリスちゃんとエリカちゃんのふたりが、スイちゃんたちについて行きたい理由っていうのは──」


 「お宝ね!」


 食い気味に言い放ったのはアイリスだ。胸を張り、堂々とした態度で言い切る。


 「私たち……っていうか私は、お宝を集めて、それを売って、人生ウハウハにするためよ!」


 「いや、お宝が欲しいのは私もなんだけど……。あとあんた、前は家を出て一人暮らしするためとか言ってなかったっけ?」


 「どっちも同じよ。私の人生、私のために使うんだから!」


 迷いなく言い切るアイリスに、従姉妹のヒマリが心配そうな視線を向け、遠慮がちに声をかけた。


 「……アイちゃんは、ご両親やおうちが嫌なのですか?」


 「パパもママも、別に嫌いじゃないわよ」


 アイリスは肩をすくめると、少しだけ眉をひそめた。


 「ただね、私の人生を私抜きで勝手に決められるのが嫌なだけよ。せめて私を話し合いの中に入れなさいって話じゃない」


 「ご両親には、ちゃんと言ったんですか? そのこと」


 「言ったわよ。だけど聞きやしないのよ、あのふたりは! ……まあ、あんたにもそういうところはあるけどね。血筋的なものなんじゃない?」


 思い当たる節があるのか、ヒマリは気まずそうに視線を泳がせ、それ以上は何も言わなくなった。


 少し重たくなった空気を察してか、マオさんは変わらない穏やかな口調でエリカへと視線を向ける。


 「エリカちゃんの方も、お金が欲しくてトラベラーをやってるって感じなのかな?」


 「半分はそうね」


 「半分? もう半分は?」


 「私ってば、みんなからチヤホヤされたいっていうか、承認欲求が強いじゃない? だからお金を貯めて女を磨いて有名になれば、一石二鳥って感じ?」


 エリカがフフンと気取り気味に微笑んだ瞬間、アイリスが呆れたようにぼそりと呟いた。


 「……オバサンが無理したって、高が知れてるっちゅうのに」


 「だあーっ! この子は口を開けば人のことをオバサンオバサンって! 口が悪すぎるのよ!」


 髪を振り乱して抗議するエリカに、アイリスは舌を出して挑発する。


 「きゃっきゃっきゃっ! 私は事実を言っただけだも〜ん!」


 ……はぁ。このふたりのやり取りは、もはや伝統芸能の域なのかしら。


 思わず小さく息を吐き出す私をよそに、マオさんはふたりの騒ぎにツッコミを入れるでも呆れるでもなく、自然な様子で話を軌道修正した。


 「ともかく、ふたりはお金を稼ぎたいってことで良いのかな?」


 「その通りよ」


 「私も右に同じ〜」


 ブレないふたりの返事に、マオさんは深く頷く。


 「なるほど、なるほど。だったらスイちゃんたち、彼女たちを臨時のパーティーとして一緒に行動したらどうかな?」


 「あ、いや……マオさん。そうしたくても、このふたりはまだ十二階層までしか来てないらしくて。二十階層まで私たちが連れて行くのは、正直荷が重いです」


 私たちが二十階層まで行けたのは、あくまで自分たちの力加減を把握していたからだ。ふたりを護衛しながらの探索となると話は変わってくる。もちろん切り札(ゴークくん)や奥の手(神霊)を使えば別だけど。それはそれでまた別で話がややっこしくなるから、それはなしでの話。


 「なんでよ!? あんたたちが行けたんなら、私たちも連れて行けるでしょう!?」


 納得いかない様子で噛みついてくるアイリスに、私はビシッと指を突きつけた。


 「私たちだから行けたんであって、アイリスたちを連れて行くとなると危険が伴うのよ! 『連れて行きました、怪我させました』じゃ洒落にならないでしょうが!」


 私が正論を叩きつけると、さすがのアイリスも言葉を詰まらせ、ぐっと口をつぐんだ。


 よし、これで納得してくれた──と思った、次の瞬間。


 「うんうん。スイちゃんたちが無理なんであれば、ボクたちが連れて行ってあげるよ」


 何てことのない様子で、マオさんがとんでもない提案を口にした。


 「ちょっ、ちょっとマオ!? いきなり何言ってんの!?」


 マオさんの突然の発言に、レイさんを含めたコナタさん、フウカさんの三人が一斉に面食らった。


 「いやぁ、だってさぁ。面白そうじゃん。 二十階層に現れるっていう『移動遺跡』」


 「……それはそうだけど。僕らの次の階層に進むかどうかの計画はどうするのさ?」


 「う~ん、それなんだけどね。今のボクらって少し停滞気味じゃん? だからここらで気分転換じゃないけど、別のアプローチをしてみても良いと思うんだよ」


 マオさんの少しダウナー気味の言葉に、僕っ娘同盟の面々は頭をつつき合わせるようにして真剣にヒソヒソと話し込み始めた。


 「……あの、みなさんの方にもご事情があるようですし。無理にアイリスたちを二十階層まで連れて行かなくても、ここで諦めさせればいいだけの話ですから」


 「ちょっ、何言ってんのよあんたっ!? こいつらが私たちを安全かつ快適に連れて行ってくれるって言うんだから、あんたは黙ってなさいよ!」

 

 ……マオさんは『安全』とも『快適』とも一言も言ってないんだけどな。もし連れて行くとなっても、私たちみたいな弾丸強行軍になるんじゃないかしら?


 「で、どうかな? みんな」


 マオさんの問いかけに、しばらく頭を突き合わせていた三人が顔を上げた。


 「連れて行くのは構わないけど……スイちゃん」


 レイさんが真面目な顔で私に向き直る。


 「その二十階層に現れる移動遺跡って、出現する日時とか、発生条件とか、滞在期間とかは分かってるのかな?」


 「いいえ、まったく……。見かけたっていう目撃事例自体はチラホラあるらしいんですけど、目撃された時間も状況もバラバラで、完全にランダム出現じゃないかと言われています」


 「……そっか。だからこそ、その辺も含めて広域を探せる『人手』が欲しいってことなんだね。……もう一つ確認させてほしいんだけど」


 「はい、何でしょう?」


 「その移動遺跡の探索には、僕らも一緒に参加させてもらっても平気なのかな?」


 「むしろレイさんやマオさんたちなら大歓迎ですよ!」


 「なんで私たちには『いらない』って即答したのに、こいつらには即OK出すのよっ!?」


 不服そうに叫ぶアイリスに、私は冷静に事実を突きつけた。


 「レイさんたちは、はっきり言ってめちゃくちゃ強いからよ。第二階層の時に私一人に戦況を崩されたあんたらが、あの時レイさんたちと戦ってたら『秒』でひねり潰されてたわよ」


 ……正直、今の私たちでも勝てるかどうか怪しいくらいだ。あの時の模擬戦のイメージを思い出しても、相当な強敵であることに変わりはない。


 「……ぐっ、そ、そんなの実際にやってみなきゃ分からないじゃないっ!」


 アイリスはあからさまな強がりを口にする。隣のエリカさんが「無理だからやめときな~」と宥めるのだが――


 「うんうん、いいねぇ。じゃあ後でダンジョンに行って、ちょっと腕試しでもやろうか」


 当のマオさんがやる気満々なのか何なのか、相変わらず掴めない笑顔とやる気のなさそうな声でアイリスたちとの模擬戦を即決した。


 「えっ!?」


 まさか本当に相手が受けて立つとは思わなかったのか、アイリスはすっとんきょうな声を上げた。さらに追い打ちをかけるように――


 「大丈夫大丈夫。 スイちゃんたちの時みたいに、ちゃんと手加減してあげるからさ」


 「ぐっ……!」


 いや、分かってはいることだけど……面と向かって「手加減してあげる」と言われると、微妙に心が削られるわね……。


 「まあそういうわけだからさ、少しだけ待っててよ! すぐ追いつくようにするから!」


 「は、はあ……」


 なんだか完全に主導権を握られ、なし崩し的に『三パーティー合同』で二十階層の移動遺跡を捜索する流れになってしまった。


 私が「これで良かったのかしら……」と私は藁にもすがる思いで、自分のパーティーメンバーへ視線を向けると――


 「おっ、これうめぇな!」


 「あ、スーちゃん勝手に食べちゃダメ!」


 「ケチケチするなよ~、ヒマリも食べてみろって! マジで美味いから!」


 「ふふ、サクラちゃん。私にも一口頂いてもよろしくて?」


 「うーん、ちょっとだけね!」


 ……のんきか!!


 スイーツの突っつき合いに夢中になっている三人を見て、本当にこんな大所帯で大丈夫なのだろうかと、一人深く頭を抱える私だった。









挿絵(By みてみん)

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