No.52活動記録:突進の回避特訓、出てきたのは叫び声を物質化するメガホン
No.52活動記録:突進の回避特訓、出てきたのは叫び声を物質化するメガホン
新調された装備品を手に、私たちは八階層での戦闘に自分たちの体を慣らすための特訓に励んでいた。
とは言え、スズカに関しては元から「攻撃力過剰」と周りから(主におっさんAIから)言われていたため、今回の訓練の主役は、私とサクラ、そしてヒマリの三人だ。
一人でモンスターと対峙して新装備の挙動を確かめてみたり、みんなで息を合わせて連携攻撃を仕掛けてみたりと、様々な戦術を試していく。
……まあ、八階層の虫系モンスターを相手にする時間は、私にとって本当に精神的な地獄そのものだったけれど。配信ボタンを押していないのをいいことに、情けない悲鳴をあげながらも、私は必死に我慢して旗槍を振るい続けた。
そんな猛特訓を数時間ほど続けた頃、上空のドローンからおっさんAIの満足げな声が降ってきた。
『……そろそろ九階層に行ってもええやろな。ずぶの素人やったお嬢さんらの動きの中に、多少なりとも戦闘の「理屈」が見えるようになってきたわ』
「……それはどうもありがとう」
半分以上はショウコさんの防具の性能と、トアさんのロマン武器の基本スペックに頼り切っている自覚はあるけれど。それでも、あのおっさんAIにそんな風に少しでも認められると、素直に喜ぶのが癪で、ついつい皮肉混じりの返事になってしまう。
「九階層に行くのは良いんだけど、あそこには何か、今までより一段とデカいモンスターがいるんでしょう?」
『デカい言うても、身の丈をゆうに超えるような大物となると……そうやな、まずは『ミールー』っちゅうのが居るな』
「ミールー?」
『馬と鹿を足して二で割ったような姿をしたモンスターや。後ろ足で立ち上がれば、大人の男くらいの高さは余裕であるな』
「やっぱり強いの?」
『強いか弱いかで言えば、まあ強い部類や。ただ、基本的には群れを作らんと一匹で行動する一匹狼タイプやからな。特性を理解して、落ち着いてきちんと対処できれば、今のお嬢さんらには問題あらへん相手や』
「ほかに注意すべきモンスターはいる?」
『せやなぁ……あとは『ワイルドボア』くらいか?』
「ワイルドボアってなに? おっちゃんAI」
サクラが不思議そうに首を傾げると、おっさんAIは『イノシシや』と短く答えた。
『こいつはな、たま~に子供を連れて歩いとるときがある。そうなると警戒心が跳ね上がっとるから要注意やな。あとは何と言っても突進や。原チャリみたいな速度で正面から突っ込んでくるからな。ビックリしとる暇があったら正面衝突や。気ぃつけや』
「……ちなみに、なんだけど。む、虫系は……いないのよね?」
私が恐る恐る尋ねると、おっさんAIのカメラレンズが意地悪そうにニヤリと動いた気がした。
『居るけど、話した方がエエか?』
「聞きたくない! 聞きたくないけど、聞かないと後で死ぬほど後悔するから聞くわよ!」
『ははは、徹底してスイはんは虫嫌いやな。まあ、スイはんらしくてエエけどな。九階層の虫系は『グリーンスパイダー』、いわゆる蜘蛛や。こいつは障害物の多い場所に糸を張り巡らせて、獲物が引っかかるのをじっと待つタイプや。せやから、不自然なクモの巣を見かけたら、そこを通らんように迂回すれば問題はあらへんよ』
「空中型のモンスターは居ませんの?」
今度はヒマリが、藍色のビニール傘を抱え直しながら尋ねる。
『居ないこともないで。『スカイクロウ』っちゅうカラス型のモンスターや。こいつは現実のカラスと同様に、とにかく光り物に目がなくてな。キンキン、キラキラした派手なもんを剥き出しで持っとらん限りは、そうそう積極的に襲ってはこーへんから安心しぃ』
「……なんと言うか、事前におっさんAIに脅されていた割には、ちゃんとした対策さえ知っていれば平気そうな雰囲気ね」
私が少しホッとして息を吐くと、おっさんAIは『アホ抜かせ』と一喝した。
『ここで特訓する前のお嬢さんらが、何も知らんと九階層に行ってみぃ。原チャリのイノシシや鹿相手に慌てふためいて、モンスターの思うように蹂躙されて、それで配信も人生も強制終了やったぞ。ここで地道に経験を積んだからこそ、九階層でもその知識が生きるんや。トラベラーの中で、ちょっと上手くいったからって過信してダンジョンを舐めた奴は、必ず手痛いしっぺ返しを喰らうからな。それだけはよう覚えておき』
「……わかったわよ。肝に銘じておくわ」
おっさんAIの厳しい、けれど私たちの身を本当に案じてくれている言葉を、私たちはしっかりと胸に刻み込んだ。
「そうだ。おっちゃんAI」
今度はサクラが、何かを思い出したようにドローンを見上げた。
「ここ、ダンジョンなのに、お話の本とかに出てくるスライムとかゴブリンとか全然いないね?」
『ああ、居るで。ただ、この辺の低階層には居らんちゅうだけの話や。前にスズカはんと一緒に別の階層へ『ストームサンダー』で行った時、あそこらに『フォレストドラゴン』やら『マウンテンタートル』やらが居ったやろ?』
「あ! ゴジラとガメラ!」
『名前をそれで覚えるんはどうかと思うけどな……。まあ、ともかくや。もっと上の階層に行けば、そういった本当にコミックや映画に出てくるような、ホンマもんの意味での「モンスター」な奴らがゴロゴロ出てくる。だからこそ、この安全な低階層のうちに、きっちりと戦い方を身につけて、装備品を充実させるのは、トラベラーとしてある意味での「義務」なんや』
「私たち……そんな上の階層まで行けるのかしら?」
少し不安そうに呟いた私に、おっさんAIは優しくカメラを向けた。
『そこはわても保証はできん。ただ、将来的に魔道機人形のゴークくんを完全に修復したり、スズカはんが契約した神霊のストームサンダーみたいに、桁外れの戦力が揃っていけば、お嬢さんらでも上層階は十分狙える範囲やで』
「そうなんだ……。でも、そこは『行けたらいいな』っていう将来の目標にしておきましょう。当面の間は、配信映えする良い映像を撮りながら、階層をじっくりと上がっていって、ゴークくんの欠けたパーツ集めに集中しましょう!」
『せやな。急いで命を落としたら元も子もない。お嬢さんらのペースで行けばエエんや』
他の有名なトラベラーや、大人気の配信者たちの進捗が気にならないと言えば嘘になる。
けれど、私たちは、私たちなりの歩幅と成長のスピードで進んでいけばいい。サクラの描いてくれた旗の言葉のように。
その決意を改めて心に強く留めながら、私たちは青い光の次元門を潜り、未知なる九階層の大地へとその足を力強く踏み入れたのだった。
次元門を通り抜けて降り立った九階層は、八階層の景観とよく似た、背の低い雑木が生い茂る林が点在するエリアだった。
「……なんか、八階層よりいくぶん見通しが悪くなってねぇか?」
周囲の木々を鋭い目で見回しながら、スズカがふとそんな疑問を口にする。けれど、私にはそこまで大きな変化がないように思えた。
『パーセント的にはただの誤差範囲内やけどな。勘が鋭いスズカはんみたいなタイプにとっては、木々のわずかな配置の差で見通しが悪う感じてしまうんかも知れへんな』
「なるほどね。……それでおっさんAI、私たちはこの九階層でも、しばらくは配信録画せずにモンスター相手の戦闘特訓を続ける感じ?」
『せやな。しばらくは体に動きを馴染ませた方がエエやろう。――時に、お嬢さんらは次の十階層の「ボス」とは戦う予定なんか?』
「え? ボスを倒さなくても、その先の階層には行けるんでしょう?」
『行けるで。戦うか戦わんかはトラベラーの自由な判断や。わてはそれに対して、戦闘のデータを元にしたアドバイスを送るだけやからな』
「それなら、私としては、わざわざ危険を冒す必要もないし、避けられるボス戦はスルーして先に進みたいんだけど……」
そう言って、私はチーム内の「とある二人」へと視線をやった。
案の定というか、お約束というか。二人はすでに、これ以上ないくらい目をキラキラと輝かせて身を乗り出していた。
「スイちゃん! ボスだよ、ボス! 倒さないと! 絶対にレアなアイテムとかいっぱい落としてくれるよ!」
「おうスイ、戦えるチャンスがあるなら、きっちりやっとこうぜ!」
「ああ……っ、そうね! あんたたちなら、絶対にそう言うと思ったわよ……!」
サクラは完全にRPGか何かのゲーム脳だし、スズカはスズカで「とにかく一回自分で経験しないと気が済まない」タチなのだ。止めてもきかないのはよく知っている。
「はぁ……もう、まともな感性を持ってるのはヒマリだけね。ねえ、ヒマリ?」
心のオアシスを求めるようにヒマリへ同意を求めると、彼女は藍色のビニール傘を愛おしそうに撫でながら、ふんわりとした笑顔で言った。
「……え? あ、はい。そうですね。私も、最近はようやくこの傘を使っての、効率的な『戦い方(物理)』というのが身体で理解できるようになってきましたの」
「えっ」
ちょっと待って。その答え、まともな後衛のバッファーじゃなくて、完全に前衛の脳筋が言うタイプのセリフじゃない……!?
私の唯一の理解者(癒やし枠)だったはずのヒマリまでが、いつの間にか、スズカたちの影響で少しずつ変なバトルジャンキー方向に変わり始めているんじゃないかと、私は背筋に冷たいものを感じてガタガタと戦慄を覚えた。このチーム、私以外みんな肉弾戦大好き集団になりかけてない……!?
「よしっ! そうと決まればボス戦に向けて特訓だな! おい。おっさんAI、その十階層のボスの情報は!?」
私の戦慄を置き去りにして、スズカが拳を引いてノリノリで尋ねる。
『十階層におるボスは『コリーダ』言う名の「牛」のモンスターや。とにかく気性が荒くてな。十八番は怒涛の突進や。エエか、絶対に正面からまともに受け止めようとしたらアカンぞ。今のお嬢さんらの体格やと、まともに正面衝突したら空高くかち上げられて、そのまま地面に叩き落とされて終わりやからな』
「なるほど……。突進がメインの牛か。だとしたら、さっきおっさんAIが言っていた、原チャリ速度で突っ込んでくる『ワイルドボア』を仮想敵にして、突進への対処法をここで練習しておいた方がいいな」
『おお、エエ考えや! 動きや軌道に多少の違いはあれど、「自分に向かって巨大な質量が猛スピードで突っ込んでくる恐怖」は事前に体験できる。その恐怖に足をすくませず、落ち着いて避けることに慣れれば、本番のコリーダ戦もなんとかなるやろ』
「なら、まずはワイルドボアを見つけて特訓開始だ!」
「オー! 特訓だー!」
「はい。特訓ですわね」
三人で拳を突き上げて盛り上がっているのを、私は一歩引いた目で見つめながらポツリと呟いた。
「……あの、一応、私がこのチームのリーダーなんですけど」
「ならスイ、リーダーらしくビシッと音頭とれよ!」
「……ハァ。もう、行くわよ! ……まだ配信で正式に決まったわけじゃないけどなぁ」
私は小さくぼやいてから、
「――『みどりの葉っぱ隊』、出撃!」
「「「オーーーッ!!」」」
息の合った勝鬨をあげる私たちの上空で、ドローンがひっそりと高度を下げ、おっさんAIの何とも言えない限界を極めたような呟きがスピーカーから漏れ出た。
『……わて、これ勝利の度に、後ろで「YATTA!」とかコーラス入れた方がエエんやろうか……?』
「……ちょっと、思ったより全然大きいじゃないのっ!」
おっさんAIの案内に従って林の奥へと進み、ついにターゲットである『ワイルドボア』を発見した私は、思わず声を裏返らせていた。
イノシシと聞いて、私の頭の中では勝手に「中型犬くらいの可愛いサイズ」をイメージしていたのだけれど、とんでもない。そこにいたのは大型犬、下手をすればそれ以上にすら見える、恐ろしい威圧感を放つ巨大な野生獣だった。
『いやいや、ただのイノシシやで? スイはんは実物を見たことないんかいな』
「あるわけないでしょ! 地方とは言え、都会育ちを舐めないで!」
「へぇ、でけぇな。これはやりがいがありそうじゃねぇか!」
案の定、獲物を前にしてスズカが不敵に笑いながら、愛用の魔道ランスをギチリと構える。
「……スズカ。本当にお願いだから、正面からまともに突撃し合おうなんて思わないでよ?」
「わーってるよ! さすがにオレだって、あんな奴と真正面からノーガードでぶつかろうとはしねぇって!」
『せやな。スズカはんの持つ魔道ランスの破壊力なら、正面からでもワイルドボアを確実に撃ち取れるやろうけど、代わりに衝撃の反動でスズカはんの腕の骨がイカれる可能性がある。一匹倒す代償としては大きすぎるわ』
「だから大丈夫だって言ってんだろ! やらねぇよ! なんなんだよみんなして、そんなにオレは信用ねぇのかよ!」
そりゃあ、あんたが「一回は自分で痛い目を見ないと気が済まないバカ」だってことを、ここにいる全員が知っているからよ。
「ゴホン。――これがイノシシとの初戦だから、一対一の無茶な戦いはナシ。きっちり連携で行くわよ。ヒマリはバフを掛けたら、スズカと一緒に左右に散って仕掛けて。サクラは少し離れた後方から先制攻撃。私は正面で盾を構えて囮になる。いい?」
「了解!」
「わかったー!」
「承知いたしましたわ」
「よし。……じゃあ、作戦開始!」
私の開始の合図と同時に、みんなが一斉にそれぞれのポジションへと動き出す。
「――『焔の火種』!」
後方からヒマリの長い詠唱が響き、私やスズカの身体に、攻撃力を底上げするバフがふわりと巻き付いた。
「さあ、こっちよ! デカブツ!」
私は左手の籠手盾の表面を、右手の旗槍でカンカン!と激しく叩いて音を鳴らす。
その挑発の音に気がついたワイルドボアが、獰猛な赤い目をこちらに向けた。
――と思った、次の瞬間。
「ちょっ!? はやっ、嘘でしょ!?!?」
地面を爆破するかのような勢いで、凄まじい速度の突進が私に向けて一直線に迫ってきた。原チャリどころか、体感としては完全に大型トラックがノーブレーキで突っ込んできている速度だ。完全に足がすくみかけた、その時――。
「スイちゃん危ないっ! サクラの新必殺技だよ! ――ペラペラ~からの、パラララッパッパラー♪ メ・ガ・ホ・ン~!」
サクラの無邪気な声が響く。
元は紙切れを起こさないメモ帳だったのに、レベルアップをして魔道書に存在進化したそのメモ帳は、「書いた文字や絵をそのまま現実の現象として具現化する」という、とんでもない能力を持った。さらにサクラにはブックマーカーのスキル『クイックスペル』があり。そのスキルを使い、事前にメモ帳に描いておいた「メガホン」のイラストを、一瞬で光と共に物質化させて手にすることができる。
本来は初級クラスの威力しか出せないはずのメモ帳。けれどサクラには、もう一冊の魔道書――魔法を何倍にも強化する、国家機密級の『ブックメーカー』が作り出した魔道書がある。
サクラがもう一冊の魔道書をバサバサと捲ると、彼女の持つ光のメガホンが、さらに眩い極光を放ち始めた。
サクラは大きく、すーーーっと息を吸い込み――。
「『うにゃあああああああ!!!!』」
鼓膜が破れそうな大音量で、思いきり叫んだ。
すると信じられないことに、サクラの放った叫び声が文字通り『うにゃあああ』という巨大な立体文字のエネルギー弾(物理)となって形成され、私のすぐ真横を凄まじい風圧と共に通り抜けていったのだ。
『なっ、あれはまさか!? 昔、全国の眼鏡っ娘に多大なる希望を与えた、伝説のアンドロイドの必殺技――「んちゃ砲」かいなァァーー!?!?』
おっさんAIの絶叫と共に、サクラの文字砲弾がワイルドボアの脳面に直撃する。
ドゴォォォォン!!! という凄まじい爆発が起きると、なんと空間に「BOMB!!」というコミカルなエフェクトの擬音までが、実体化した文字としてバラバラと現れては消えていった。
モクモクと立ち込める煙が晴れると、そこには突進の勢いを完全に止められ、地面にひっくり返ってピクピクと足を痙攣させているワイルドボアの姿があった。イノシシはそのまま、サラサラとした光の粒子になって消滅していく。
「……助かった、けど……サクラ!」
「うにゅ? どったの、スイちゃん?」
可愛く小首を傾げるサクラに、私は一気に詰め寄って声を大にした。
「どったの? じゃなくて! 魔法を撃つなら撃つで、事前に一言声をかけなさい! あんたの魔法は無詠唱で即座に発動するんだから、心臓が止まるかと思ったわよ!」
「え~? サクラ、ちゃんと『パラララッパッパラー』とか効果音つけてたよ?」
「そんなので味方が理解できるかぁぁ! あと、そういう古いオタク文化のパロディを格好つけてこっちに振るんじゃないの! 私には元ネタがさっぱり分からないんだから!」
「アニメやマンガは新必殺技のアイデアの宝庫なんだよ」
サクラは少し膨れっ面をして講義した。
私が息を荒くしてツッコミを入れていると、上空のドローンが興奮冷めやらぬ様子でグルグルと旋回しながら喋り出してきた。
『いやぁ、しかし今の魔法構築は実に興味深いなぁ! エネルギーの物質化、いや「投影」やな。投影させた物質に外部からさらにエネルギーを送り込み、エフェクト効果を強制発生させることで、同時に対象に物理的・魔法的な大打撃を与える。……いやぁ、まったく! 恐ろしく無駄だらけのエネルギー転換方やな!!』
「……え、無駄なの?」
私が尋ねると、おっさんAIは『めちゃくちゃ無駄や!』と断言し、そこから一拍、不自然なほど大げさに「タメ」を作ってから、熱っぽく言い放った。
『――だがしかし、ロマンや!!! わかる、わてには痛いほどわかるでサクラはん! 例え周りの大人からどれほど非効率や無駄やと言われようとも、それがやりたい! その演出でなければアカンのや! ロマンの力には、どんな効率厨も勝てへんのやからな!!』
ドローンから溢れ出る、やけに熱いオタクの語り。
私はそれを冷ややかなジト目で見つめた後、スッとサクラの肩に手を置いた。
「サクラ。今度からそういう無駄なことはしないで、普通にエネルギー砲として撃ちなさい。その方が効率も良いし、威力も強いらしいから」
『 なんでやねん!! わての話ちゃんと聞いてた!? ロマンのくだり聞いてた!?』
「聞いてたから、一番強い方法を勧めてるのよ。……はい、おっさんAIの戯言は無視して次行くわよ。戦いが一瞬で終わっちゃたんだから」
『あんなぁ、そもそもスズカはんとサクラはんの攻撃力があれば、ここいらの低階層のモンスターなんて全員一撃で終わるんや。今回のワイルドボアとの戦闘訓練は、十階層のコリーダと戦うための「前哨戦」みたいなもんやからな。さっきのスイはんみたいに、敵の速度に慌てふためかんようになるための練習やで』
「くっ、わかってるわよ……! 次は絶対に慌てないわよ!」
『ならエエけどな。ほな、次のワイルドボアが居そうなエリアを見つけたから、さっさと行きまひょうか』
おっさんAIのドローンが再び先導を始め、私たちは十階層のボス・コリーダ戦を見据えて、さらなる戦闘技術の向上を目指して歩き出すのだった。
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