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No.25活動記録:放課後ウエポンショッピング!





 No.25活動記録:放課後ウエポンショッピング!




 『――というわけで、今回はいつものダンジョン探索ではありませんでしたが、新しくとっても頼もしい仲間が加わりました! これから配信も探索も、もっともっとパワーアップして進めていきたいと思います。そして次回ですが……ついに目標の「二階層」を目指します! それでは、今日の配信はここまで。皆さん、また次回お会いしましょう。せーの――ダンジョン、トラベルゥウウウ!』


 「……はぁぁあああああ……」


 放課後の部室。パソコンの画面に映る、先日アーカイブに投稿した自分のチャンネルのエンディングを見届けた瞬間、私は机に突っ伏して深々とため息を吐き出した。


 「スイちゃん。なんでさっきから、そんなに大きなため息ばかり吐いてるの? 幸せが逃げてっちゃうよ?」


 私の隣で、サクラが不思議そうに顔を覗き込んでくる。


 「……吐きたくなくても、勝手に口から出てきちゃうのよ」


 「まぁ、気持ちは分かりますけどね。配信のラストで、大々的に『次は二階層に行きます!』って宣言しちゃいましたから」


 お茶を淹れてくれながら、ヒマリが苦笑いを浮かべた。


 そうなのだ。自分で言っておいて何だけど、とにかく次の探索のことを考えると気が重い。重すぎる。


 「……本当に、気が重いわ」


 「大丈夫だよスイちゃん! もしイモイモが出てきたら、サクラがばばーっ! ってやっつけてあげるから!」


 「やっつける以前に、一匹たりとも私の視界に入ってこないでほしいのよ……!」


 想像しただけで鳥肌が立ちそうになり、私は慌てて頭を振って恐怖のイマジネーションを消し去った。このまま沈んでいても始まらない。私は気持ちを切り替えるために、今日の本題へと話を振ることにした。


 「それより、ヒマリ」


 「はい。なんでしょう?」


 「あんた、次の二階層からいよいよ前衛に出て戦うわけじゃない? そのためになにか『武器』が必要になると思うんだけど……何か持っていくもの、決めてたの?」


 「あー、そうなんですよね。武器と言われましても、今まで日常生活で刃物なんて包丁くらいしか握ったことがありませんから、いまいち具体的なイメージが湧かなくて。……それで、一応私の従妹のアイちゃんにも相談してみたんです」


 「へぇ、あの子は何て?」


 「『え? そんなの、自分が好きに持てば良いじゃん☆』って、ウインクしながら言われちゃいまして……。本当に困ってしまいました」


 「……」


 あの子なら絶対にそう言うと思ったわ。あの脳筋お気楽お宝ハンター配信者は相変わらずフリーダムというか、従姉の安全を何だと思っているのかしら。


 呆れるのを通り越して感心しつつ、私は先日の一件を思い出しながら提案した。


 「それならさ、とりあえず今日の放課後、みんなでストレージマーケットの武器屋さんに行ってみない? 実際に店頭に並んでる物を見てみたら、ピンとくるものがあるかもしれないし。ほら、この間スズカも一緒に行ったとき、お店に置いてあった馬上槍ランスを見た瞬間に『オレ、これにするわ』って即決してたから」


 「あの百万円のキャッシュ一括払いですね……。お聞きしたときはスズカさん、本当に男前な方だと感じました」


 「まぁ、あそこまで思い切りのいい買い物をしろとは言わないけど、とにかく現物を見るのは大事よ。気に入るのが見つかるかも」


 「お出掛け!? サクラも行く! サクラもお出掛けしたい!」


 私の言葉にサクラが勢いよく手を挙げると、ヒマリも嬉しそうにパッと表情を輝かせた。


 「そうですね。一人で悩んでいるより、皆さんに見てもらった方が心強いです。では、さっそく行きましょうか!」


 「おー!」


 こうして私たちは部室を後にし、ヒマリの記念すべき初武器を選びに、賑やかなストレージマーケットへと向かうことになったのだった。


 ギルドの手続きを済ませ、いつも通りおっさんAIのドローンをレンタルした私たちは、さっそくストレージマーケットの武器エリアへとやってきていた。


 ずらりと並ぶ、冷たい金属光沢を放つ武器の数々を前にして、おっさんAIが空中から声をかけてくる。


 『――で、今度はなんや? わてのアドバイスが必要になるっちゅう案件は』


 「すみません、AIさん。今回は私の『武器』についてなんです。私、なにぶん武道などは一度も経験したことがないものですから、どのようなものを選んで良いのかさっぱりでして……」


 ヒマリが申し訳なさそうに両手を合わせると、おっさんAIはレンズを一度パチクリとさせた。


 『あー、なるほどな。元々は後衛の補助職バッファーであるはずのヒマリはんを、「殴り魔法使い」なんていう極悪なゴリ押しビルドに進めたんは、他ならぬわての手前もあるか。エエやろ! ヒマリはんにドンピシャで似合う武器を!』


 「ありがとうございます。よろしくお願いいたします!」


 『うむ。まあ、一言に「近接武器」言うても色々ある。大きく分けて四つの系統があるんや。


 まず一つ目は、みんな大好き【刀剣・刃物系】や。剣や刀、ナイフといったポピュラーなものから、マニアックな曲刀まで幅広く、扱いやすさはピカイチの系統やな。


 二つ目は【打撃系】。前にスイはんにお勧めしたメイスや、今使っとるクラブ(伸縮棒)、あとはアックス(斧)やハンマー(大槌)なんかやな。敵の装甲を叩き潰す、ロマン溢れる一撃必殺の武器たちや。


 三つ目は【長柄ちょうへい系】。この間スズカはんが買うた|ランス(馬上槍)やスピア、ハルバードからポールウェポン、薙刀系の武器まで含まれる。間合いを広く取れるから女性でも比較的安全に扱えるが、ダンジョン内の狭い通路や障害物がある場所では途端に扱いづらくなるのが弱点やな。


 最後に、【格闘・特殊系】や。手に嵌めて殴るメリケンサック(ナックル)の類、あとは鎖や縄系、ヌンチャクなんかもここに入るな。ついでに投擲用の手裏剣なんかもこのジャンルや。――こうして一言で言っても、めちゃくちゃ種類があるやろ?』


 「そうですね……! 本当にたくさん種類があるんですね」


 おっさんAIの流暢な解説を、ヒマリは熱心にメモを取るような勢いで深く頷きながら聞いている。


 『ヒマリはんの「自己強化バフ」の効果が、自分の身体能力だけでなく持っとる|道具(武器)の強度にまで及ぶとは今のところ思えへん。やから、選ぶ基準としてはとにかく「頑丈なやつ」を選んどいた方がエエ。バフの怪力で武器がすぐへし折れたら、買い換えるのにも金がかかってしゃあないからな』


 「なるほど、頑丈さですね。わかりました!」


 『ほな、こっから先が近接武器がメインで置かれとる専門店エリアや。まずは直感で構わんから、気に入ったのを見つけてきい、見つけたらわてに声かけてや』


 「はい! それでは、行ってきます!」


 「サクラも行くー! かっこいいやつ探す!」


 サクラが嬉しそうにヒマリの手を引いて歩き出す。私もそれに続こうとして、ふと浮遊しているドローンを振り返った。


 「私も一緒についていくわね。……って、おっさんAIは来ないの?」


 その場に滞空したまま動こうとしないドローンに向かって尋ねると、おっさんAIはどこか気取った調子で電子音を鳴らした。


 『ふっ、女の子の買い物に、男のわてがホイホイついてくのはヤボっちゅうもんでしゃろ。わてはここで、おとなしく待っとりますわ』


 「……あんた、一応『男』の自覚はあるのね。AIのくせに」


 『そらそうよ。おっさん声の音声モジュールを積んどるからな。必然的に男性性格の思考ルーチンが働くんですわ。……それより、お二人においてかれまっせ、スイはん』


 「あ、大変。本当だわ。じゃあ、ちょっと行ってくるわね」


 『はいな。気ぃつけて行ってきなはれ』


 おっさんAIに見送られながら、私はヒマリとサクラを追いかけ、武器の立ち並ぶ店舗へと足を踏み入れた。果たして、あのほんわかしたヒマリがどんな武器を選ぶのか……楽しみ半分、少しの不安半分で、私たちは本格的な武器探しを始めるのだった。


 まずは入り口近くの店舗から見て回ることにした。


 ずらりと並ぶ冷たい鉄の感触に、ヒマリは少し緊張しているようだった。


 「ここは刀剣類みたいね」 


 「いらっしゃいませ。刀剣類のお探しですか?」


 店員さんが愛想よく声をかけてきたので、私はヒマリを指し示した。


 「私ではなく、友達の武器選びでして」


 「剥き出しの刃物は……なんだか、見てるだけでちょっと怖いですね」


 ヒマリは一般的なロングソードを手に取り、どこか困ったような顔で呟く。いや、当たり前なんだけど、武器屋に来ておいてその感想は、ある意味で究極のズレかもしれない。


 「女性にも人気な細剣レイピアなどもございますよ。繊細で美しいですよ」


 「う~ん……大きな針みたいですね」


 ヒマリが真顔で言う。……言われてみれば確かに見えるけれど、そうじゃない! 店員さんがコメントにどう返していいか分からず、引きつった笑みを浮かべているじゃない!


 「ヒマリちゃんヒマリちゃん! こっちのでかい剣はすごいよ! これかっこいい!」


 サクラが展示棚の奥から、私よりも背の高い巨大な剣を指差した。


 「そちらはツヴァイハンダーと呼ばれる大剣系統です。破壊力は抜群ですが、大人の男性でも振り回すのはやっとという一品でして……女性の方には全くお勧めしておりません」


 店員さんの冷や汗が目に見えるようだ。私は溜め息をついてフォローを入れる。


 「あ、いいですいいです。あの子、見た目だけで選んでるだけですから。気にしないでください」


 「ぶー。サクラ、ちゃんと考えてるもん!」


 「なら、あんたそれ持ってみなさいよ。本当に使えるんなら考えを改めてあげるわよ」


 私に煽られ、サクラは意気揚々とツヴァイハンダーの柄を握る。


 「……お、おもい」


 「……そちら、約6キロの重量がございます」


 ピクリとも動かない剣を前に、サクラは固まっている。5キロのお米袋を振り回すようなものよ、それ。無理に決まってるじゃない。


 「……う~ん、こちらのナイフだとどうしても果物ナイフの印象があって、戦う気がしませんね」


 ヒマリはヒマリで、私たちのやり取りには目もくれず、黙々とナイフを手に取っては首をかしげている。結局、この店にはヒマリの心に刺さる武器はなく、私たちは早々に次の店舗へ移動することにした。


 「次は打撃系ね。私と同じ|クラブ(伸縮棒)にしてみる?」


 「一応、AIさんの言っていた系統はすべて見るつもりですが……最終的に何も決まらなければ、そうしましょうか」


 そんなふうに会話しながら通路を歩いているときだった。


 「やあ、そこ行くお嬢さん方。そんなありきたりで武骨な武器なんかより、僕の店の品を見ていかないかな?」


 声をかけてきたのは、やや芝居がかった口調の男性だった。……いや、違う。この人は女性だ。


 なぜ分かったかと言えば、あまり口に出したくはないけれど、胸元の膨らみが私よりも(僅に)主張していたからだ。


「……そちらも、武器屋さんなのですか?」


 「ああ、武器屋だよ。ただし、僕の店に置かれている武器は、すべて『特殊』な武器さ」


 「特殊武器……? おっさんAIが言ってた手裏剣みたいなものですか?」


 「うーん、それもあるかな。僕のところはもっと変わっていて、それでいて実用性があるんだ」


 ヒマリが私を見つめる。期待に満ちたその瞳に負け、私は溜め息をつきながら頷いた。


 「どうする、ヒマリ?」


 「見させていただきましょうか。何事も経験です」


 「わかった。サクラ、こっちのお店だって」


 「そっち? わかったー!」


 胡散臭い店主が手招きする店へと、私たちは足を踏み入れた。そこには、今までの武器屋とは明らかに空気が違う、怪しげな「特殊系」の武器たちが並んでいた。











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