↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
100/102

No.100活動記録:合同探索開始! 芽吹く司令塔と骨の軍勢

【お知らせ】

作品に挿し絵を追加してあります!

よろしければ、本文と合わせてイラストも楽しんでいただけると嬉しいです




No.100活動記録:合同探索開始! 芽吹く司令塔と骨の軍勢




 私たちはいよいよ、二十階層に出現するという移動遺跡の発見に向けて動き出すことになった。


 そのためのメンバーが今、このダンジョンギルドのロビーに続々と集結しつつある。


 『いやぁ~、スイはん意気込んどりますなぁ。どこぞの昭和の怪しい探検番組のナレーションかと思いましたわ』


 「悪かったわね! 今日の合同探索のことは前の配信時にリスナーさん達に伝えてあるから、後で編集した映像を使う時にそのままナレーション代わりに使えるかと思って言ってみただけよ!」


 『いやいや、エエんやない? 昭和臭いコテコテのバラエティー番組みたいで、わては個人的に大好物ですけどな』


 ……一生懸命考えたセリフを「昭和臭い」で片付けられたことに若干ショックを受けつつも、私はおっさんAIをジト目で見つめた。


 『それよりな。今日のわて、いつもとちょっと変わってるんやけど分かります?』


 空中をすいすいと旋回しながら、自身の丸っこいボディをこれ見よがしに見せびらかしてくるおっさんAI。まるで「髪切ったの気づいて?」と聞いてくる面倒くさい彼女のようなノリである。


 「……メンテナンスしてもらった時に、ボディでもピカピカに磨いてもらったの?」


 『磨いてもろたけど、そやないねん! 今日のわてはな、『目』がめちゃくちゃエエんでっせ! 大船に乗ったつもりで期待しててくださいな!』


 「あ、うん。そう……」


 カメラレンズをカチカチと頻繁に伸縮させてアピールしてくるおっさんAI。


 画質や解像度でも上がったのかしら? と、私はそれ以上深く気にすることもなく、おっさんAIのアピールを適当に受け流した。


 「おっまたせ~~~♥️ 来たわよ~っ!」


 ロビーで待っていると、エリカさんの華やかな声が響いた。そちらへ視線を向けると、そこにはきゃぴっとした今どきのギャルっぽい私服に身を包んだ女性と――その隣に、対照的な地味で控えめな色合いの服を着た少女が並んで歩いてくる。


 「……なに? あんたらだけ? あいつらはまだ来てないの?」


 その声から察するに、隣の少女はアイリスのようだ。


 「……ダンジョンの外では、いつもそんな感じの格好なのね」


 「仕方ねぇだろうがッ! 家じゃ親の言うこときちんと聞いてんだからよ……!」


 「この子ったら、本当に親の前じゃ強く出られないんだから。内弁慶ならぬ外弁慶とでも言うのかしら~?」


 「っさいわねッ! オバサンみたいに年甲斐もなくそんな服着てられる精神を、あたしは持ち合わせてねぇんだよッ!」


 「ぐっ……! この子ったら、可愛い服を着るのに年齢なんて関係ないでしょうがッ!」


 放っておくと永遠に始まりそうな、いつもの不毛な言い争い。私はすかさず二人の間に入って止めた。


 「はいはい、そこまで! 二人は私のパーティーメンバーとはほとんど交流がないでしょう? ダンジョンへ潜る前に、少しでも親睦を深めておきなさいな」

 

 「そうね。……初めましての方、エリカで~す♥️ よろしくね。ほら、あんたも挨拶しなさい」


 「お、押すなって……! ……あ、アイリスです。よろしくお願いします……」


 「おう。ヒマリの従姉妹なんだってな。オレはスズカだ。よろしく頼むぜ」


 「サクラはね、サクラだよ!」


 二人とは一週間前に顔を合わせてはいるものの、まともな会話は交わしていなかった。そのため、借りてきた猫のように小さくなっているアイリスを見て、エリカさんとヒマリが忍び笑いを浮かべている。


 「(……てめぇらニタニタ笑ってねぇで、早くあたしを助けろよッ!)」


 アイリスは小声でエリカさんとヒマリに必死の救援信号を送るが、


 「え~? 新しい交流は深めておくべきよ? 特に、あんたみたいな極度の人見知りの子はねぇ。……そうでしょう、ヒマリちゃん?」


 エリカさんは「従姉妹であるヒマリちゃんなら分かるでしょう?」と楽しそうに話を振る。


 「そうですね。アイちゃんは大人の方々や初対面の方の前では本当に大人しくなってしまいますから。私の前などの身内に対しては、今のように口悪く言われることがあるのですが」


 「打ち解けてくると口が悪くなるタイプね。私の時なんて、知り合ってすぐに遠慮なく悪くなってたけれど」


 どこか懐かしむように語り合う二人。


 その会話を聞いていたスズカが、ポンと手を叩いた。


 「おっ、なんだ! 親しくなると口調が崩れるタイプか! だったら尚更もっと仲良くなろうぜ! 丁寧な口調なんて肩が凝って大変だろ?」


 「サクラもねぇ、お話ししたい! アイリスちゃんとおしゃべりしようー!」


 スズカとサクラが興味津々といった様子でアイリスへぐいぐいと距離を詰めていく。


 「え、っと……は、はい……っ」


 消え入りそうな声で返事をするアイリスだったが、その瞳は(ひぃいいいい! なんだコイツら!? なんでこんなに距離感バグってんだよッ!?)と、完全に恐怖で怯えきっているようだった。


 アイリスが怯えながらスズカたちにグイグイと構われていると、待っていた残りのメンバーがギルドのロビーにやって来た。


 「ごめ~ん、スイちゃん! お待たせー!」


 手を振って駆け寄ってきたのは、フウカさんたち『僕っ娘同盟』の面々……なのだが。


 「……あの、マオさんは大丈夫なんですか?」


 フウカさんの後ろから、マオさんが今にも倒れそうなほどぐったりとした様子で歩いてくるのだ。


 「あはは、気にしないで! マオのあれはいつものことだからさ。ダンジョンに入りさえすれば、いつものローテンションなマオに戻るから」


 「それなら良いんですけど……具合が悪いとかじゃないんですね?」


 「具合が悪いっていうか、ただの極度な『寝不足』だからねぇ」


 隣のコナタさんが呆れ顔で補足するように教えてくれた。


 「ね、寝不足……!?」


 「マオは完全な夜型人間だから、昼間は基本寝てるんだよ」


 「ええっ!? だったら昼過ぎてからの探索開始にすれば良かったですか!?」


 「いいのいいの! それは完全にマオ個人の都合だし、僕らがスイちゃん達のペースに合わせて動くって決めたんだから。……ほらマオ、もうちょっとしっかり歩いてよ。カフェインでも摂る?」


 肩を貸すように寄り添って歩いているレイさんが聞くと、マオさんは力なく首をゆっくりと振った。


 「……いらない。飲んだら……寝る……」


 (……なんでカフェインを摂ったら逆に寝ちゃうの!? 普通は目が覚めるんじゃないの……!?)


 体質の謎に内心突っ込んでいると、


 「……おはー……スイちゃん……」


 どこかトロンとした焦点の定まらない目で、マオさんが挨拶をしてくれた。


 「……本当に大丈夫なんですか?」


 「……んー……ダンジョン入れば……なんとか……ふぁあああ……っ」


 眠そうに目を擦りながら、盛大な欠伸を噛み殺すマオさん。


 「おっ! お前ら、この間いた奴らだよな? 今回の合同探索の連中か!」


 スズカが『僕っ娘同盟』の面々を見つけると、逃げ出そうとしたアイリスを片腕でラグビーボールのように脇に抱えたまま、こちらへとやって来た。


 「ちょっ……離して……くださいっ! ……おいッ! なんなんだよこいつはッ!?」


 アイリスは徐々に素が出てきたのか口調が荒くなり、私と視線が合うと(この野生児を早くどうにかしろッ!)と言いたげな必死の目配せを送ってくる。


 スズカはアイリスを小脇に抱えた状態のまま『僕っ娘同盟』のみんなと「よろしく頼むぜ!」「こちらこそ~」と威勢よく挨拶を交わし――これで今回参加する全メンバーがギルドロビーに揃い踏みとなった。


 『……なんや、えらい賑やかできゃぴきゃぴした空間になってきたなぁ。男(?)ひとりのわてがポツンと浮いとると、なんや女子高の引き連れ教師にでもなった気分ですわ……』


 上空をすいすいと浮遊しながら私たちを見下ろしていたおっさんAIが、誰に聞かせるでもなくそんな言葉をぽつりと漏らしていた。


 私たちが所属する『みどりの葉っぱ隊』。


 アイリスたちの『お宝ハンター組』。


 そしてマオさんたちの『僕っ娘同盟』。


 三つのパーティー総勢十名が揃い、地上に出現している次元門を潜り抜ける。私たちは再び、危険と未知が渦巻くダンジョン二十階層へと足を踏み入れた。


 「おーしっ! 着いたな! んで、これからどうするんだ、スイ?」


 一度到達した階層であれば次元門で一瞬にして移動できるというのに、スズカは何時間も泥臭く歩破してきたかのような豪快な仕草で私に尋ねてくる。


 「……みなさんに、今一度だけ確認させてください。今回の移動遺跡の捜索における総指揮は、私が執るということで良いのですね?」


 私は集まったトラベラーたちを見回して確認を取る。全員が異論なしと力強く頷いた。 


 「ふわぁぁ……ボクらは元々スイちゃんたちの指示に従うって決めてたから、全く問題ないよぉ」


 マオさんは大きな欠伸を漏らしながら、トロンとした目で答える。


 「私たちはダンジョン探索なんて、これまで逃げ回っていただけだからねぇ。探索のノウハウに関してはスイちゃん達に任せるしかないわ」


 エリカさんもそう同調し、


 「……だからって、理不尽な命令出したら聞かねぇからなッ!」


 アイリスはみんなの前でも大分緊張がほぐれてきたのか、いつもの乱暴な口調を取り戻しつつあった。


 私は一つ大きく頷いた。


 「分かりました。では、私が今回の探索に向けて考えておいたプランの一つを試したいので……早速ですが、エリカさんとアイリス。お願いできますか?」


 「あら? いきなり私たちの出番?」


 「もうこき使うつもりかよ……」


 二人とも突然の指名に驚きつつも、拒否する様子はない。


 「まずエリカさんには、スケルトンたちを……そうですね、百体ほど呼び出してもらえますか?」


 「百体ね、OK! すぐ呼び出してあげるわ」


 エリカさんはすぐさま召喚の詠唱に入る。


 「アイリスは、アイママを呼んでもらえるかしら?」


 「あぁん? ママを……? ……まあ、良いけどさ」


 アイリスはこう言ってはなんだけれど「アイママ」有りきのスタイルだ。そこを直接言ってしまうと不貞腐れそうだし、だからと言ってアイリス自身に価値がないわけでもない。……とはいえ、褒めちぎると鼻がピノキオのように伸びて有頂天になりそうなので口には出さないでおく。


 エリカさんの詠唱が完了すると、私たちの周囲の地面から、ガシャガシャと骨の音を立てて百体ものスケルトンが這い出してきた。


 「うおぉっ!? すげぇな……! 人骨がこれだけ一気に現れると、さすがにちょっとビビるぜ。スイは平気なのか?」


 スズカが引き気味に私を心配して声をかけてくる。


 ……平気? 決して平気ではありません。ただ、地獄の七日間訓練の最中に嫌というほどスケルトンを目にしていたおかげで、多少の耐性がついただけだ。それでも怖くて不気味なものは不気味である。


 私は引きつった笑顔を浮かべつつ、グッと親指を立ててみせた。


 「……本当に大丈夫なのかよ、お前……」


 スズカが「無茶するなよ」と言いたげな視線を向けてくる中、突如空から現れたアイママの姿を見て、激しい衝撃を受けている人物が一人いた。


 「叔母様……!? ええっ!? 叔母様がなんでダンジョンに!? トラベラーになられたのですか!?」


 ヒマリが目を丸くし、混乱した声をあげる。


 「あー……面倒くさいな、ヒマリ。これ、ママの姿をしてるけどママ本人じゃないのよ」


 「叔母様だけど、叔母様ではない……?」


 アイリスの雑な説明のせいで、ヒマリは余計に頭の上にハテナを浮かべていた。


 「ヒマリちゃん、私はアイちゃんに呼び出された召喚物。実際のアイちゃんのママではないですが……私はアイちゃんのママのつもりですよ? だから私のことも、普段通り『叔母様』と呼んでくれて構いませんからね」


 「は、はい……。叔母様ではないけれど、叔母様にそっくりな存在、ですか……」


 いまいち呑み込めていない様子だが、まあ実害はなさそうだ。


 『ほう……数値が神聖系のパターン波長を示しとるな。あのお嬢ちゃんが呼び出したあの姐さん、姿は人間かも知れへんが……中身は完全に『天使』やな。しかもエネルギーレベルは……お嬢ちゃんのレベルがまだ低いせいもあるみたいやけど、『熾天使(セラフィム)』級に迫っとる……。完全解放されたらスズカはんのマジもんの神さんであるストームはんとサンダーはんには負けるやろうけど、神霊クラスに匹敵する力があるで、あの姐さんは……』


 おっさんAIは上空からアイママをスキャンし、その凄まじい存在レベルを測定して独りごちていた。


 と、それに気づいたアイママは、おっさんAIに向かって人差し指を優しく口元に当て、可憐にウィンクしてみせた。


 『はは、黙っとけってことかいな。わても野暮にペラペラ喋るつもりはないから安心しいや』


 「それじゃあ準備が整ったところで……アイママ」


 「はい。私は何をすれば良いんですか、スイちゃん?」


 「エリカさんのスケルトンたちに『オーバーレイズ』をかけてください」


 「分かりました。――【強制存在進化(オーバーレイズ・レボリューション)】ッ!」


 スケルトンたちにアイママの聖なる力が注ぎ込まれると、ただの雑魚モンスターだった人骨たちが目まぐるしく姿を変えていく。


 やがて光が収まると――すべてのスケルトンたちが漆黒の弓を手にし、深緑のフード付きマントを羽織っていた。


 「今回は『スケルトンアーチャー』に一斉進化させたようですね」


 (……アーチャー、つまり弓使いね。この木々が鬱蒼と茂る広大な森の中で、どれくらいスムーズに動いてくれるかしら……)


 以前のように重装甲のスケルトンナイトなら、強引に進軍できて頼もしかったのだが、アイママの『オーバーレイズ』は進化先をコントロールできないランダム仕様だ。そこは割り切るしかない。


 「じゃあエリカさん。このスケルトンたちを25体ずつ、四つのグループに分けてもらって、私たちの前後左右を囲むように配置してください」


 「OK! さあーっ! 私の可愛い下僕たち~! うま~くバラけて、私たちの周りで良い感じに隊列を組みなさいなッ!」


 エリカさんの大ざっぱすぎる指示だが、スケルトンたちは整然と四方に散り、見事な陣形を組み上げた。


 言葉通りに動いているというよりは、エリカさんから発せられるイメージや意思を受信して自動行動しているのだろう。……詳しい考察はみんなの前ではしないでおくけれど。


 「スイちゃん、配置完了したわよ!」


 「ありがとうございます!」


 ――さあ、ここからは私の番だ。


 私は旗槍を滑らかに旋回させると、その石突きをドンッ! と地面に力強く突き立てた。


 光の帯を放出して私たちのシンボル『みどりの葉っぱ隊』の章旗を大空へとはためかせ、大きく息を吸い込む。


 「――【鼓舞奮闘】ッ!」


 スキルの威力を解放した瞬間、周囲の空間全体を包み込むように、温かく優美な光の波動が周囲全域へと一気に降り注いだ。








挿絵(By みてみん)

少しでも面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。 応援していただけると、とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。