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竜の国 【リメイク版】  作者: 一理。
王宮生活

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側近会議とルードルフの調査(3)


「なんだって! ルードルフ、もう一回言ってくれ!」


 国王、ヘンドリックが言葉を荒げた。


「トシュタイン王国からもうすぐ開かれるマリアレーテ王女様お披露目の夜会に出席したい。その許可を頂きたいと書状が届いております」

「馬鹿馬鹿しい!」


 ヘンドリックは吐き捨てた。


「トシュタインの奴らはどういう頭の構造をしているんだ? あの国には恥という概念が無いのか!」


 とフーベルトゥス騎士団長も辛らつだ。

 今、国王の執務室にいるのは国王ヘンドリック、宰相ルードルフ、フーベルトゥス騎士団長、ノルベルト筆頭侍従に加えゴルトベルグ公爵アウグスト、ビュシュケンス侯爵アルブレヒトに加え王太子ジークハルトと筆頭補佐官のフィリップ。


「もちろんトシュタイン王国には招待状なんて送っていないんだろう? どうして知ったのかな?」


 ちょっとのんびりした口調でアルブレヒトが言う。


「それは……知ることぐらいは容易いでしょう。機密事項でも何でもないのですから」


 ルードルフの言葉にヘンドリックが被せる勢いで吐き捨てた。


「マリアレーテが生きていた。そして見つかって王族に名を連ねることになったお披露目だぞ!? 誘拐した張本人の国の奴らがお祝いにやってくるというのか!?」

「トシュタイン王国は誘拐を認めておりませんから」


 ルードルフは冷静に答える。

 そうなのだ。ヴェルヴァルム王国にとってはマリアレーテ王女の誘拐はトシュタイン王国の陰謀であることが広く知れ渡っている。

 でもトシュタイン王国はそれを認めなかった。マリアレーテ王女を乗せた馬車はソヴァッツェ山脈のトシュタイン王国に通ずる山道の谷底で見つかった。馬車にはもちろんトシュタイン王国の紋章なんか入っていなかった。しかし誘拐に協力した乳母はトシュタイン王国の手の者に脅されていたと証言した。ヴェルヴァルム王国側はその証言を重要視したし、トシュタイン王国との境で馬車が見つかったのだから明白だと思った。

 しかしトシュタイン王国側は全て知らぬ存ぜぬで突っぱねた。馬車はトシュタイン王国を抜けてもっと西方の国に行くつもりだったのかもしれない。乳母など下賤な者の証言を信用するなどどうかしていると言って罪を認めなかったのだ。誘拐の実行犯は馬車と一緒に谷底に落ちて死んでしまっている。谷底の川付近で数十人の遺体が発見されている。馬車に乗っていたと思われる平民の格好をした男の遺体と共にトシュタイン王国の騎士の遺体も多く発見されたのだが、その騎士たちは別件で凶悪犯を追っていてその場に居合わせたのだろうというバカげた主張だった。


「トシュタイン王国では誰が大使として来たいと言っているんだ? あの第一王子か?」


 嫌なことを思い出してしかめっ面をしながらフーベルトゥス騎士団長が聞いた。


「大使は……第七王子エリオですね。補佐官でラーシュ・シュトレーム子爵以下二名。それと宰相補佐官のグラート・カルドッチ以下文官二名、それと従者、護衛が十名」


 ルードルフは書面を読み上げる。


「誰が来ようと———」

「ラーシュだって!?」


 ヘンドリックとジークの声が被った。


「何だ? ジーク」


 ヘンドリックの問いにジークが答える。


「父上、ラーシュというのは私がトシュタイン王国で怪我をしたときに救ってくれた人物です。彼ははっきりとは言いませんでしたが第七王子とクーデターを画策していて私に協力を求めていました」


 ジークの言葉で会議の様相がガラッと変わった。



「ふうむ……ジークを助けてくれた人物と為人を確かめたいと思った第七王子か……」


 ヘンドリックは考え込んだ。


「うん、興味がわいてきた。私は第七王子とジークを助けた男に会ってみたいな」


 アルブレヒトが言う。


「トシュタインの王族を招き入れるなど……陛下やジークが危険にさらされることは無いのか?」


 ゴルトベルグ公爵アウグストは不安そうだ。


「危険が無いとは言えませんが私が王国騎士団第一隊近衛騎士の名誉にかけてお守りします。トシュタイン王国も各国が招かれている中で何か仕掛けるほど馬鹿だとは思いませんが」


 フーベルトゥス騎士団長は胸を張って言った。


「ヘンドリック、いや陛下、大使一行を招きましょう。第七王子たちがクーデターでトシュタイン王国の王族を滅ぼしてくれるならこんな嬉しいことは無い。いくらでも力を貸すよ」


 今やアルブレヒトはかなり乗り気だ。


「しかしその第七王子もトシュタイン王国の王族の一人ですよ。大がかりな陰謀なのかもしれません」


 ルードルフは冷静に言う。


「待ってくれルードルフ。私はラーシュには会ったが第七王子には会っていない。しかしトシュタイン王国のいびつな現状を聞いた。ラーシュは昔トシュタイン王国に滅ぼされた旧ゲレオン王国の地方領主だと言っていた」


 ジークが話し出すとヘンドリックも「ああ、あの辺りは旧ゲレオン王国の土地だな」と納得の表情を浮かべた。


「彼らは過度の重税と徴兵に苦しめられていると言っていました。ラーシュは以前トシュタイン王国がメリコン川を渡って我が国に襲撃してきた折にも徴兵され無理な行軍を強いられていたらしい。あの国にはそういう虐げられている民や地方領主が沢山いる。王都で華やかな生活をし、無慈悲な侵略戦争や陰謀を企てているのは王族と一部の大貴族です。ラーシュは第七王子の管轄になって随分と楽になったと言っていた。それだけでも私は第七王子を信用できると思う」

「ということは今回の訪問はクーデターの助力を頼みに来るのか?」

「いいよ。私は大賛成だ。トシュタインの王族などさっさと滅んでしまえばいい」


 アウグストの問いかけにアルブレヒトは上機嫌で応じた。アルブレヒトにとってトシュタイン王国は愛する妹を二人も殺されたにっくき敵だ。それを言うならこの場に集まった半数以上が最愛の妻を、母をトシュタインに奪われた者たちだ。

 トシュタイン王国には皆深い恨みを持っている。それでも一方的にトシュタイン王国を攻めなかったのは侵略者になってはいけないためだ。ヴェルヴァルム王国が本気で攻めれば少なくない犠牲を伴うだろうがトシュタイン王国を亡ぼすことができるだろう。

 しかしその後はこの大陸は混沌とした戦いの渦に巻き込まれるかもしれない。トシュタイン王国まで併合したヴェルヴァルム王国の領土は大きくなりすぎるのだ。そしてヴェルヴァルム王国はトシュタイン王国の領土を併合する気が無い。領土を拡大したいという意思が無いのだ。


 故にヴェルヴァルム王国は度重なるトシュタイン王国の仕掛けてくる戦やテロに対し粘り強く証拠を集め撃破し、理をもって当事者に責任を取らせたり賠償金を支払わせることによって事態の収拾を図ってきた。

 トシュタイン王国の内部でクーデターが起こり政権が交代する。そして新政権が信頼に値するものだったとしたらヴェルヴァルム王国にとっては大歓迎なのだ。その為には喜んで協力するだろう。新政権には恩を売れるので有利な条件で国家間の取り決めを進められるというメリットもある。

 新政権を担う人物が信頼に値する人間であることが前提条件だが。


「トシュタイン王国の大使一行は受け入れた方がよさそうだな」


 ヘンドリックが結論付けたがアウグストから疑問の声が上がった。


「第七王子側の意図はわかったがトシュタイン王国の国王や第一王子はそれに全く気が付いていない間抜けなのか? それとも何か意図はあるのか?」

「国王や第一王子が第七王子の企みに気づいているかどうかはわからない。気づいていてあえて泳がせているにしろ気づいていないにしろ大使一行には必ず手の者を入れてくるだろう」


 ヘンドリックが考えながら言う。


「ということは……ルードルフ、もう一度大使一行のメンバーを読み上げてくれ」


 アルブレヒトの要請を受けてルードルフはもう一度読み上げた。


「大使は第七王子エリオ。補佐官でラーシュ・シュトレーム子爵以下二名。それと宰相補佐官のグラート・カルドッチ以下文官二名、それと従者、護衛が十名です」

「宰相補佐官のグラート・カルドッチというやつが怪しいな」

「そうだな、それと従者と護衛は半分に減らすよう連絡してくれ。特に護衛は王宮内で帯剣は無しだ。その条件を飲まなければ許可できないと言ってやれ」


 アルブレヒトの言葉にヘンドリックも同意し、条件も付け加えた。


「私もその男は確実に第七王子のお目付け役だと思いますが、他にも目的があるかもしれません。それにその他の者も一応注意を払っていた方がいいでしょう。第七王子とラーシュ以外は疑ってかかるべきです」


 ジークの言葉に一同頷いた。


「ジークも大人になったなぁ……ついこの間までこんなに小さかったのに……」


 手で腰の辺りを指し示しながらしみじみとアウグストが言うとジークは不満げに眉を顰めた。


「叔父上! いつの話ですか! 私はもう十八です!」

「そうだぞアウグスト、もう嫁を貰う年だ」


 アルブレヒトの言葉にフィリップは「まだ婚約者だ! まだ嫁にはやらない」と小声で反論した。ジークだけに聞こえるような小声だ。

 さすがに父と同じような歳の重鎮たちが居並ぶ場所では発言することもできず空気に徹していたフィリップだった。


 ジークは、フィリップの反論を聞いて(嫁に出すも出さないもヴィヴィはアウフミュラー侯爵家の令嬢じゃなく王家の姫なんだけどなぁ)と思ったが言えなかった。フィリップが未だヴィヴィのことを妹としてジークが嫉妬するほどに愛しているのを知っていたから。そしてヴィヴィもフィリップのことを兄として慕っているのを知っていたから。


「異例のことではあるがトシュタイン王国の大使一行は受け入れることとする。早速書状を送ろう。大使一行についてはくれぐれも目を光らせておいてくれ。フーベルトゥス、頼むぞ」

「御意」


 ヘンドリックの言葉にフーベルトゥス騎士団長が騎士の礼で答える。ヘンドリックは続けて言った。


「第七王子に関しては我々の読み通りなら内密に接触を図ってくるだろう。そのほかの者についても誰に接触を図ったか注意して見ていてくれ。トシュタインの一行には王国騎士団の第四隊をつけるが皆もよろしく頼む」


 国王ヘンドリックの言葉で側近会議はお開きになった。

 この決定については次の日大臣を招集した定例会議上でも報告され、賛否両論、いやほとんどが否定的な意見だった。第七王子のクーデター情報は伏せられたままだったのでマリアレーテ王女を誘拐したトシュタイン王国の王族がどの面下げてやってくるのだと皆、憤懣やるかたない思いで反対意見を述べたが「だからこそあえて使者を受け入れその目的を探るべきである」という国王の意見に一同不承不承従った。


 共に会議に出席していたゴルトベルグ公爵アウグストと筆頭侯爵家当主でもある宰相ルードルフ、序列第二位のビュシュケンス侯爵アルブレヒトがいち早く賛成の意を示したからでもあるが。

 各国の賓客に加えトシュタイン王国の大使もやってくるということで本宮と北の離宮近辺はピリピリした雰囲気に包まれていた。











「こちらでお待ちくださいませ」


 柔らかな物腰の執事に案内され、ブルーノ・イェレミースは小さく頭を下げた。

 今までは王宮の宰相執務室に報告に上がっていた。王宮も緊張する場所だが、筆頭侯爵家であるアウフミュラー侯爵家のタウンハウスも十分豪華で落ち着かない。

 執事がお茶を入れて部屋の隅に控えると、程なく当主であるルードルフが現れた。


 いつも王宮で会う時よりも幾分ラフな服装であるが、最高級の仕立てであることはブルーノでさえ一目で分かる。きっとブルーノが着ている一張羅よりゼロの数が二つや三っつ違うのだろう。それを無造作に着こなすルードルフはやはり育ちが違うんだなあと変なところにブルーノは感心した。


 今回、王宮の宰相執務室でなく、アウフミュラー侯爵家に調査の報告に上がったのは今回の依頼が宰相としてではなく、ルードルフ個人のものだからだ。


 前々回、恐れ多くも国王陛下の御前でオリバーが王立魔道具研究所で働いていたことを報告した。

 次はオリバーが孤児院に来るまでの足跡を調べたが、あらかじめルードルフに告げていた通り、ほとんど足跡を掴むことが出来なかった。かろうじてペーレント伯領で金髪の可愛い赤子を背負った男の子を世話した記憶がある、という老婆の証言を掴んだだけだ。三十年以上も前の事なので、その証言すらもオリバーとマリアの事なのか確かめる術はなかった。

 そしてそれを最後にオリバーの調査は打ち切られた。


 打ち切りの理由は告げられなかったが、今まで調査してきたことを踏まえれば推測はつく。ブルーノがそれを他人に喋るほど馬鹿でないのはルードルフもよくわかっている。

 そもそもブルーノに侯爵家メイドのマリアとその夫オリバーの調査を依頼したのは、その子供、ヴィヴィアーネの魔力が異常に多かったこと、そしてその魔力を五歳になるまで誰も気がつかなかったことが発端だ。

 しかしつい先日、平民であると思われていたマリアが、実は前国王陛下の唯一の姫であることが発覚した。

 それによってヴィヴィアーネの魔力が多いのは、マリアレーテ王女の娘であるからと得心がいったのだ。ヴィヴィアーネは直系の王家の姫なのだから魔力が多いのは当然だ、そして赤子に魔力があると気づいたオリバーが魔道具研究所で働いていた知識を活かし、娘の魔力を隠したのだろうというのが王宮の見解だった。魔力がある平民の子供は貴族の養子となる事が定められているから。

 

 それはそれで筋が通っている。その為これ以上の調査は不要、と判断されて打ち切りとなったのだ。

 ブルーノとしてもこれ以上オリバーの足跡を調べても何も出ないだろうし、報酬は十分すぎるほど貰った。オリバーはおそらく十一年前のトランタでのトシュタイン王国の侵攻、その時に命を落としたのだろうというのがブルーノの推測であり、王宮の推測でもあった。



 そのブルーノが再びルードルフに呼び出されたのは調査の打ち切りを告げられてからわずか二日後、場所はアウフミュラー侯爵家の応接室、今ブルーノがいるこの場所だ。前回も味わった場違いな気分を押し隠してブルーノはお上品な香りのする紅茶に口をつけた。


「国をまたいでの調査、ご苦労だった。して、結果は?」


 ゆったりとソファーに腰かけたルードルフは態度とは裏腹に性急に口を開いた。

 その口調は宰相そのもので、王宮の宰相執務室での口調と変わらない。

 ブルーノは口を開く順番をもう一度確かめた。調査の結果だけを、感情も推測も排除して結果だけを伝える。その推測がどんなに心躍るものであっても。


「三十三年前のリードヴァルム王国へのトシュタイン王国の侵略、それによってリードヴァルム王国は滅びました。その際、国王夫妻の亡骸は城壁に晒されましたが、王太子、オリヴェルトの死亡は確認されておりません。オリヴェルトはトシュタイン王国の軍の手を逃れいずこへかと姿を消したとの噂があります」


 ブルーノの言葉にルードルフが頷く。ここまでは今までも密かに囁かれていたことだ。トシュタイン王国と国交もないヴェルヴァルム王国の国民にとっては興味もかかわりもないので知られてはいないが、王太子オリヴェルトの死をトシュタインの王家が発表しながらその遺体を誰も見ていないことから、トシュタイン王国に嘗て征服された国の民の間で、いくら刈り取ってもいつの間にか蔓延る雑草のように囁かれていた。


「その侵略戦争の数か月後、これは証言者の記憶が曖昧で確かな日時はわかりませんが、ソヴァローゼの花の季節だったという証言から初夏であったと思われます。トシュタイン王国の北部、ソヴァッツェ山脈のヴェルヴァルム王国に通じる二つの山道の北よりの山道の方です。そこに騎馬隊が入っていくのを多くの人が目撃したそうです。騎士服の肩章は赤。これは当時の第三王子、現在のトシュタイン国王の騎馬隊と推測されます。そしてその騎馬隊が帰ってきたのを見たものは誰もいません」


 リードヴァルム王国を侵略したのは当時の第三王子。その第三王子の騎馬隊が戦後処理も済まぬうちから他の目的でソヴァッツェ山脈に向かうとは考えられない。王太子オリヴェルトを追ってソヴァッツェ山脈の山道に足を踏み入れたと考えるのが順当なのではないか。


「更に、山道の入り口には衛兵の詰め所があるのですが、詰め所が何者かに襲撃を受けたと当時の記録に残っています」

「トシュタインの詰め所の記録などよく手に入ったな」

「そこはまあ、トシュタインの僻地の詰め所の衛兵など、金に困っている者だらけですから」


 ルードルフがブルーノに依頼をしたのは今は無きリードヴァルム王国の王太子、オリヴェルトの行方だ。もちろんその全容を明らかにすることなど無理だとわかっている。当時トシュタインの軍勢が血眼になって王太子を探したはずだ。そして今なお生きていると囁かれながら行方の分からない人物なのだ。

 よって、ルードルフは侵略戦争があった三十三年前の初夏にオリヴェルトがソヴァッツェ山脈の北よりの山道にいた可能性があるのか、とピンポイントでブルーノに調査を依頼した。

 そのための費用は十分用意したし、ヘーゲル王国経由でトシュタイン王国に潜入できる身分証を用意したのもルードルフだった。ブルーノと、彼の手足となって働く調査員数名分。

 

「詰め所を襲ったのは二名。平民の恰好をしていたが、詰め所の衛兵の半数以上が犠牲になったことから騎士であるとみていいでしょう、それも手練れの。その二名は護送中に死亡と記録に残っています」




 トシュタイン王国の者でない手練れの騎士、それは王太子に付き添っていた護衛騎士ではないか?

 ブルーノの調査によってリードヴァルム王国の王太子であったオリヴェルトが三十三年前の初夏にソヴァッツェ山脈の山道にいた可能性が浮上した。

 三十三年前の初夏、六月の終わりに赤子のマリアレーテ王女は誘拐され、その馬車はソヴァッツェ山脈の谷底で発見された。

 ソヴァッツェ山脈の山道にかかっていたつり橋が崩落したのだ。


 しかし生きていたマリアレーテ王女、そしてそのマリアレーテ王女を背負ってレーベンの孤児院に姿を現したオリバー。オリバーは当時八歳、これは記録に残る王太子オリヴェルトの年齢と同じである。





 ブルーノは報告を終えると報酬を受け取り帰って行った。

 調査したこと以外の事は喋らず、でもその顔はいささか興奮しているように見えた。

 ルードルフは調査の結果を噛み締める。

 確かな事は何もない。全て推測の域を出ない。

 しかしこの推測が本当であるならばルードルフが感じた疑問に説明がつくのだ。


 平民の魔力が無いはずのオリバーがどうしてヴィヴィやマリアの魔道具をつくることが出来たのか。

 他人の契約竜に乗るという、歴代の王族でもできないことをどうしてヴィヴィだけが出来るのか。


 国を失った王子と攫われた王女が偶然出会うなんて、そんな物語のようなことが本当に起こるのだろうか。


 確かめる術を持たないルードルフはその推測を胸の内に秘めておくことを選んだ。








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