二年生(10)——夏期休暇
「ジャンとベニート、ヴィヴィ様を誘拐し、竜を殺したトシュタイン王国の手先です」
ガタッと音がした。
ジークもエル兄様も驚いていたし、私も閉じかけていた瞼がカッと見開かれ、一瞬息が止まるほど驚いていた。
今、音を出したのはヘンデルス様だ。ロットナー伯爵の後ろから伸びあがるようにこちらを凝視している。
ヘンデルス様だけでなく、一組の皆と竜の森で大立ち回りを演じたのはわずか数か月前のこと。私はヘンデルス様とうん、と頷きあうことでやっと呼吸ができるようになった。
それからジークやエル兄様だけでなく、ロットナー伯爵も地下室に入り、中を検めた。
ジャンやベニートの隠れ家と言っても使われていたのは一年以上前のことらしい。つまり、竜の森で潜んでいたよりもっともっと前、一年前に私を誘拐した時より更に前らしい。
しかしジャンは大事なものをここに隠していたようで、何より収穫だったのは、トシュタイン王国の第三王子、ガスパレの密命書が見つかったことだ。しっかりと署名と印章が押されたそれは、私たちの国で竜の素材を集めたり、魔力を持った女性を誘拐すること、そして働きに見合った高額な報酬を約束するものだった。
「シュテファン」
「はっ!」
「このことを急ぎ父上に。そして王国騎士団の第四隊をここに差し向けるように」
ジークの手紙を手にシュテファンが急ぎこの場を離れる。
こんな夜更けにシュテファンを差し向けたのは彼が成人した貴族だから。つまりシュテファンは竜に乗れるから王都まではひとっ飛びなのだ。馬と違って夜道を駆ける訳じゃないので安全だしね。
だから昨日もレーベンのロットナー伯爵のところに行ってもらったのだ。
「ロットナー伯爵、この地下室は騎士団の第四隊に詳しく調べさせる。それまで保存をお願いしたいが」
「もちろんです。領騎士を配備して鼠一匹入らないようにいたします」
「『野うさぎ亭』はどうなりますか?」
ジークとロットナー伯爵の会話に口を挟むのはいけないとわかっていたけれど、厨房の片隅で、慌ただしい雰囲気に怯えながらこちらを見ているヴィムとトビアスが気になって私は訊ねた。
一瞬、虚を突かれたような表情のジークに頷いてロットナー伯爵がヴィムとトビアスを手招きした。
「トビアス、申し訳ないが、ここはしばらく立ち入り禁止になる。もちろんこの店の権利はお前にあるが、しばらくここは使うことが出来ない」
「あの、しばらくというのはどのくらいなんですか?」
震える声でトビアスが聞く。やっとこの店が自分たちの手に戻ってきたと思ったのに……と落胆の表情を隠しきれない。ロットナー伯爵は難しい顔で考えた後に口を開いた。
「私にも判断がつかない。そこでどうだろう、別の場所に店を移しては?」
「別の場所......ですか?」
「ああ、そうだ。商店街に空き店舗があればそこに。もちろん改修費用や移転に関わる費用は私が全て出そう」
「あの、鍋や包丁なんかは持って行ってもいいですか?」
ヴィムが口を開いた。ああそうだ、この場所は一年前に移転してきたばかりだけど、ずっとお父さんやお爺さんが使っていた調理器具は思い入れがあるって言っていたわ。
「もちろん構わない。持ち出す物は騎士に報告してもらいたいが、君たちのものは全て持って行ってかまわないよ」
「それなら......よろしくお願いします」
トビアスが頭を下げる。ヴィムはちょっと不服そうだったけど、代官様より偉いご領主様の破格の申し出に了解するしかなかった。
「では、近いうちに担当の者を差し向けよう、君たちは今どこに住んでいるのだ?」
トビアスは私たちが滞在していた宿の名を告げた。宿の亭主から、二人の身の振り方が決まるまで滞在していてかまわないと言われていたから。
「それでは今日はもうそこに引き上げなさい、騎士を一人つけるから」と言われ、一礼をして去ろうとしたトビアスはふと気づいてもう一度ロットナー伯爵に問いかけた。
「ライマーはどうなりますか?」
ライマーって? 誰だっけ?
「ああっ!」
思わず大きい声を出してしまった。そういえば、ここの店主はライマーってことになっているんだっけ。すっかり存在を忘れていたわ。
ジークがロットナー伯爵に説明するとロットナー伯爵は頷いた。
「ライマーはこの町に帰ってきたところで身柄を押さえます。フォルバッハやハシュテットの罪状についてライマーにも話を聞かなくてはなりませんから」
「ロットナー伯爵、そのハシュテットについてなのですが」
ジークが口を開くと同時にエル兄様が「もしかして」とジークを見た。
「そうだ、多分......いや、十中八九ハシュテットはトシュタイン王国の間者だろう」
ジャンたちの隠れ家の存在を知っていたのだからハシュテットはトシュタイン王国の間者なんだろうと私も思う。というか、隠れ家を用意したのがハシュテットなのかも。そうすると、いつの間にかこの町に入り込んでいたと宿の主人が言っていたフォクト商会の従業員の中にもトシュタイン王国の人達がいるのんじゃないかしら。
「ねえ、ジーク、ハシュテットは大丈夫なのかしら?」
私はハシュテットの身を心配したわけじゃなくて、トシュタイン王国の人達の手で逃がされないか心配したのだけど、ジークも同じことを考えていたらしい。
「ロットナー伯爵、ハシュテットは他の者たちと一緒に役所に連れて行ったのですね」
「ええ、この町で簡易ですが牢があるのはあそこだけですから。しかし、そうですな、私も少々心配です。ハシュテットに関しては監視を強める必要があるでしょう」
私たちは急遽役所に向かおうと歩き出した時だった。
「ご領主様! 役所が襲撃されました!」
領騎士がバタバタと走ってきたのだ。
私たちは一斉に駆け出した。しらじらと夜が明ける薄明かりの道をひた走った。
ジークやエル兄様の足は速い。騎士たちももちろん。中年の(ごめんなさい)ロットナー伯爵まで。だから私が一人遅れて(もちろんハーゲン以下アウフミュラー侯爵家の護衛騎士は私に付いていてくれたけど)ひいはあと役所に駆け込んだ時、現場の混乱は収束しつつあった。
襲撃があったのは役所の裏手、簡易牢があるところだという。
「それでっ、ハシュテットは逃げちゃったの?」
「いや……」
ジークはチラッと横に目をやった。つられて私もそちらを見て......ばっちり見てしまったのだ。
戸板に乗せられて運ばれる喉をぱっくりと切られたハシュテットを。血しぶきを全身に張り付かせ、驚愕の表情のまま目だけが空虚で何も映していないハシュテットを。
ふっと意識が遠のくのが自分でもわかった。
「ヴィヴィ!」
ジークの焦った声も、私を受け止めてくれる腕が意外と逞しいのもちゃんとわかって、こんな場合なのになんかちょっと幸せを感じながら私は意識を手放したのだった。
いやいやいや、幸せなんか感じてる場合? そもそもこの旅に出る前に決意したことは何だったの? と自分に突っ込んで飛び起きたのがその日の午後。
って訳で、事件の詳細を聞いたのはレーベンに向かう馬車の中だった。
ジークや、エル兄様はロットナー伯爵と共に既に午前中にレーベンに向かっていたので、私はマリアと共に代わりに残ってくれたヘンデルス様に詳細を聞いたのだ。
襲撃者は二人。大柄な男の人と、小柄な男の人。黒ずくめに覆面で、顔はわからない。フードを被っていたので髪の色もわからない。
襲われたのは捕まえた人たちを牢に収監しようとしていた時で、大柄な男が剣を振り回し、騎士たちが相手をしている隙に素早く小柄な男がハシュテットに走り寄り、喉を掻き切って姿を消したそうだ。
殺されたのはハシュテット一人で、騎士たちは怪我を負ったものの命に別状は無いらしい。そこは一安心だけど、ハシュテットを逃がす、ではなく殺したのは喋られたくないことをハシュテットが知っていたから? 私にはわからない。いけ好かないおじさんだったけど、さっきまで動いて喋っていた人があんな空洞のような目の躯に変わってしまった事はショックだった。
去年の夏も領地で盗賊とはいえ沢山の人が殺されたし、事故や病気、戦って命を落とす人もいる。だけど目の前でそれを見たことでショックを受けている私は甘いのだろうか? 昨晩、ナイフを持った敵と戦ったジークやエル兄様だって命を落とすことがあるのだと、あのような何も映さない瞳になるかもしれないと実感したのだ。
大事な人たちを守るにはどうしたらいいんだろう。今の私に出来ることは少ない。大事な人たちを、ううん、真っ当に生きている人たち、ヴィムやトビアスみたいな人を守りたい。まだ私には学ぶことが沢山ある。
レーベンのロットナー伯爵邸で待っていると夕方にやっとジークとエル兄様が返ってきた。
ジャンとベニートの隠れ家が見つかったことで、事態は私の手の届かない場所まで行ってしまった。私が出来ることはもう何もないので、ロットナー伯爵のお屋敷で大人しく待っていた。
ヘンデルス様とお茶をして、リーネとの惚気話を聞いていたくらい。
私としてはヴィムとトビアスが自分の店を取り戻せればそれで良かったし、殺伐とした気分を解すのにちょうどよかった。
「僕たちも出来ることなんてそんなにないんだよ」
疲れた顔で戻ってきたジークはそう言った。ジークとエル兄様も学生の身、明日、王都から来る騎士団の第四隊に状況説明をしたら後はロットナー伯爵と第四隊に全て委ねるそうだ。
そんな訳で、私たちはもう一泊ロットナー伯爵邸にお世話になる。ぽっかり時間が空いたので、明日はマリアとマリアが育った孤児院を訪問できることになった。
次の日、マリアの孤児院訪問の支度をしていると部屋にジークとエル兄様が訪ねてきた。二人もこの後、ロットナー伯爵と共に到着する第四隊の騎士たちに事情報告がある。
「うん、今日のヴィヴィも可愛いな。僕の癒しだ……」
独り言のようにぽそっと漏れたジークの呟きに顔が赤くなる。別にこの旅の最初からしていたような町娘の恰好で特別なものじゃないのに。
「あああの、私ばかりお出かけしちゃってごめんね、ジークたちは忙しいのに」
「そんなこと気にすんな。っていっても俺はまあオマケみたいなものでジークにくっついているだけだけどな」
エル兄様が軽い調子で言って私の頭をポンポンと叩いた。
「王太子殿下、エルヴィン様、お心遣い、ありがとうございます。お土産も沢山ご用意していただいて」
マリアが頭を下げる。孤児院を訪問できて一番喜んでいるのはマリアだと思う。心なしか声が弾んでいる。そして私も楽しみ。まだ本当の母親だと実感はないけれど、大好きなマリアが育った場所を訪問できるのだ。マリアの子供の頃の話なんかも聞けたらいいな。
「では、行ってきます!」
マリアと部屋を出ようとした時にふとマリアが眼鏡を外した。
「ああ、そういえば、孤児院に居たときは眼鏡をしていなかったので、こちらは置いていきますね」
テーブルの上に眼鏡を置いてマリアが振り返る。
「「「!!!」」」
私たちは声が出なかった。物凄い美女がそこにいたから。
え??? 待って? 眼鏡一つでこうも変わるものなの? と言ってもそういえば眼鏡をしているマリアの顔立ちについて詳細に言う事が出来ない。眼鏡の印象が強すぎる? なんとなく薄ぼんやりとしているのだ。
「ヴィヴィ様、行きましょう」
「あ、え、うん」
え? こちらを向いて微笑んだマリアの手に湯気の立つお鍋が見えた。
後ろは板の壁、私は簡素な木のテーブルに座っていて……ううん、テーブルは私には高すぎる。だから私は誰かの膝の上に座っていて、その人は大きな手で、私の髪飾りをつけ直していた。
「ほら、これでヴィヴィはもっと可愛くなった。これはヴィヴィのお守りだから大事にするんだよ」
「おとうしゃん、びびかあいい?」
「とびっきりだ!」
「ふふっ、さあ食事にしましょう」
「ああ、マリアのシチューは絶品だからね」
「………ヴィ様、ヴィヴィ様、どうかしましたか?」
マリアの声で現実に引き戻された私は一つ首を横に振った。
「ううん、何でもない。マリアが美人過ぎて吃驚しちゃっただけ」
「ふふっ、ヴィヴィ様はお上手ですね」
私たちはまだ固まっているジークとエル兄様を置いて部屋を出た。
あれ? 護衛の皆さんも固まっている? 今日はハーゲンともう一人がついて来てくれるんだけど、大丈夫?
そして夕方、孤児院の訪問も無事済ませて、ついでにちょっと街歩きも楽しんで、ちょっとおしゃれなカフェでスイーツなんかも楽しんじゃったりして、私たちが部屋でまったりしていると、またまたジークとエル兄様が訪ねてきた。
「楽しかった?」
「うん! ジークとエル兄様も一緒に行きたかったわ」
微笑むジークに私が答える。エル兄様が一つ頷いて口を開いた。
「俺たちも一応お役御免だ。明日からは一緒に楽しめるぞ」
いろいろ思うことはあるけれど、後は大人の領分だ、私たちは全力で夏休みを楽しまなくてはならない。これからの調査で分かることは後で教えてもらえることになっている。私たちに話して差し支えない部分だけは。
それからマーベルの町で起こった事件は他言しないように言われているけれど、もちろん、私たちの中に軽々しく口にするような人はいない。
「孤児院はどうだったの?」
「院長先生はお優しい人だったわ。子供たちが可愛くてね、持って行ったお菓子やおもちゃをすごく喜んでくれて——」
話し出すと止まらない。私はちょっと浮かれていたみたい、孤児院の院長先生の言葉に。
「まあ! マリアなの!? すっかり大人っぽくなって!」
「ご無沙汰しております」
マリアと一緒に私が頭を下げると、院長先生が目を細めた。
「こちらは? ああ、あなたとオリバーの子供なのね」
「ええ、ヴィヴィといいます」
子供たちにお土産を渡して院長室でお茶をご馳走になる。
「あなたとオリバーが結婚したと聞いてびっくりしたけれど、ああやっぱりと思ったのよ。マリアの勝利ね」
院長先生の言葉に私が首をかしげるとマリアが恥ずかしそうに教えてくれた。
「私はね、ずっとオリバー、あなたのお父さんと結婚するって言っていたの。物心ついた時からずっとね。オリバーは私より八歳も年上で私の言う事なんて全く真面に取り合ってくれなかったけどね」
そうなんだ、マリアは、私のお母さんは子供の頃からずっとお父さんの事が好きだったんだ。
恥ずかしそうながらも溌溂と話すマリアが新鮮だった。それに私に敬語を使わないマリアも新鮮だ。マリアはいつも落ち着いて私を見守ってくれるメイドとしての態度を崩さなかったから。
「ヴィヴィ、女の子が木登りなんかしたら危ないでしょう?」
「ははっ、ヴィヴィ、全然登れてないぞ」
「オリバーったら! ヴィヴィは昨日も庭で転んで擦りむいたのよ」
「何? ヴィヴィに怪我をさせた石はどれだ? お父さんが成敗してやるからな」
「……それでね、ヴィヴィはオリバーに似ているでしょう?」
ハッと現実に引き戻される。目の前ではマリアと院長先生の会話が続いている。
「私はお父さんに似ているの?」
「ヴィヴィちゃんはマリアにも似ているわよ」
私の疑問に答えたのは院長先生。
「あら、ヴィヴィはオリバー似ですよ、ほら、目元の感じとか鼻筋とか」
「でも口元や頬のラインはマリアに似ているわ。いいとこ取りね」
私は嬉しかった。お父さんの事はよく知らないし、もしかしたら悪い人なのかもしれないけれど、でも私はお母さんとお父さんの血を受け継いで生まれてきたのだ、という事を実感できたから。
アウフミュラー家の家族が好きだ。だから家族の誰とも似ていない自分は異分子のような気持ちがずっとしていた。世界でたった一人の異分子。だけど私にはちゃんと血のつながった人がいた。アウフミュラー家の家族ではないけれど、私はたった一人の存在じゃないんだって実感できた。
そんな話をジークとエル兄様にしたわけじゃないけれど、二人は孤児院で子供たちと遊んで楽しかった話や、町の様子、カフェで食べた美味しいスイーツの話を目を細めて聞いてくれた。
そして話が一段落したときにジークがマリアに切り出した。
「マリア、もう一度眼鏡を外して見せてくれないか?」
マリアは帰って来てからはまた眼鏡を掛け、いつものメイドに戻って部屋の隅に控えていた。
この旅の間くらいメイドはお休みにしましょうといくら誘ってもマリアは態度を崩さない。ソファーにも一緒に座らない。
「眼鏡ですか? 畏まりました」
眼鏡を外すとまた美女マリアが現れる。何度見ても不思議な光景だ。
「これは魔道具じゃないかな? 私にはよくわからないけれど」
ジークが眼鏡をひっくり返したりのぞき込んだりする。
マリアはきょとんとした顔だ。
「申し訳ないが、これを暫く預からせてくれないか」
ジークの申し出にマリアは何か言いたそうなそぶりを見せたけど、口を噤んだ。
「壊したりしない、丁重に扱う。あなたの手元に必ず戻ってくるように私が厳命するから」
そうだよね、ジークは気がついていた。マリアがこの眼鏡をとっても大事にしていることを。オリバーがプレゼントしてくれたマリアのお守りだから。
「お守り」——その言葉は遠い昔に聞いたことがある。「これはヴィヴィのおまもりだから——」
「…………わかりました。よろしくお願いします」
マリアの眼鏡は第四隊に託され、王立魔道具研究所に送られることになった。
「若様、見事なナイフさばきでございました」
「やめてよ、縛られているおっさんの喉を掻っ切っただけでしょ。ウーゴが騎士たちをひきつけてくれなかったらできなかったんだからさ」
「それでもハシュテットの息の根を止められたことは重畳でした」
「あいつ、元から気にくわなかったんだよね。クソ兄たちの腰巾着だって僕を馬鹿にしてさ。ま、それが無くてもあいつは僕の正体とか知り過ぎていたからね」
「隠れ家の方は放っておいて良いのですか?」
「あそこには僕のものは何も置いていないよ。それどころかガスパレの署名入りの命令書を保険として隠しておいた方がいいってジャンを唆しておいたからね。あの隠れ家に置いてあったら愉快だなあ」
「ジャンも若様の正体を知っているのでは?」
「うん、ハシュテットが喋っちゃったからね。ホントろくでもないおっさんだよ。まあでもジャンは僕が今どこに潜入しているなんてことは知らないしね、王宮の地下牢なんてさすがに僕とウーゴでも潜入できないでしょ。運を天に任せるしかないね」
「ヴェルヴァルム王国の者たちはガスパレをどうするでしょうか」
「首でもちょん切ってくれないかなあ。何度テロを仕掛けられても戦争を仕掛けない腰抜けどもだから無理かなあ」
「若様はトシュタイン王国が攻められても構わないのですか?」
「いいよ、クソ兄たちが死ぬのは大歓迎だ。その混乱で父上が僕の事を思い出してくれれば......ナシナシ、今のは忘れてね、ウーゴ」
「私は何も聞いておりませんよ」
「そういえばあの子には驚いたよね」
「ヴィヴィ様ですか?」
「ハシュテットを見張っていたら現れるんだもんなあ。やっぱりヴィヴィは面白いよ」
「あまり深入り............いえ、何でもありません。さあ、そろそろこの町を離れましょう」
「うん、そうだね、学院の夏休みが終わる前に一度国に帰ろうか」
「承知いたしました」




