クーデター(4)
民衆の熱気がようやく収まったころ、バルコニーから手が振られ私たちは王宮の前広場に降りることにした。時刻はもう、深夜と言ってもいい時間だ。
深夜になっても前広場は随所にかがり火が焚かれ辺りを明るく照らしている。
しかし明るいと言っても当然昼間よりは暗くかがり火が焚かれていない場所は闇に包まれている。
私にとってはこの闇が有り難かった。物が壊れた跡や柱や床の傷、何より血の跡を見なくて済んだので。
今日ここで行われたのは本当の本物の戦闘で殺し合いなのだ。それは必要な事だったと思うしなるべく被害が少なくて済むようにオリヴェルト様たちは尽力したとは思うが大勢の人が傷つき死んだ。その痕跡を実際に見てしまうことは恐ろしかった。
覚悟を持ってこの地に来たと思っていたのだが私はまだまだ甘いのだろう。
私の脳裏を私の光線を受けて吹っ飛んだウーゴさんの姿が蘇る。光線を撃ったことについては後悔していない。私が一瞬でも躊躇えばディオのナイフはアロイスを傷つけていたかもしれない。
剣も、魔術も、人を傷つける武器であることは変わらない。それ以外の魔術もあるし、魔道具は生活を豊かにするものが多いけれど、主にウォンドを使う魔術は攻撃の魔術がほとんどだ。私たちは学院で男性も女性もそういう魔術を学ぶのだ。それはヴェルヴァルム王国建国時からの、いえ、聖リードヴァルム大帝国の大公領であったころからの理念だ。
魔力を持つ者は魔力を持たない民衆を守らなければならない。
だからヴェルヴァルム王国にはトシュタイン王国のような徴兵制度は無い。職業として騎士や兵士を選んだ平民を除いて民衆が戦いに駆り出されることは無いのだ。もし騎士や兵士が破れるようなことがあったら、徴兵されるのは貴族たちだ。貴族が盾になって民衆を守るのがヴェルヴァルム王国のありかたなのだ。当然王族も先頭に立つ。
もっとも歴史上そんな戦いは一度も起こったことが無く、特にヴェルヴァルムが大公領から王国になった後は竜騎士団や王国騎士団は他国が束になって襲って来ても揺らがないほどの強さを誇っており、それに伴い、理念も形骸化して、騎士になる者を除いては、学院でウォンドを使った魔術を習っても使うことなく忘れていくばかりの昨今だ。学院の令嬢たちが最も多い教養コースではウォンドを使った攻撃魔術はカリキュラムから外れて久しい。
懸念の声も一部ではあるけれど、私は皆が攻撃魔術など一生使わないで過ごせたらいいと思う。騎士などの戦いを職業としている人は無理だけど、それでもなるべく人々が争うような世の中であって欲しくないし、ジークと共にそういう安定して安心して暮らせる国を創っていきたいと思う。
前広場を埋め尽くした民衆は今は門の外に出されている。それでも下りてくる竜を見ようと門の外にびっしりと人が群がり兵士立ちに制止されている。
街のいたるところから「「「リードヴァルム王国万歳!!」」」「「「オリヴェルト国王万歳!!!」」」の声が聞こえ人々の興奮が未だ冷めていないことがわかる。
夜になってしまったため私たちはここで一晩泊めてもらい翌朝ヴェルヴァルム王国に帰ることになった。
オリヴェルト様を始めリードヴァルム王国軍の人達は夜を徹して様々な後始末をするのだろう。
戦いの跡が残る王宮を整えるばかりでなく捕えた者たちを隔離したり怪我人を手当てしたり、王宮、王都に警備を派遣してこっそり王都を逃れようとする者を捕獲するのと同時に、そういう者たちが虐げられていた人々に襲われないように保護する必要もある。暴動の火種は何カ所か潰したが、暴動が拡大すれば街が無法地帯と化してしまうからだ。
そんな忙しい時に私たちだけのんびり休ませてもらうことは後ろめたいが私たちはこの国の人間ではないのでせいぜい迷惑を掛けないようにおとなしく一泊して翌朝速やかにこの地を去るだけだ。
もうすでに火事を鎮火したりルーナで威嚇して暴徒を鎮静化したりしたって? そこはご愛敬で。
案内されたのはエリオ殿下の離宮だった。
エリオ殿下の離宮に案内されてすぐ、オリヴェルト様とラーシュさんが訪ねてきた。
私たちはサロンで彼らと話をした。
「ヴェルヴァルム王国のご尽力、本当に痛み入る。最大の武力を誇るサロモネの軍を引き受けていただいたばかりか今回この場にも駆けつけてくださった。のみならず国王捕縛にも尽力くださった、そちらのご厚意に対しては国が落ち着いたら必ず報いたい。本当にありがとう」
オリヴェルト様は挨拶が終わった後ジークと握手を交わしながらそう言った。
「私たちも長年の敵国であり最大の懸念事項であったトシュタイン王国が滅びこんなに嬉しいことはありません。今後はこの国と信頼ある国交が出来れば父である国王ヘンドリックも喜ぶことと存じます。そして今回の事は私の一存です。ヴィヴィの為ですから」
そう言ってジークは私を見た。
「そうか! ヴィヴィ、ありがとう。たった四頭の竜だが私たちの軍は瓦解寸前だった。君が駆け付けてくれたおかげで私は父や母、祖国の人達の仇を討つことが出来た。今後はこの国の人達が安心して暮らせるような国づくりをするつもりだ。それが国を奪った私の責任だ」
オリヴェルト様が私に言葉を掛けるのをラーシュさんはうんうんと感激した顔で見ていた。そのラーシュさんを見ながらオリヴェルト様が続ける。
「ラーシュたちも力を貸してくれるだろう」
「もちろんだ。お前を担ぎ出した責任は私もきっちりとるぞ。まあ私なんかより頼りになる人間は沢山いる。それに王宮に潜入して宰相補佐官まで成り上がった手腕には期待しているよ、オリバー」
ラーシュさんはオリヴェルト様の肩をドシンと叩いた。結構痛かったみたいでオリヴェルト様は引きつりながらそれに応じた。
「父を……よろしくお願いします」
私がそう言うとラーシュ様は目を細めた。
「俺の持てる限りの力でオリバーを支えましょう。そして俺たちは貴方も歓迎しますよ」
ラーシュさんの言葉にジークたちも身を固くした。もちろん私も。そうか、クーデターは成功した。目の前の人は「勝って必ず君たちを迎えに来る」とあの時言った。お母様はそれを待っている。私も決心しなければいけないだろう。
「ヴィヴィ、心配しなくていい。私はどこに居ても君を愛している。君の幸せを願っている」
オリヴェルト様は私に向かって微笑む。その微笑みの中に私は遠い昔の『おとうさん』の面影を見つける。
「初めてご挨拶申し上げます。フィリップ・アウフミュラーと申します。ジークハルト殿下の筆頭補佐官を務めております」
突然フィル兄様の声が割り込んだ。
「ああ、君たちもありがとう。よくぞこんな遠い地まで駆けつけてくれた。君たちのおかげで事を成すことが出来た。礼を言う」
オリヴェルト様はフィル兄様、エル兄様、アロイスと順に握手した。
「いえ、ジークハルト殿下のお供というよりは可愛い妹の為ですから」
相変わらずのフィル兄様にジークは苦笑している。
「妹?」
オリヴェルト様の問いかけにフィル兄様は胸を張って答えた。
「ヴィヴィは僕の最愛の妹です。身分や立場が変わってもそれは変わりません。僕は妹が望む事なら何でも叶えてあげるつもりでいます。それが兄の務めですから」
エル兄様も言った。
「兄上は少々大袈裟ですが俺も同じです。ヴィヴィのことは可愛い妹だと思っています」
「そうか、君たちはアウフミュラー侯爵家の……ヴィヴィを慈しんでくれてありがとう。君たちの気持ちは肝に銘じておくよ」
ああそうか。フィル兄様は牽制をしたんだ。お母様と一緒に私が連れ去られてしまわないように。オリヴェルト様がお母様を迎えに来たらその娘である私も一緒にこの国に来るのが当たり前のことだろう。
でもヴェルヴァルム王国側にしてみればやっと増えた王族を手放すかどうかの問題もあるし私とジークの婚約もあるし「はいどうぞ」と言うわけにはいかないだろうけど。
「この国がある程度落ち着いたら必ずヴェルヴァルム王国に迎えに行く。それまでもう少し待っていてくれとマリアに伝えてくれ」
オリヴェルト様は私にそう言うとジークに向き直った。
「ある程度落ち着いたところで正式にヴェルヴァルム王国を訪問したい。此度の感謝も直接国王に伝えたいし国交に関しても話し合いをしたい。国王にお願いしたいこともある。頼み事ばかりで恐縮だがご恩は決して忘れないし後々返していきたいと思っていると国王にお伝え願いたい」
「わかりました。必ず父に伝えます」
オリヴェルト様は手紙を私とジークに託しもう一度握手をしてラーシュさんと共に戻っていった。
話し合いをしている間この館の主のエリオ殿下はずっと隅に控えたままだった。
「エリオ殿下、ありがとうございました」
ジークがお礼を述べるとエリオ殿下は顔の前で手を振る。
「やめてください、もう殿下ではありません。トシュタイン王国は滅びたのですから『エリオ』とお呼びください。今はまだこの館を使わせてもらっていますが。なにしろ王宮でまともなのはこの離宮しかないので貴方たちをお泊めするのにここしかなかったのですよ」
彼の言葉で王宮のいたるところに戦いの跡が残されていることが察せられた。真実は戦いの跡ばかりでなく逃げ隠れた国王や幹部の捜索で荒らされた部屋の方が多かったのだが。そして部屋が荒らされていないだけではなくメイドや従者がきちんと働いているのもこの離宮だけらしかった。
「殿下……エリオ様はこれからは父の臣下となるのでしょうか」
私が聞くとエリオ様は頷いた。
「オリヴェルト様のお情けに縋ればそういうことになります」
「お情けに……? エリオ様はこのクーデターで十分な功績を上げられたのではないですか?」
「私はトシュタインの国王の息子ですから。リードヴァルム王国建国となればこれからトシュタインの王族は全て処刑されるでしょう」
「そんな! 王族には子供も———」
「全てですよヴィヴィアーネ殿下。王族の血を残すわけにはいかないのです。民を虐げていた領主や私腹を肥やしていた貴族も軒並み処刑されることでしょう。そうでないと民衆が納得しません。それだけ腐っていたのですよ、この国の中枢は。その象徴たる王家の血は全て絶やされます。私が今回のクーデターの功績を評価され生き延びることが出来たとしたら……私は生涯独身を貫きます。トシュタインの王家の血は残しません」
エリオ様の悲壮な決意に身体が震えた。
そして堀に身を躍らせたもう一人の王子のことを考える。
やはりディオが生き残る道は無かったのだろうか。私はディオが投降してくれれば何とかして生かすと説得した。拒否されてしまったけれど。
ディオはそれをわかっていたから国王を逃がそうとした? ううん、違う。ディオはただ父親に認められたかったのだと思う。よくやった、さすが私の息子だと言って欲しかったのだと思う。だってあそこでディオが姿を現す必要はなかったから。竜の森から逃げた後、ヴェルヴァルム王国でもディオは指名手配され捜索されたけど、足取りを掴むことが出来なかった。トシュタイン王国の事など、ディオのことを覚えてもいない父親のことなどきっぱり忘れてどこかでひっそりと暮らせばよかったのに。
エリオ様の決意を聞く間ジークは震える私の手をずっと握りしめてくれていた。
フィル兄様は私の背中を慰めるようにずっととんとんと叩いてくれていた。
違うのに。辛いのは私ではなくてエリオ様だ。そしてディオだ。
「エリオ様は……どうしてそんな思いまでして父のクーデターに力を貸してくれたのですか……?」
震える声で聞くとエリオ様は微笑みながら教えてくれた。
「私の母は身分の低い側妃でした。正確に言うと母は旧リードヴァルム王国の王妃付きのメイドだったのです。トシュタインの国王が……当時は第三王子でしたが、あの男が旧リードヴァルム王国を亡ぼした時母は戦利品として持ち帰られてあの男のものになりました。その時母はまだ十代でした。そして私を産み側妃と言う身分にはなったのですがいつまでも反抗的な母はすぐにあの男に飽きられて後ろ盾もない私たちは離宮に追いやられました。私は王子とはいえ王太子レースにはエントリーもされていないような力のない王子だったのですよ。王太子になどなりたくもなかったですがね。母は十年ほど前に流行り病で亡くなりました。最後まであの男を恨んでいました。旧リードヴァルム王国の敵だと言っていました。ただ私のことは可愛がってくれましたよ、あの男の血を引いているというのに」
私は何も言えなかった。彼は……母を攫って無理矢理自分のものにした父を憎んで育ったのだ……自分の中に流れる父の血を憎んでいるんだ……なんて辛く悲しい事なのだろう……それなのに彼は優しく微笑んでいる。生涯愛する人を作らないのだろうか……自分の子供が欲しいと、温かい家庭が欲しいと思わないのだろうか……
「ああ、泣かないでくださいヴィヴィアーネ殿下」
彼は困ったように言う。
「そんなに悲惨でもないのですよ、以前に比べれば。異母兄弟に馬鹿にされ父を憎んで私は育ちましたが今は信頼できる友や忠義をささげるべき主君と出会うことが出来たのです。自分の命を懸けるほどの使命にも出会うことが出来それを成し遂げることが出来た。今の私は幸せです」
「ごめんなさい、私が泣くのはおかしいですね」
私が涙をぬぐうとエリオ様は静かに微笑んだ。
「エリオ様の決意は胸に刻んでおきます。そして......ごめんなさい、泣いてしまったのはもう一人の王子のことも考えたからなんです」
「もう一人の王子......アメディオのことですか?」
私は頷いた。
ジークの、フィル兄様の表情が険しくなる。
一年前、王宮から誘拐されかけ、半年前に竜の森で再び誘拐されかけた。その時の事件の後はうなされたり夜中に飛び起きたりした。それでも私がディオを説得しようとしたことをアロイスから聞いていると思う。ディオに恐怖を感じても、それでも私がディオを憎んだり嫌いになったりできないのをジークは察している。
「アメディオ......そうですね、私の弟なのに、そして兄たちに蔑まれていたという境遇は似ているのに今の今まで私の頭の中にはアメディオの存在はありませんでした。もともとほとんど接点もありませんでしたしね。アメディオの境遇は私より悲惨だったでしょう。私の母は旧リードヴァルムの王妃付きのメイドでしたから魔力はそれなりにありました。それなりに、と言ってもここにいらっしゃるヴェルヴァルム王国の方たちに比べればとるに足らないほどですが。そして私にも魔力はあったので、王子として認められ、冷遇されても離宮は与えられていましたからね。アメディオは私より兄王子たちに媚を売って役に立つことでこの王宮で生き永らえていたようです。私は彼に関心を示さなかったが、彼も冷遇されている私に取り入ってもうま味など無いと近寄りもしませんでした」
エリオ様の口調は弟のことを話している口調ではなかった。まるで他人の、ちょっとした知り合いのことを話すような口調だ。
「私は母を略奪した父を憎んで育ちました。権力にものを言わせ横暴にふるまう兄たちも大嫌いだった。滅んでしまえ、いやいつか滅ぼしてやると心に誓っていました。けれどアメディオのことは......そう、何も感じない。憎しみも無ければ愛情もない。兄としては薄情なのかもしれません」
「そのアメディオは堀に落ちたと報告を受けているが」
フィル兄様の言葉に頷く。正確にはウーゴさんを抱いて自ら飛び込んだのだけど。
ジークがフィル兄様の言葉を引き継ぐ。
「今のところは見つかっていないみたいだね。と言ってもこの暗さだし、本格的な捜索は明日日が登ってからになるだろうね」
その頃には私はここを発っている。ディオがどうなったのかを見届けることは叶わない。
「まああの堀は深いから助かる可能性は低いけど……死んでいて欲しいと思うよ」
エリオ様がポツリと呟いた。
ディオも王族だから......皆に相手をされなくても忘れられていてもあの国王の血を引いているから......
エリオ様はふうっとため息を吐いて言葉を続けた。
「申し訳ありません、最初はこんな話をするつもりでは無かったのです。王族の処刑のことも私自身のことも、そしてアメディオのこともね。わざわざご令嬢の前で血生臭い話をする必要はない。しかしあなたはオリヴェルト様の娘だ。この国の新しい王になるオリヴェルト様の。だから知っていて欲しいのですよ、新しいリードヴァルム王国がどうやってできたのかを。こんな思いを抱えていた男のことを。あなたはもしかしたらリードヴァルム王国の次代の女王になるかもしれない人だ」
エリオ様がそう言った時、ジークが私の手を握りしめる手に力が入った。
「エリオ殿、すまない。ヴィヴィは私の妃になるんだ。この国の女王になる事は出来ない」
「そうですか」
エリオ様はあっさり引き下がったが「未来は不確定ですからね」と小声で呟いた。
明朝、昨日と同じまだ夜が明けきらない時刻に私たちは旧トシュタイン王国の王宮を発つことにした。
エリオ様と従者に案内されまだやっとほの明るい廊下を進む。
本宮近くまで来た時だった。
「あのっ! 夫を助けてください!」
メイド服の女性がよろめき出て私たちの前で跪いた。
「あなたは?」
「私は第三側側妃様付きのメイドです。夫は第五王子リヴィオ殿下の近衛騎士をしておりましてリヴィオ殿下と共に捕えられたと聞きました。夫は職務で殿下を守っていただけで悪いことはしておりません。どうかお力添えをお願いします!」
彼女はそう言いながら私の方ににじり寄る。私がこの中で唯一の女性だから与しやすいと思ったのかもしれない。
「私は……」
スッと私の前にエリオ様が立った。
私に「ヴィヴィアーネ殿下は後ろへ」と言いながら彼女に向き直る。
「彼女はわが軍を助けてくれたヴェルヴァルム王国の方だ。彼女に助力を乞うのは筋違いだろう。悪いことをしていなければ捕らえられている者も釈放になる。おとなしく待っていなさい」
しかし彼女は更に私の方に近づこうとする。後ずさりした私はグンと誰かに引っ張られた。
一瞬強い力で引っ張られたのだがすぐにその手は離れた。後ろを振り返ると薄汚れた騎士服を着た人物がお腹を押さえて蹲っていた。
その傍で剣を構えるアロイス。
「え? 誰? アロイス、切ったの?」
「剣の柄で殴っただけです」
メイドと言う女性と薄汚れた騎士はリードヴァルム王国軍の兵士に引っ立てられていった。
「アロイス、ありがとう」
「護衛ですから」
私がお礼を言うとアロイスは無表情に応える。だけど無表情のアロイスの表情が近頃わかるようになってきた。昨日なんて私とアロイスは阿吽の呼吸だったよね? そうだよね?
「彼女たちは? 何がしたかったのかしら?」
何かを企んでいたのか、誰かを助けたかったのか、私がエリオ様に聞くと
「本当に夫を助けたかったのか芝居だったのかは今はわかりません。大丈夫です、ちゃんと取り調べますよ。すべての人を有罪にする訳ではない。そんなことをしたら人がいなくなってしまいますからね。大きな罪を犯していなくて新リードヴァルム王国に恭順の意を示せばほとんどの者は釈放されます」
私はエリオ様の言葉に安堵した。
似たようなことは王宮の前広場でルーナに乗り飛び立つまでにあと二回ほどあった。
そうして私たちは旧トシュタイン王国の王宮を飛び立ちペーレント伯の館で一泊させてもらったのちようやくヴェルヴァルム王国の王宮に帰ってきたのだった。




