㉞ミカリスの調査報告書
「ミカリスの調査報告書」
団長曰く、そこに治癒の才能に関する情報が記載されているらしい。古びた書庫の中から、32年前に作られたその報告書を探し出す。
「ぶ厚いな...。」
まるで辞書のような報告書を手に取り、ランプが置かれた机の椅子に着席する。紙なので多少傷んでいるが、保存状態は悪くないのでしっかり読めそうだ。
さて、今夜は徹夜だ。
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翌日、俺は何事もなかったかのように普通に授業を受けている。たった一日の徹夜ごときで動じる体ではないからな。それよりもミカリスの調査報告書の情報量が多すぎて、そっちで頭がパンクしそうだ。
何とか報告書を読み終えて、今は情報を整理中している。
ミカリスとはとある人物の名前。そう、彼は治癒の才能を持つ男だ。
32年前、彼は王国に対して反逆を行い「影」に捕らえられた。その後、尋問の過程で彼の治癒の才能について、徹底的に調べられた。
いわゆる人体実験だな。
読み進めるにつれてその実験は過激になって行き、治癒の才能に関する情報沢山得られるようになっていった。そしてその実験は、ミカリスの死亡によって幕を閉じた。
なかなか残酷に思えるが、これが反逆者の末路だ。王国は反逆者を許さない。
それに、その結果得られた情報を利用する俺に、どうこういう資格もない。
実際、ミカリスの調査報告書には、治癒の才能に関する有益な情報が記載されていた。世間に公表すべきだと思ったが、俺の考えが及ばないような所で、公表すべきでは無いと判断されたのだろう。
きっとこの「影」にはそういった事情で、世間で公表されない情報が溢れている。俺が集めた情報も含めて。
そしてその治癒の才能に関する情報を第三者、今回の場合はリリに教えてもいいのかと言われると、正直分からない。だが、本当にダメなら団長はそもそも俺にミカリスの調査報告書を教えたりしなかっただろう。
それに俺もミカリスの調査報告書を丸ごとリリに伝えるつもりはない。
本当の狙いは、治癒の才能に関する的確なアドバイスを行い、リリから信頼を得ること。そして、彼女の姉、エルレイナの情報を引き出すことが真の目的だ。
決してリリの為ではないし、決してリリから評価を得たいわけでもない。
...決してだ。
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場所は変わり、グラウンド。
もちろん今日も才能実技の授業だ。
そしてニックは今日も病欠...。俺にとっては願ってもないチャンスだ。
「またニックくん体調不良なんだね...。大丈夫なのかな...。」
「リリちゃん優しすぎだよぉ~。あんな奴心配しなくていいって~。あ、ゼルノくん今日もよろしく~。」
ニックが体調不良(仮病)になる確率は高いと思っていたが、予想通りだった。そして前回と同様に、リリとエミのペアに合流することができた。これで、ミカリスの調査報告書を読んできた成果を発揮できるな。
「今日もペアに入れてくれてありがとう。二人ともよろしく。前回はリリの治癒の才能について話し合ったけど、なかなか答えは出なかったよね...。」
だが今日の俺は一味違う。ミカリスの調査報告書は治癒の才能についてほとんどを解明していた。
「みんなほんとにありがとう!でも今日は大丈夫だから!今日は二人の才能について考えよっ。」
まあそうなるよな。はっきり言うと前回は時間の無駄だった。さすがにリリも気を使うだろう。エミもリリも少し気を落としているように見える。
ここでいきなり解決策を提示してもいいが、それでは怪しまれてしまう。さて、どうしようか。
「エミはぁ、エミの才能にこだわてないし、気にしなくていいんだよぉ?それよりもリリちゃんの才能はすごいんだからぁ、使えるようになればきっとみんなの役に立つんだからぁ、もう少しがんばってみよ?」
予想外の援護射撃が入った。
やっぱりエミはフワフワしているように見えてしっかり考えている子だな。15年生きて来て初めて普通の人々と触れ合ってきたが、みんなそれぞれ個性があって面白いな。
「そうだね。治癒の才能は伸ばすべきだと僕も思う。僕が役に立てるかは分からないけど、リリさえよければ今日もお手伝いさせてほしい。」
「エミちゃん、ゼルノくん...。ありがとう...。分かった!あたし頑張る!」
よし、エミのおかげで何とか予定通りに話が進みだした。
ここからが、俺の腕の見せ所だな。




