㉝書庫
今俺は実技棟のグラウンドにて、リリとペアを組んでいる。この機会に、可能な限り親しくなりたい。そして、彼女の姉の情報を得ること、それが一つの目標だ。
ただし、リリと二人きりではない。もともと彼女はエミリーとペアを組んでおり、俺とペアを組んでいるニックが体調不良(仮病)で、一人になったところを彼女たちに拾ってもらった形だ。
今は才能を伸ばすための授業中。お互いの才能を共有した後、リリの「治癒の才能」を使うと気を失ってしまうという悩みを、どうにかできないか考えているところだ。
「エミは〜、筋トレがいいと思うなぁ。いっぱいもりもり運動して体力をつけたらぁ、気は失わないと思うよぉ?」
エミリーの意見は一見脳筋にみえるが、意外と的を射ている。これは俺の才能にも通じる事だが、体力を消費する才能を伸ばすには、体力をつけることが1番良いとされているのだ。
ただし、希少な治癒の才能に対して本当に効果があるのかは分からない。
それに体力をつけることは、根本的な解決にはならない。
「運動か~。実はこれまでに試したことあるんだよね...。こう見えてあたし体力はもりもりなんだよっ!でも、やっぱり気を失うの。どうしてなんだろう...。」
しょんぼりしているリリを見ていると、どうにかしてあげたくなるが、俺の頭の中に入っている情報をもってしても、解決策は見当たらない。
何かないだろうか。
「ものすごく小さな傷を癒したことはある?」
まずはもっとリリの才能について知る必要がある。その中で、もしかしたら解決策が出るかもしれない。
ただ、授業中に解決策は出ず、リリの才能の話を聞くだけで今日の授業は終えた。
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夜。
例にもよって寮棟を抜け出した俺は、王城の地下にある「影」の本拠点に一時的に帰投していた。
目的は書庫にある情報。
諜報部門に所属している俺は、自分で収集した情報はすべて頭に入っているが、過去に収集された情報に関してはほとんど知らない。
その中に、もしかしたら治癒の才能に関する情報があるかもしれない。それを調べに来たのだ。
「それにしても数が多いな...。地道に見ていくしかないか。」
王国の建国と同時に設立された「影」の歴史は長い。これまで積み重ねてきた歴史の分だけ、収集された情報も重なっている。
「おやおや、これはまた珍しいお客さんだ。」
急に真後ろからそう声を掛けられて、口から心臓が出るかと思った。
「...団長。お久しぶりです。こんな夜遅くにどうしたんですか?」
気配を完全に消して近づいてくる必要なんてないだろう...。
「それは私のセリフですよ。こんな夜遅くに、書庫に人の気配がしては、気になってしまうじゃないですか。こんな夜遅くにどうしたんですか?」
「少し、調べものをしに来ました。」
「過去の情報に関して興味を示さなかった君が調べものですか。なるほど興味深い。それはどんな内容なんですか?」
リバールの件で、忙しいはずだろう。こんなところで時間を使う団長の考えが読めない。
何がしたいんだ。
「...治癒の才能に関する情報です。」
「ふむ。リリレイル=リーズファルト。確か彼女は治癒の才能を持っていましたね。そういうことならば、32年前のミカリスに関する調査報告書を確認するといいですよ。きっと、君の求めている情報があるはずです。」
「ミカリスの調査報告書...。ありがとうございます団長。確認してみます。」
「いえいえ。がんばっているみたいですね。その調子でお願いしますよ。それでは私は戻ります。今後も何かあれば、この場所に帰ってきていいですからね。」
そう言い残して団長は書庫から出ていった。
助言はありがたいが、いったい何しに来たんだ。それにすべてを見通している感じが不愉快だ。団長は書庫にある情報をすべて記憶しているのだろか。
まあ、今はそんなことを考える必要はないか。ミカリスの調査報告書を探そう。




