㉚実技授業の始まり
俺たちは今、入学初日のように、実技棟のグラウンドに集合している。今日からいよいよ、才能の実技授業が始まるのだ。
この世には人の数だけの才能があり、その数だけの成長方法がある。この授業は、その成長方法を見つけるために行われる。
「では皆さん!早速、実技の授業を始めていきますね!まずは、皆さんタイプ別に別れましょうか。私の方に向かって右から、身体系、干渉系、創造系、で集まってください!」
わらわらと動き出す。俺の才能は干渉系だから真ん中だ。アイナは誰がどう見ても身体系で、ジャックは創造系だな。そして、リリは俺と同じ干渉系。
この偶然を逃す手はない。
ここでリリの信頼を得ることができたら、調査対象である彼女の姉、エルレイナについて、なにか情報が得られるかもしれない。地道に1歩ずつ進めていこう。
さりげなく、リリの近くに寄る。さて、どうしようかな。
「あ!ゼルノくんも干渉系なんだね!一緒に頑張ろうね~。」
なんて話しかけようか色々考えていたが、そんな必要はなかった。あれだな。天然なんだろう、リリは。異性に話しかける時、普通は緊張するだろう。
「やあリリ。うん、頑張ろうね。リリは干渉系の中でもコントロールの難しい治癒の才能だよね。制御できるようになるといいね。」
心の中ではいくら緊張していようとも、表には一切出さない。「影」での厳しい訓練の賜物だな。
「ゼルノくん、よく知ってるね。そうなんだよ...。本当に全然うまく出来なくて...。でもあたし、頑張るって決めたんだ。この授業を通して、ちゃんと制御できるようになってみせるから!」
前向きなのはいいことだ。進み続けることができるのならば、いつかゴールにたどり着けるだろう。何があっても進み続けることができれば、だが。
「リリならきっとできるよ!僕は応援しているから。」
「ありがと!一緒に頑張ろうね~。」
さあ、ここからどう進めていこうか。まずはリリの信頼を得る必要がある。そのためのプランを頭の中で組み立てていく。
「身体系が8人、干渉系と創造系がそれぞれ6人になりましたね。それでは、ちょうど偶数なので、皆さん2人ペアを作ってください!」
ニナ先生の掛け声で、皆が一斉に話し始めた。これは...明らかなチャンスだ!是非ともリリとペアを組みたい。だがしかし、男女でペアを組むとなると、それはハードルが高い。上手くペアを組める方法は無いのか...
俺の頭が高速で回転し始める。
彼女はクラスの中心的人物。モタモタしていると、直ぐにペアを組んでしまうだろう。普通に声をかけようか。いや、逆にさっきみたいに声をかけてもらうのを待つのもありか?
いやいやそれだと、彼女から俺にペアの声がかかるわけが無い。ただ話しかけるのとは訳が違うのだ。
この間わずか1秒に満たず。
だがリミットはすぐそこまで来ているだろう。急いでなにかいい方法を考えねば...
「あ、リリちゃん私とペア組も〜。」
...終わった。
まだ1秒くらいしか経ってないだろ...
多すぎるだろ友達...
「ペア組もうぜ。」
「ペア組みましょ。」
「一緒に頑張ろう。」
俺が軽く絶望している間に、周りではペアがどんどん出来て行く。これはまずい、俺も早くペアを作らなければ。人数は偶数だから、絶対に誰かとペアを組めるはずだ。
急いで周囲を見渡す。
そして俺は、さらに絶望した。
そこにはもう既に、1人を残して誰もいなかった...
そう、1人で偉そうにふんぞり返っている、ニックを残して...




