㉙新たな一日
翌日からも、何事もなく王国学園の1日は始まる。
入学してから1ヶ月近く経った時点で、俺の「最後の仕事」は振り出しに戻った。元々早く終わるとは考えていなかったが、達成できなかった理由を考えると気が重くなる。
「影」の護送を襲撃できるほどの戦力を持つ組織。そんなものがこの王国に存在するとは考えたくもない。
王国内の最高戦力は王国騎士団だ。伝説の剣士、コール=ステイマンを初代団長に掲げ、この国の秩序を守ってきた。その王国騎士団に匹敵する戦力を持つのが、この国を裏から支えている、王国隠密暗殺団「影」だ。
不穏分子サイドである闇の組織に、王国最高戦力に匹敵する戦力が集結している。今回の一件では、そんな現実が垣間見えた。
「最後の仕事」の役割が、想像以上に重いな...
エルレイナ=リーズファルト。彼女は反逆者とみて間違いないだろう。だがしかし、闇の組織とのかかわりを示す証拠はない。今日からは、再びその証拠探しが始まる。
「...ノ君...ルノ君?.....ゼルノ君!?」
「...あ!はい、ニナ先生。どうかしましたか?」
少し考え込みすぎて、ニナ先生に不審がられたみたいだ。危ない危ない。今日は休み明けで、教室にいる。ニナ先生が、明日から始まる新しい授業の説明をしているところだ。
もちろんちゃんと聞いていた。
「あまり、話を聞いていないように見えたので。ちゃんと授業は聞いてくださいね?」
「はい。すいません、授業を続けてください。」
あまり注目は集めたくない。授業の再開を促しておく。
「少し中断してしまいましたが、話を続けますね。明日からは、個人の才能を上手くコントロールし、伸ばしていく授業が始まります。この1ヶ月間で、才能に関する座学をやってきましたね。例えば、才能は3種類あります。皆さん、覚えていますか?じゃあ、ゼルノ君、答えてみてください。」
「あ、はい。才能は大きくわけて、身体系、干渉系、創造系の3種類に分けることが出来るとされています。」
才能か。俺はあまり向き合いたくないな。だが授業というのなら仕方ない。
「正解です。そしてどれもれっきとした才能であることは間違いない。その才能を伸ばすことで、自身の可能性を無限に広げることができます。自分の才能に自信のある皆さん、その程度で満足なのですか?自分の才能に自信がない皆さん、才能は努力によってどこまでも伸ばすことができます。」
確かに。二ナ先生の言うことは正しい。どんな才能は、自分次第でどこまでも広げていくことができる。世の中には、優れた才能は確かに存在する。スタートラインに優劣がある。だが、努力次第で、後れを取っていた人間が、前の人間を追い抜くことだってできるのだ。
「王国学園において、才能に関する授業の位置づけは特殊です。この授業はテストがありません。ですが、定期的に才能の伸び具合を確認させていただきます。」
入学初日にやった才能の発表会を、定期的に繰り返すみたいだ。個人的には気乗りしないが、授業というのであれば仕方がない。
「では皆さん、明日からよろしくお願いしますね!」
どのようにして実技の授業を進めていくのかは、当日に聞くことになるのだろう。
これは、チャンスかもしれないな。
エルレイナの妹、リリレイル=リーズファルトに近づくことができるかもしれない。今夜は、これからエルレイナの調査を、どのようにして進めていくかじっくり考えよう。




