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染髪マン〜髪色で能力が変わるヒーローにされた俺は仕方がないので世界を守る〜  作者: 仮面大将G
一般的な日本の家庭だと朝食はチーズフォンデュ派がマジョリティですよね?

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24/28

第24話 朝のひと時と銀子の初陣

 今日はピッカピカの晴れ。ゴールデンウイークも終わって、結構暑くなってきたなあ。

 大学に入って最初のゴールデンウイークが、まさか美乃里の料理の練習に付き合って終わるとは……。

 銀子が髪染めた日に何故かバスタオル一枚で出て来た美乃里に服を着るよう言ったら、それ以来ぷりぷり怒って『料理の練習に毎日付き合え。さもなくば貴様の頭上に隕石とフローラルな香りのヘアミストが降り注ぐであろう』とか言って脅してきて、仕方なく付き合うしか無かったんだよな。隕石は別に良いけど、フローラルな香りのヘアミストは嫌だし。俺ムスクとかウッディ系の方が好きなんだよな。


 ちなみに美乃里がこのゴールデンウイークで作れるようになった料理は、ハモの蒲焼だ。なんでこれ選んだんだよ。骨多すぎてハモ捌くの面倒すぎるんだよ。結局ゴールデンウイーク全部使ってほぼハモ捌けるようになっただけじゃん。

 ハモなんか捌けても日常生活で役に立つ機会ほとんど無いだろ。俺がいつスーパーでハモを買ってくるんだよ。まるまる一匹ハモ売ってるスーパーなんか基本無いから、市場まで二人で買いに行ったあの時間は何なんだよ。大学生の男女が二人で行くところランキングとかあったら1836位ぐらいだろ。根拠無いけど。


 そんな美乃里もゴールデンウイークまるまるハモを捌いて疲れたのか、今日はやけに起きるのが遅い。そろそろ遅刻するから起こしてやらないとな。

 あ、美乃里は今日2限からって言ってたっけ。でもどうせ準備に時間かかるから、今のうちに起こしといてやるか。


 ちなみに寝室は同じ。別で寝るつもりだったけど、美乃里が何故か譲らなくて同じベッドで寝てるんだよな。意味が分からん。普通そういうのって女子側が嫌がるんじゃないのか? 変なやつだな美乃里は。


 寝室の前に立った俺は、スマホをスピーカーに繋ぎ、ドアの前にセット。ドアを少し開けて、スマホから再生を開始した。


『左に曲がります! ご注意ください! 左に曲がります! ご注意ください! 左に』


「うるっさいよ!? 何を流してるのこんな朝っぱらから!?」


「おお美乃里、おはよう。やっと起きたか」


「起きたけど! なんで起こすのにトラックが左折する時の自動音声流すの!? 轢かれる夢見たじゃん!」


「お、ならその後は異世界に転生するパターンだな」


「私なろう系の主人公じゃないから! 轢かれて終わりだから!」


「プロローグじゃないのか」


「プロローグじゃないよ!? この後神様に転生させられるとかチート授けられるとか無いよ!?」


「じゃあ何を授けられるんだよ。パッケージ版のPowerPointか?」


「それだけ授けられてもパソコン無いと意味無いでしょ!? 私異世界人に何をプレゼンしたらいいの!?」


「そりゃなんか、K-POPがタイにもたらす経済効果とか」


「それ異世界で言って何になるの!? あと柊吾くんってなんでそんなにタイ好きなの!? どこから来る愛着!?」


「話すと長くなるけど、まあ簡単に言えば『タイ』ミングかな」


「やかましいよオヤジくさいな! もしかしてそれ言いたいだけ!?」


「いや、書きたくもあるよな。パソコンで『タイ』ピングしてな」


「もう黙って!?」


 なんだよせっかく起こしてやったのに黙れとか、不義理なやつだな。美乃里が着替えるらしいから、俺は朝食の準備に戻った。



「おはよー柊吾くん……。あの、ずっと思ってたんだけどさ」


 着替えて出て来た美乃里は、俺が用意した朝食を見て怪訝な顔をしている。思ってたこと? なんだろうか。新設診察室視察とかかな。あれ俺言えたこと無いし。まさか美乃里が言えるようになるとは。先を越されたな。


「ねえ柊吾くん、そろそろ朝チーズフォンデュはやめない!?」


「……え? なんで? しんしぇつしんしゃつしちゅししゃちゅは?」


「なんて!? 何言おうとしてそうなったの!? いやそんなのいーんだけど、なんでこの暑いのに毎朝チーズフォンデュなの!?」


「え、なんだよお前朝食に拘りあるタイプか? 先に言ってくれよそんなの」


「別に拘りは無いよ!? でもチーズフォンデュ!? 毎朝!?」


「うん……。なんか変か?」


「変だよ!? いやなんか、休みの日のお手軽チーズフォンデュとかなら良いと思うよ!? オシャレだし! でも毎朝こんな本格的なチーズフォンデュは変だよ!?」


「なんでだよ。別に朝にチーズを食べるのは変じゃないだろ」


「チーズならね!? これチーズフォンデュだから! ゆっくり食べるやつだから! 学校ある日になんでこれ毎日やるの!?」


「いや別に、朝の定番と言えばこれだろ」


「多くの家庭では違うよ!? スイスとかでそだった!?」


 スイスでは育ってないだろ。ごく普通のチーズ専用倉庫がある家庭だよ。あれ便利だよな。いつでも好きなチーズが取り出せるし。俺も将来は欲しいな。


「毎朝チーズフォンデュのせいで柊吾くんめっちゃ早起きしてない!? いつも何時に起きてるの!?」


「まあ1限ある日は寅の刻だな」


「今の時間で言って!? あんまピンと来ないからそれ!」


「ああ、タイ時間で午前2時だ」


「日本時間で言える!? もしかしてタイを基準に生活してるの!? 私タイとの時差知らないからピンと来ないんだって!」


「時差は2時間だから、午前4時だな」


「早すぎるよ! いやそれで理由が何か朝活とかなら良いけどチーズフォンデュの準備でしょ!? 不必要すぎる早起きだよ!」


「でもお前、そのまま寝てたら遅刻だぞ?」


「そんなことはないよ!? 今まだ朝6時だし! 2限からだし今日! 2限って10時40分からだよ!?」


「でも美乃里って朝の準備に4時間半かかるだろ」


「かからないよ!? 私何の特殊メイクするの!?」


「そりゃなんか、苗字に『モバイル』が入る人のメイクとか」


「そういう特殊!? どんな人それ!?」


「どんなって、別に苗字が『加藤モバイル』とかなだけで見た目は普通の人だろ」


「何その個人経営の通信事業者! 信用ならないにもほどがあるよ! ていうか見た目普通なら特殊メイク要らないじゃん!」


 まあ確かに俺は一般的なキャバ嬢と比べて早起きだけど、遅刻するよりは良くないか? おかげで1限にも余裕で間に合ってるし。でも毎回1番前の真ん中に座るせいで遅刻したと思われるんだよな。出会ったばかりの美乃里にも言われたけど。


「まあまあ、そんな文句言っても仕方ないだろ。とりあえず食べよう」


「まあ食べるけどさ……。明日からちょっと朝のメニュー変えない? 私も考えるから!」


「別にいいけどお前、ちゃんとチーズに合うもの選んでくれよ?」


「チーズフォンデュのベースは崩さないの!? 食材だけ変えてもそれはチーズフォンデュだよ!?」


「靴下をチーズにつけてもか?」


「靴下をチーズにつけてもだよ! 大分類がチーズフォンデュであることは揺るぎないよ!」


「どの衣類ならチーズフォンデュじゃなくなるんだ」


「どの衣類でもだよ! 衣類をチーズにつけないでね!? あと長いよチーズフォンデュの話! どんだけ尺使うの!?」


 うーん、そこまでチーズフォンデュの存在感って凄いのか。あんまりそんなつもり無かったんだけどな。そこまで言うなら明日はチョコレートフォンデュに変えてやるか。


 ぶーぶー言いながら食べる美乃里を置いて、先に食べ終えた俺は準備をし、そのまま大学へと向かった。



「この道も割と歩き慣れてきたなあ。4月はあんまり思わなかったけど、5月になるとちょっと歩くだけでも暑いな。もっと近い距離に住むべきだったかな」


 最初の頃は咲いていた桜も完全に散って、鮮やかな緑色が目に入るようになった。緑色と言えば皮膚から見える血管だよな。血管見えてるとああここに血が通ってるんだなって思えて、生きてる実感が湧いて意味も無く坂ダッシュとかしたくなるよな。これはあるあるだと思う。ラジオとかに投稿してみるか。


 あるあるを投稿するラジオ番組をネットで物色しながら歩いていると、スマホに通知が届く。またクロゾーメ軍団か……。せっかく二人も幹部倒したのに、まだ怪人送り込んでくるのかよ。結局元を叩かないとダメなのか。アリとかも巣を潰さないといなくならないしな。

 まあ距離も近いし、サクッと倒して行くか。1限間に合うかな……。こんなつもりじゃなかったのになあ。



 『怪人キャッチ』のアプリが示す場所に行くと、以前俺が戦ったシャンプーゾーメにそっくりなフォルムの怪人と、それに向かい合う女の姿。お、銀子か? 先に着いてたか。


「おや、染髪マンじゃないか。遅かったねえ、この怪人はあたいの獲物だよ」


「いや戦わなくていいなら全然任せるけど。俺1限だし今日」


「相変わらずやる気の無いやつだねえ! あたいのヒーローとしての初陣なんだから、ちゃんと見ていきな!」


「ええー」


 そんな強引な……。戦いもしないのにそこで怪人と銀子が戦ってるの見てて遅刻とか嫌だよ。こんなことならもっと朝早くからチーズフォンデュ準備しとくんだったなあ。


「ふぉーっふぉっふぉ! ワシはクロゾーメ軍団のボディソープゾーメ! お前さんらの髪をキシキシにしてやるぞい!」


「ふぉーってお前そんなベトナム人みたいに」


「ベトナム人みたいではないぞい!? 別にベトナム人も常日頃からフォーを連呼しとるわけじゃないぞい!?」


「お前フォーをバカにするなよ。あれはスパイスが効いてることが多い東南アジアでも安心して食べられる、優しい味の料理なんだからな」


「フォーをバカにしたつもりはないんじゃが!? 勝手にワシをベトナムの敵にしないで欲しいぞい!?」


「もうあんたとりあえず黙ってな! あんたがいると戦闘も話も進まないんだよ! さあ、そこで見てな!」


 そんなことある? 俺一応主人公として設定されてるはずなんだけどな。普通主人公がいないと本筋が進まないのにな。


 銀子はヘアブラシを取り出して、オレンジになった髪を一回梳かす。顔の前でヘアブラシを構えた銀子は、叫んだ。


「変身! カラーリングガール!」


 銀子の体はオレンジに光り始め、どんどん装甲が付いていく。最後にオレンジのハケのエフェクトで塗られた銀子の姿は、ヒーローになっていた。

 これがカラーリングガールか……。染髪マンの場合は髪色に対応した装甲の色になってるけど、カラーリングガールはベースが黒なんだな。縁だけ髪色と同じ色になってる感じだ。元がクロゾーメ軍団の幹部だからか?


「お前さんが例の裏切り者じゃな? ワシのボディソープで髪をキシキシにしてやるぞい!」


「あんたそれ以外脅し文句が無いのかい? そんなんだから一般怪人のままなのさ!」


「一般怪人ってランクとしてはどれくらいなんだ? アルバイト怪人とかパート怪人とかもいるのかな?」


「お前さん、元幹部だからと言って容赦はせんぞい? 覚悟するんじゃな!」


「はっ。あんたこそ、ボディソープぐらいでこのあたいを止められると思わないことだね!」


「アルバイト怪人とかいるなら、内部登用の制度とかもあるのかな。怪人の場合はどうやって正怪人になるんだろう。スキルチェックシートとかあるのかな」


「うるさいんだよあんたずっと! 黙って見てなって言っただろう!? ああもう、行くよ!」


 そう言うとカラーリングガールは、ぐっと力を溜めてから一気に前に出る。凄いスピードだな。クロゾーメ軍団時代のスピードを上回ってるんじゃないのか? 今度カンガルーとかと競走してみて欲しいな。


 ボディソープゾーメはカラーリングガールを受け止めようと構えるも、気づいた時にはもうその体には三つの亀裂が入っていた。

 ボディソープゾーメの後ろにいるカラーリングガールを見ると、両手に鉄爪のようなものを装着している。え、あんなんあったっけ? 確かカラーリングガールの武器は毒って聞いてたけど。


「自作した鉄爪が早速役に立ったねえ。毒だけ持ってても、傷口に入れないと意味が無いからねえ」


「お前それ自作したの!? 暇か!」


「暇なわけじゃないってんだよ! あたいだって寝る間も惜しんでこれ作ったのさ!」


「若い女が寝る間も惜しんで作るのは普通マフラーかショート動画だろ!」


「そうとは限らないだろう!? さて、トドメと行こうか!」


 カラーリングガールはまたぐっと踏み込むと、再び高速で動き出す。ほんの1秒のうちに、ボディソープゾーメの体は何度も鉄爪に引き裂かれ、ズタズタになってしまっていた。

なんであいつ抵抗しないんだ?


「ぐっ……。これは、動きを止める毒じゃのう?」


「気づくのが遅かったねえ!」


 あ、なるほど。毒はそういう風に使うのか。丁寧な説明ご苦労。


「さあ、食らいな! 元怪人の藤本銀子、ヒーローとしてチャンスを貰い、咲かせてみせよう毒の花! 毒スプロージョン!」


「なんだその向上と技名!? 長いしダサいし造語だし! どんなセンスしてるんだお前!」


「ぬああああ!! ボディソープでも石鹸系のものだと髪はさらさらになるぞーい!!!」


 お、ちゃんと豆知識言ってくれるタイプの怪人か。今回は当たりだな。一般怪人だと豆知識爆散が基本なのかな。


「ふう、こんなもんかい」


「銀子お前、流石は元クロゾーメ軍団の幹部。ネーミングセンスとか色々酷いな」


「ああ!? どこがだい! とびきりイカしてるだろう!?」


「うん……。まあ、それでいいならいいよそれで」


「なんだいあんたは!? 言いたいことがあるならはっきり言いな!」


「え、ダサい」


「はっきり言いすぎなんだよあんたは! ちょっとは遠慮しな! ほら、大学行くよ!」


「え、お前も北関大学なの!? 知らなかったんですけども!?」


 そのまま俺は銀子と一緒に大学へと向かった。銀子は変身を解き忘れてたけど、そこは敢えて指摘しなかった。当然、大学に入る前に通りすがりの警官に止められたことは言うまでも無い。

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