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染髪マン〜髪色で能力が変わるヒーローにされた俺は仕方がないので世界を守る〜  作者: 仮面大将G
はんぺんの可能性は無限大だってそこの女幹部が言ってました

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第21話 ブリーチ不可と石鹸男

 それにしてもチーズフォンデュにはんぺんを使う発想、今まで無かったな。チーズとの相性も割と良さそうな雰囲気を醸し出してる気もしないでもないし。思いつかなかったのが悔しいぞ。

 銀子がはんぺんを連呼してくれなかったら、俺ははんぺんに思い至らなかった。さっき買ったはんぺんを見つめながら、俺は静かに明日の朝食のチーズフォンデュに、このはんぺんを入れることを誓った。

 コンビニのおでんとしては無かったからスーパーに売ってるはんぺん買ったけど、これって直接チーズに付けて良いものなのかな? 茹でてから食べるイメージあるけど。

 まあ何かしらチーズと絡んで食べられるようにはなるだろ。明日の朝、チーズとはんぺんが俺の口の中でどんなハーモニーを奏でるのか、今から楽しみだな。


「美乃里、明日のチーズフォンデュ・ブレークファストfeat.フィルハーモニーはんぺん楽団についてなんだけどさ」


「なんて!? 知らない曲に知らない種類の楽団が並んでてまだ咀嚼できてないよ!?」


「なんでだよ。とりあえず一回飲み込んでからまた口の中に戻して咀嚼したらいいだろ」


「変なもの反芻させないで!? 私牛じゃないから!」


「いや牛じゃなくてオカピのつもりだったんだけど」


「知らないよ! 日本に生を受けたら普通は特にオカピへのイメージ無いよ! もっと分かりやすいイメージ出して!?」


「仕方ないな。これがCGモデルを使用した、オカピの反芻の様子だ」


「オカピの反芻自体を分かりやすいイメージにされても困るよ! オカピ部分を変えて欲しかったのに!」


「オカピってさ、カピバラを見つけた人が『お、カピバラ』って言ったら、ちょっと反応しかけるけど自分のことじゃないのに気づいて、何にも無かったように振る舞うのかな?」


「うん知らないよ!? オカピの気まずい時あるあるに私共感できないから!」


「じゃあどのオカピあるあるだったら共感できるんだよ!」


「何にも共感できないよ!? オカピがまずピンと来てないんだから! パッと浮かばないのオカピ!」


「オカピが浮かぶわけないだろ。アドバルーンじゃあるまいし」


「『アド』要った!? バルーンじゃダメ!? あと今浮いてるのはオカピじゃなくて柊吾くんだよ! そろそろ銀子ちゃんの髪の話に戻って!?」


 あ、そうか。今は銀子の髪を染めようとしてるんだったな。美乃里が俺をコンゴの熱帯雨林に誘うから、オカピのことばっかり話しちゃっただろ。こいつはいつも違う話ばっかりするんだから。困ったもんだ。


「それで金森さん、銀子の髪は何色にするんです?」


「ねえ柊吾くん、もしかして今までの話全然聞いてなかった!? ブリーチが難しいって話だったでしょ!?」


「あ、そうなのか。そういやそんなモスキート音が聞こえた気がするな」


「え柊吾くんて人の会話もモスキート音に聞こえるの!?」


「それで金森さん、銀子にはブリーチができたりできなかったりっていうのはどういうことなんです?」


「何そのちょっとできそうな言い方! 変な質問の仕方やめて!? できないんですよね金森さん!?」


「この子の髪にブリーチができたりできなかったり踏んだり蹴ったり上げたり下げたり行き当たりばったり、そんなしきたりにぐったりするのは、この子が白髪染めを使っているからよ」


「ダメだこの人柊吾くんよりボケるタイプなんだ! 私じゃ手に負えないよこんなの!?」


「金森さん、そのサルバドール・ダリが銀子のブリーチを邪魔する原因なんですね?」


「もう画家じゃん! 少なくともブリーチできない原因はサルバドール・ダリではないと思うよ!?」


「今私がこの子の髪にできることは、せいぜい正三角形になるように編んであげることぐらいよ」


「なるほど、だそうだ銀子。やってもらえ」


「やめてあげてね!? 何正三角形になるように髪を編むって!? 印象派が過ぎるよ! ダリに引っ張られすぎだよ!」


「そろそろ本題に入ってもらっていいかねえ!? あたいはいつまでここであんたらのくだらない会話を聞いてなきゃいけないんだい!?」


「下らないことは無いだろ。俺のテンションは上り調子なんだから」


「わざわざ『くだらない』を漢字表記してまで上手いこと言わなくていいから、早く進めてくれないかねえ!?」


 なんだ銀子のやつ、そんなに怒って。俺だってしっかり考えてるよ。

 そもそも俺が銀子にヒーローになって欲しいのは、銀子が堂々と大好物のはんぺんを買いに行けるようになるためなんだから。ていうかなんでこいつそんなにはんぺん好きなの? そんなに好物になり得ないタイプの食べものだと思うけども。


「冗談よ、冗談。さてさっきも言ったけど、この子は白髪染めを使ってるのよ。それもかなり長い間。不自然な暗い色が定着してしまっていて、今ブリーチしてもムラになりすぎるわ」


「あたいは髪を染められないのかい……? 確かに長いこと白髪染めはしてたけどねえ……」


「そんなに長いこと使ってたのか? それを強要するなんて、やっぱりクロゾーメ軍団って変な軍団だな」


「厳密には強要はされてないんだけどねえ。白髪が残ったままだと、軍団のやつらに変な挨拶をされちまうんだよ。『お疲れ様です、若白髪!』って」


「そんな若頭みたいに! もうイジられてるだろそれ!」


 分かってたけどなかなか癖の強い軍団だなクロゾーメ軍団……。でも幹部である銀子がイジられるってことは、意外と組織の風通しは良くて上下関係が厳しくないのかもな。そういう意味では日本の企業も見習う余地があるな。


「じゃあ、銀子は髪を染められないってことですか?」


「一応……染められないことはないわ。でも、この子クロゾーメ軍団の幹部だったんでしょう? 染谷くん、本当に信用できるの?」


「大丈夫だと思いますよ。真っ黒な軍団にいましたけど、信用情報は全然黒くなかったですし」


「今信用情報の話だったの!? 私てっきり人として信用できるかのことだと思ってたけど!?」


「でもこの子、即日で借りた50万円を少し延滞した履歴があるわよ。真っ白ってわけじゃなさそうね」


「なんでそんなこと知ってるの!? 銀子ちゃんの信用情報を普通の人が知るわけないでしょ!?」


「美乃里ちゃん、それがあたい、SNSで信用情報を公開してるんだよ」


「なんで!? え、銀子ちゃん側がそっち行っちゃうの!?」


「頭の方だけ見えるようにしてるんだけどねえ、それ以降はぼやかして有料記事にしてるのさ」


「ああ延滞したお金を少しでも回収しようと! ねえそろそろ髪の話しない!? 今回特に酷いよ!?」


 美乃里がよく分からないことを叫ぶと同時に、俺のスマホが鳴った。なんだ? 俺が通知を許可してるアプリって言うと、怪人キャッチかパクチーギバー、あとはスーパームーンのタイミングを教えてくれるアプリだけだ。

 え、まさか今日スーパームーンか?


「染髪マン、どうやらもう軍団があたいのことを嗅ぎつけたみたいだねえ。お早い登場だよ」


「……ああ! もしかして通知鳴ったのって怪人キャッチのアプリか! 外に怪人がいるからってことか! なんだよ、今日スーパームーンじゃないのか」


「あんたは一体何を言ってるんだい!? あたい一度もあんたの言葉を理解できたことがないよ!?」


「ああ、俺が話してるのは日本語って言ってな。お前たちが住むこことは違う世界の言葉なんだ」


「あんた転生者なのかい!? だとしたらあたいが異世界人になっちゃうじゃないのさ! あたいだって日本生まれ日本育ちだよ!」


「え、お前もなのか……? まさかこの世界で日本人と出会えるなんて……」


「そりゃ日本だからねえ! 大多数が日本人だと思うけどねえ!?」


「なああんた、今夜だけは俺たちの故郷を想ってさ、一緒にココナッツジュースでも飲み交わさないか?」


「なんで日本のことを思い出しながらそんなトロピカルなもの飲まなきゃいけないんだい!? 染髪マン、そろそろふざけてられないみたいだよ!」


 『HERO's HAIR』のドアがガタガタと震え出す。え、あのドアもしかして腹筋鍛えられるとかそういうやつかな。なんかお腹に着けてるだけで腹筋に作用するとかそういうやつ。最近よく見るよな。ら〇ぽーととかで。


「物凄い勢いでここに向かって来てる怪人がいるようだねえ……。想像は付くけどねえ……」


 あ、そういうこと? なーんだ腹筋鍛えられないのか。ジム代わりにしたかったのにな。


 するとドアの振動が収まり、ドアの外から甲高い男の声が飛んで来た。


「カラートリートメントゾーメ様……いや、藤本銀子。そこにいるのは分かっているんです! 大人しく出て来なさい!」


「やばいぞ銀子、誤魔化せ! ほらキリンの鳴き真似とかして!」


「よし来た、キリンのモノマネだねえ! キリン、キリン……。パッと浮かばないじゃないのさ! どうやって鳴くんだいキリンは!?」


「その声、やはり藤本銀子! ここにいるという私の推理は、間違っていなかったようですね!」


「あんたが変なこと言うからバレちゃっただろう!? どうしてくれるんだい!」


「いや流石に今のはノったお前が悪いだろ……。まあ、とにかく倒すしか無いか。俺行ってくるよ。誰かパンとか要る?」


「この状況でコンビニ寄らないでね!? ちゃんと一直線に怪人だけ倒して帰って来てね!? 柊吾くんなら本当に怪人スルーして行きかねないから!」

 

「失礼だな。俺は怪人に乗ってハンバーガー注文したりしないぞ」


「うんドライブスルーに車じゃなくて怪人に乗って来ることを『怪人スルー』としてるわけじゃないからね!? 『怪人』と『スルー』の間に『を』が隠れてるからね!? それぐらい見抜いて!?」


「よし、行くぞ。銀子、お前も手伝ってくれよ。お前が本当にクロゾーメ軍団を抜けてヒーローになるって決意表明にもなるし」


「急に真面目にならないで!? 私だけ浮くじゃん! 柊吾くんの裏切り者!」


「安心しろ美乃里。今一番浮いてるのは、お前じゃない。缶ぽっくりで向かったせいでまだ着いてない大輔だ」


「そうだけど! 大輔くんまだ来ないの!? 缶ぽっくり捨てて来たらいいのに!」


 俺と銀子はサロンのドアを開け、足並みを揃えて外に出る。そこには真っ白な丸角の四角形から手足が生えたような怪人が、メガネをクイクイ上げながら立っていた。なんだこのギャグ漫画のゲストキャラみたいなやつ。


「おや、二人同時に出て来てくれましたか。一人ずつ始末する手間が省けましたねえ」


「お前二人始末する必要あるなら最初から一人ずつ始末する選択肢なんか視野に入れるなよ。効率悪いだろ。仕事できないのか?」


「酷い言われようですねえ!? 何故エリート怪人であるこの石鹸ゾーメが、そんなことを言われないといけないんでしょう!?」


「なんだよエリート怪人って。襟に糸くずが付いた怪人のことか?」


「襟糸怪人と言ったわけではないですが!? そんなちょっとだけ身だしなみが乱れたことをアイデンティティにする怪人がいるわけないでしょう!?」


「おい銀子、こいつうるさいから早くやっちゃおう」


「酷いねえあんた!? 大体あんたのせいだったけどねえ!?」


「行くぞ! 変身、染髪マン!」


「聞いちゃいないんだねこいつは! はあ……。まあもういいさ! やってやるよ! チェンジ、カラートリートメントゾーメ!」


 俺は染髪マンに、銀子はカラートリートメントゾーメへと姿を変え、石鹸ゾーメに向き合った。

 あ、遠くに大輔が見えるな。まだ缶ぽっくり乗ってるぞ。さっきは見えなかったから、染髪マンになると視力が上がるのかな。

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