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染髪マン〜髪色で能力が変わるヒーローにされた俺は仕方がないので世界を守る〜  作者: 仮面大将G
はんぺんの可能性は無限大だってそこの女幹部が言ってました

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18/29

第18話 美乃里の引っ越しと囚われの大輔

 翌週、本当に美乃里は俺の家に引っ越して来た。一応聞いてたとは言え、アパートの前にトラックが停まった時はまじかと思ったよな。もしかしたらレンタルブルドーザーで来てくれないかなと思ってたから。がっかりだよ美乃里。


 美乃里の大量の服とネイル道具、化粧道具なんかが所狭しと運び込まれ、まだ自分の荷物も開けきっていない俺の部屋は、気づいた時には女子部屋になっていた。

 いつの間にこんなことになった? 運び込んで配置する作業を手術とするなら、部屋の性転換手術だよ。聞いたことないんですけどもそんなワード。


 あととんでもなくデカいテレビを持ち込もうとしたのは流石に焦ったな。うちもうテレビあるし。85インチらしいけど、なんでそんなにデカいんだよ。あと前から思ってたけど、テレビのサイズをインチで言われても18歳の俺にはピンと来ないんだよ。なんだよインチって。下ネタみたいな響きの単位しやがって。


 ということで美乃里は俺の部屋に住むことになったわけだが。やっぱり家事とかはする気無いっぽいんだよなこいつ。現に今もソファに寝っ転がって話しかけてくるし。


「柊吾くん、ご飯まだー?」


「お前な……。ほとんど引越し業者と俺に運ばせて自分は何もしてないんだから、飯ぐらい自分で作れよ」


「そんなこと言われても困るよ! 私料理とか全然できないんだから。ボストンバッグの照り焼きぐらいしかできないよ?」


「まず食材選びから学べお前は! ボストンバッグを焼いてどうするんだよ! お前聞いたことあるベイクドバッグって!?」


「柊吾くん、ベイクドボストンバッグね」


「やかましいわ! どっちでもいいんだよそんなの! それどうやって食うの!?」


「まずてっぺんにある卵黄を潰して……」


「ああ卵黄乗ってるタイプの料理なのかボストンバッグ! ローストビーフ丼みたいな!」


「あ、柊吾くんローストビーフ丼作ってくれるの?」


「作らないけども!? 卵黄乗せるためだけに作るわけないだろ! 卵黄を乗せるためだけに作っていい料理はベイクド卵白だけだろ!」


「回りくどい目玉焼き作らないで!? 何ベイクド卵白って違和感しか無い言葉の並び!」


「とにかく卵黄は乗せないからな! そんなことで卵使ったら、俺の麻薬たまごに使う分が減るだろ!」


「まだ言ってるの麻薬たまご!? 好きすぎるよ! 本当に冷蔵庫にぎっちり詰まってるじゃん!」


「あと隙間によく知らない葉っぱも入ってるぞ」


「待ってそれ本当に合法なやつ!? 麻薬を冠するたまごと一緒に入ってるせいで疑いが拭いきれないけど!?」


 合法に決まってるだろ失礼な。たまに朝に散歩してると会うご近所さんがくれたんだよ。真っ黒なワンピースと三角帽子被った鷲鼻のおばあさんだけど、いつも朝早くに庭で水やりしてるんだよな。爽やかなもんだ。


「もう卵黄はいいけど、ご飯は作ってよー! せっかく私引っ越して来たんだよ?」


「せっかくってお前、そんな別冊みたいに」


「音の響きしか似てないでしょそれ! 無理にボケないで!? いーからご飯ぐらい作ってよ! ね?」


「作ってやってもいいけど……。お前もちゃんと手伝えよ? 初めての競艇5秒ってやつだ」


「初めての共同作業じゃなくて!? ボートレースに来てみたはいいもののビビって逃げ出してるじゃん!」


「ボートレースのCMって無駄にドラマチックにしてるけど、作風が古いのとベタすぎるのにキャラ設定がよく分からないから、ドラマとしてもプロモーションとしても失敗だよな。何も伝わらないし」


「ボートレースをメインの話題にすり替えるのやめてね!?」


 何言ってるんだこいつは。ボートレースがメインになるような流れを作るからだろ。まるで俺のせいみたいに言いやがって。

 まあいいや。とりあえず美乃里にも料理をさせないとな。このままじゃ俺の負担だけ増えちゃうし。


「それで、何作るんだ? ベイクド卵白かベイクドボストンバッグどっちだよ」


「その2択!? あとベイクドボストンバッグ一応選択肢に入れてくれるんだ! 無駄な気遣い!」


「他のがいいのか? じゃあベイクドライターとかか?」


「うんそれ爆発するでしょ!? 絶対やめてね!?」


「なんで爆発するんだよ。作家を焼いたって別にそれはただの火葬だろ」


「そっちのライターなんだね!? ごめんねカタカナじゃわからなくて!」


「いやこっちこそすまん。英語表記だとどっちをどう書くのかまだ覚えられなくて」


「こんなところで英語が苦手な弊害が!!」


「ñが付くのはどっちだっけか」


「それ付かないよ英語では! スペイン語のやつでしょ多分!? あんまり知らないけど!」


「『スペイン語』って英語か?」


「日本語だよ!? 待ってちょっと頭混乱するから変な質問やめて!?」


「別に変な質問とかしてないだろ。変な質問っていうのは、『バナナはおやつか衆議院のどちらに入りますか?』とかだよ」


「変すぎるよ! バナナが衆議院に入れるわけないでしょ!」


「そうだよな。バナナは議員に向いてないよな。時間が経つとだんだん黒いところが増えていくしな」


「そんなしょうもないことで上手いこと言わないの! うるさいなずっと!」


 美乃里がやいのやいの言いながらとりあえず料理を手伝ってくれてるけど、確かに手際は悪いな。卵だけはあるからオムライスを作るつもりなんだけど、とりあえず玉ねぎを切ってもらったら小さい玉ねぎがマトリョーシカのように出てくる。逆にそれ才能あるんじゃないか?


「ふー、ちょっと休憩ー」


「お前まだ玉ねぎリョーシカだけだろ切ったの。もっと手伝えよ」


「玉ねぎリョーシカって何!? 慣れない作業で疲れたからとりあえず一回休むの! スマホ見よーっと」


「そんなスマホばっかり見て……。将来SIMカードになっても知らないぞ?」


「SIMカードになる可能性あるの私!? ……あれ、なんか変なアカウントからメッセージ来てる」


「変なアカウント? もしかして@mayaku_love1ってアカウントか?」


「違うけどそれ柊吾くんのアカウントじゃないの!? あの麻薬たまごばっかり載せてるやつ!」


「いや、俺のは最後に数字付かないんだよ。アカウント名の最後に1が付いてたら、俺のなりすましだ」


「何が目的でこんなアカウントになりすますの!? 今興味本位で調べてみたけどそのアカウントフォロワー6人じゃん!」


「うち2人は俺の本垢と麻薬たまご垢だぞ」


「なんでフォローしてるの!? なりすましなんでしょ!?」


「早くフォローバックしてくれないかな」


「フォローバックされてないんだ!? じゃあもう柊吾くんがこの人のファンだよ!」


 俺がそいつのファンなわけないだろ。そいつが俺のなりすましなんだから。確かに新しい投稿がある度にいいねとリポストとグッドの絵文字をコメントしてるけども。


「そんなちっちゃいなりすましのアカウントはどうでもいいの! 柊吾くん、やばいよ!」


「何がやばいんだよ。え、まさかバナナ当選したのか?」


「してないよ! 出馬しないでしょまず! 選挙ポスターがスーパーのチラシみたいになるでしょ!」


「何で当選したんだ? 比例代表制か?」


「当選したならそうじゃないの!? いやそうじゃなくて! このメッセージ見て!」


「なんだよそんなに慌てて。えーっと、『アフリカ文化体験会へのご応募ありがとうございます。ご希望の日程で承りました』って書いてあるな」


「あーもう柊吾くんが変なこと言うから違うDM開いちゃったじゃん! あ、希望通ったんだ! やった!」


「お前普段アフリカ文化のアカウント見てるの!? なんで!?」


「え、普通に焚き火の周りで槍とか持って垂直に飛び跳ねるのに興味あって」


「普通じゃないだろそんな興味! その文化多分もう今見世物だぞ!?」


「そんなことはいーの! ほらこれ見て! 大輔くんが捕まったって!」


「そっか。それよりそのアフリカ文化体験会って俺も行けたりするのか?」


「もうちょっとリアクションして!? 大輔くんが捕まったのが3文字で流されたけど!? あと柊吾くんもアフリカ文化に興味あるの!?」


「アフリカの経済発展の更なる可能性について考える上で、実際に文化も体験しておかないとなと思ってな」


「アフリカ文化の方だけ答えないで!? ねえ見て!? 大輔くん捕まったんだよ!?」


「まああいつ教授ぶっ飛ばしてたしなこの前。捕まっても不思議じゃないだろ」


「警察にじゃないよクロゾーメ軍団にだよ!? ちゃんと見て!?」


 ん? クロゾーメ軍団に大輔が? なんで警察じゃなくてそっちに捕まるんだよあいつ。自分でアプリ開発したから、怪人とか出たら逃げればいいのに。


「ていうかクロゾーメ軍団かよ……。俺が出なきゃいけないじゃないか……」


「そんなに嫌!? え、柊吾くん一応これヒーローものだからさ、そろそろ戦ってくれないと困るよ!? 全然変身しないんだから君!」


「あ、変身しとけば別にいいのか。じゃあ意味もなく変身して温泉たまご作るか」


「戦って!? あとせめてあれだけ推してたなら麻薬たまご作って!? あとちゃんとDM読んで!?」


 やいやいうるさいやつだな美乃里は。大輔ならクロゾーメ軍団に捕まったって大丈夫だよ。最悪見捨てられる。

 でも一応読むか。えーとなになに? あ、この間の子バカ(オス)藤本凱からか。……いやこれ違うな。文章が割としっかりしてるから、妹の銀子の方だわ多分。

 大輔を捕まえたから、髪を黒く染めて来いと。そうしたら大輔を解放してやると。


「え、めんどくさ。これ俺今から黒染めしないといけないやつか?」


「感想そこになるの!? 友達が人質にされてるんだからもっと焦りなよ!?」


「やややややややばいよよよよよ! よよ! よよよよ! よお〜!」


「わざと焦らなくていいから! なんでだんだん歌舞伎みたいになったの!?」


「グラデーションで歌舞伎になっていく特技だ。これでテレビに出ようかと」


「無理だよ! いーから早く助けに行かないと!」


 助けにって言われてもなあ。一応場所も書いてあるけど、面倒この上ない。歩いたら20分ぐらいかかるけど、タクシー使う距離じゃないしなあ。


「助けてあげて本当に!? とりあえず行かないと!」


「分かったようるさいな。ならとりあえず黒染めしないと」


「え? 黒染めして大丈夫なの?」


「ああ、多分大丈夫。前にゴンディーにやられた時は変身できなくなったんだけど、クロゾーメ軍団の攻撃と金森さんの施術以外で染めても、俺の能力に変化は無いっぽいんだよ」


「え、そうなの?  本当に?」


「多分な。前に間違って染料入った桶に頭突っ込んで髪色がタイダイになったことがあるんだけど、その時も変身したら元の金髪に戻ったぞ」


「ごめん状況が特殊すぎて話入って来ないんだけど!? 柊吾くんどこにいたの!?」


「だから染めるのは大丈夫だと思うんだけど、今から黒染め買いに行くのもなあ……」


「あ、それならだいじょーぶだよ! 私この間権藤教授からクロゾーメ軍団の目的とか聞いた時に、ついでに白髪染め一本貰ってきたから!」


「お前なんでそんな意味不明のコミュ力持ってるの!? 今は都合いいけど!」


 美乃里が荷物から取り出した白髪染め(泡タイプ)で、とりあえず髪を染めてみる。やってから気づいたけど、ゴンディーからもらったならこれクロゾーメ軍団の攻撃と同じで変身できなくなったりしないか?

 まあいいか、その時はその時だ。また凱に2時間ぐらい待ってもらって、金森さんにブリーチしてもらえばいい。髪は死ぬだろうけど。


「よし、こんなもんかな。じゃ、行ってくるぞよ」


「なんで急に公家みたいになったの!?」


「そんな苦言を呈するなよ」


「ダジャレはいーから! 早く行きなさい!」


 美乃里に押し出されて、黒髪の俺は家を出た。美乃里宛のDMに乗ってた位置情報を転送してもらったけど、やっぱり歩くと20分ぐらいかかるよなあ。

 調べたら古い倉庫らしいんだけど、そんな都合いい場所近くにあったんだな。こんな前半で使って大丈夫なのか?

 ……あ、ここ電動キックボード置いてる場所通るな。途中からそれで行くか。



「お、ここだここだ。たのもー! たーのもー! たのもー!」


「うるせえなてめーは! なんだその楽しそうな道場破りみてーな入り方は!」


「ちょ、開けてくれよ。俺電動キックボード乗ってるから自力で開けられないんだよ」


「なんでんなもん乗ってんだよてめー!? ずっとふざけてんだろ!?」


「ふざけてるかふざけてないかで言ったら、ユニークな行動に魅力を感じてるな」


「ふざけてるかふざけてないかで言えや! てめー舐めやがって……。こいつがどうなってもいいのか!?」


 とりあえず凱が倉庫を開けてくれて、俺は電動キックボードの速度を落として倉庫の中に入った。天井からロープで大輔が吊るされてるのが見えるな。猿轡もされてるみたいだ。あいつ猿轡似合うな。もう普段からあれでいいんじゃないか?


「ちゃんと黒染めはしてきたようだなあ! 変身できないてめーなんかに負ける筋合いはねえ! 覚悟しろよてめー、この間騙しやがって!」


「あんなんに騙される方が悪いだろ。バカだなお前は。もうバカを超えてブファロだよ」


「ああ!? なんだブファロって!?」


「スペイン語でバカって言ったらメスの乳牛のことだろ。だから水牛って意味のブファロにアップデートしてやったんだよ。……あれ、なんか強そうになってないか?」


「わけわかんねーことをごちゃごちゃと! もういい! さっさとぶっ潰してやる! チェンジ! カラーシャンプーゾーメ!」


 ゴンディーの時と同じように凱の周りを黒い球体が覆い、弾ける。縦長の長方形に近い形をした仮面には、よく見ると小さくノズルのようなものが付いていて、シャンプーボトルがモチーフらしい。黒いシャンプーボトルの仮面被ったやつが、黒い鎧を着てる感じだ。クロゾーメ軍団のセンスは相変わらずダサいな。


 まあ向こうがやる気なら、俺も倒されるわけにいかないからなあ。仕方ないか。


 ポケットから櫛を取り出した俺は、一回髪を梳かし、櫛を掲げた。


「変身、染髪マン!」

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