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染髪マン〜髪色で能力が変わるヒーローにされた俺は仕方がないので世界を守る〜  作者: 仮面大将G
はんぺんの可能性は無限大だってそこの女幹部が言ってました

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第13話 ある日の美乃里と急なお願い

「ふーん、それで権藤教授いなくなっちゃったんだ」


 教室で隣に座る美乃里は、相変わらず一番前の席。別にいつも俺が一番前に座るからって合わせなくてもいいのにな。今日は遅刻ギリギリでもなかったし。他に友達いないのか? 意外と寂しいやつなのかなこいつ。

 寂しいと言えば冬から真冬に変わる時って寂しいよな。大体みんなは夏から秋に変わる時が寂しいって言うけど、気温の低下が寂しさと比例することを前提にするなら、理論的には一番寂しいのは冬から真冬に変わる時だろ。これ卒論のテーマにしようかな。


「朝ニュースになってたのはそれかー。柊吾くんが何かやったのかなとは思ってたけど!」


「え、ニュースになってたのか。全然知らなかったぞ。あいつそんな権威ある教授なの?」


「そりゃ北関大学の権藤教授って言ったら結構人気ある教授だよ? 教科書になるような本も何冊も書いてるし、権藤教授のゼミに入るために北関大学に来る人だっているんだから。柊吾くん知らなかったの?」


「全然知らなかったぞ俺は。タヌキが犬の仲間なんて……」


「何の話してるの今!? 私タヌキの話した!?」


「タヌキってなぞなぞとか暗号文とかによく使われるけど、タヌキ本人はどう思ってるんだろうな。美乃里、ちょっとこの議題でディベートしてそれを動画に撮ってニコニ〇動画にアップロードしないか?」


「しないよ!? あとするならせめてユー〇ューブにして!? 私タヌキの気持ち推し量るの無理だし、そもそもタヌキは自分たちがタヌキって呼ばれてること知らないでしょ!?」


「なるほどそういう観点もあるよな。でもタヌキが犬と同程度の知能を持っていると仮定するなら、長い歴史の中で自分たちが人間にタヌキと呼ばれていることは認識しているかもしれないぞ。その前提ならタヌキはどう考えるんだろうな」


「ディベートに持ち込まないでもらえる!? 私それに乗っかってないからね!? え、ていうかこれ撮影してないよね?」


「してるぞ。サーモグラフィーで」


「なんでそれでしてるの!? ああもうほら私ツッコミに回ってるから体温上がってるじゃん! 真っ赤じゃん!」


「真っ赤なお鼻のトナカイさんって歌の導入としてどうなんだろうな? 鼻が赤いのって特別か? 俺だって鼻に保冷剤とか置いてたら赤くできるのに」


「脱線に脱線を重ねないで!? 何か言う度に連想が止まらないじゃん! 試しに変なこと言ってみたくなるじゃん! ソースカツ丼!」


「止まらないと言えば凧揚げだよな。あれ休みの日とかにやり始めるとずっとやっちゃうし」


「柊吾くん休みの日凧揚げしてるの!? いや待って待って、ソースカツ丼スルーして止まらないのワードピックアップしてるの!? 絶対そっちじゃないでしょ! 私が呼んだのそこじゃないよ! ちゃんと言ったところに来てもらえる!?」


「なんで俺が来るんだよ。美乃里がちゃんとワードを届けてくれたらいいだろ。明日着指定で置き配で頼む」


「私アマ〇ンじゃないんだけど!?」


「俺だってベル〇ゾンじゃないよ」


「柊吾くん普段ベ〇メゾン使ってるの!?」


 ベルメ〇ンはたまにしか使わないだろ。俺が普段から使うのはニ〇センだよ。あんまり若い男が使うようなもののバリエーションが無いから増やして欲しいんだよな。ニッ〇ンとベルメ〇ン以外で通販サイトって無いのかよ。不便な世の中だな。新しいサイト大輔に作らせるか。


「ねーね、それより柊吾くん! お願いがあるんだけどさー」


「なんだ? サーモグラフィーのデータならあげないぞ?」


「要らないんだけど!? いやそうじゃなくてさ、今日柊吾くんの家に泊まらせて欲しいなーって!」


「三重に飛ばさせて欲しい?」


「言ってないよ! なんで私急に三重行きたがるの!?」


「そりゃなんか伊勢神宮的な何かを欲してたり欲してなかったりVRゴーグルが欲しかったりするんだろ」


「そんなふわっとした理由で突発的に三重行かないよ! あと最後に変な欲望無かった!?」


「変な欲望? 俺が将来二枚貝になりたいと思ってることか?」


「違うけど柊吾くん二枚貝になるのが夢なの!? なんで!?」


「いやだって、巻貝より二枚貝の方がビジュ良くないか?」


「まず貝になる前提の方に疑問持ってるんだけど!? 知らないよ貝のビジュとか!」


「まあまあ、そんなカイカイするなよ」


「カリカリでしょ!? 私まで貝に巻き込まないで!?」


「お、巻貝だけに巻き込まれていくのか」


「私巻貝じゃないって! ね、聞いて!?」


 貝は素晴らしいよな。出汁にもなるし具にもなるし。具には漢字的な意味でもなるよな。一本足せば。でも最近貝って高すぎないか? 特にホタテ。回転寿司とかだと昔は他の皿と変わらなかったのに、今ホタテだけ200円ぐらいしない? あれなんでなんだろうな。


「ねーってば! 柊吾くん聞いてる!?」


「聞いてるに決まってるだろ。現役大臣のオールナイト外務省だろ?」


「何その政治的な夜!? そんな変なラジオの話してないから! 今日泊まりに行きたいって話!」


「別に俺の了承なんか得なくても泊まればいいだろ。俺お前の育ての親じゃないし」


「『育ての』って要る今の文脈で!? え、柊吾くん意味分かってる? 柊吾くんの家に泊まりに行きたいって言ってるんだよ?」


 ……ん? 俺の家に美乃里が……? え、女子大生ってそんな簡単に男の家に上がり込むもんなの? いや別に襲ったりしないけどさ。

 

「別に泊まりに来るのはいいけど、美乃里の生みの親はなんて言ってるんだよ?」


「生みの親が別にいる前提やめて!? お父さんとお母さんには友達の家に泊まるって言ったらむしろ喜んでくれたよ?」


「でもお前それ、その友達が男キャバ嬢なことは伝えたのか?」


「待って柊吾くん男キャバ嬢なの!? 女性ホストとかはたまに聞くけど! その場合『嬢』って言っていいの!?」


「お前の生みの親だってさ、年頃の娘がいきなり大学で知り合った男キャバ嬢の家に行くなんて聞いたらびっくりするだろ」


「まず私が今びっくりしてるけど!? 柊吾くん男キャバ嬢なの!? 源氏名とかどうしてるの!?」


「そりゃお前、ザ・エミリエストだよ」


「ザ・エミリエスト!? エミリーの最上級!? ちゃんと『ザ』も付いてるんだ!?」


「ちょっと前まではエミリアーだったんだけどな。身長が伸びたからザ・エミリエストになったんだよ」


「出世魚みたいなシステムで源氏名変えるお店!?」


 しかし美乃里のやつ、そんな簡単に泊まりに来るなよ。俺だって一人暮らし始めたばっかりで、全然部屋とか片付いてないんだからさ。なんか隠しといた方がいいものとかあったっけ? 高校の時に自費出版した力士向けのファッション雑誌は別に隠さなくていいか。


「それで結局泊まりに行っていいの?」


「まあいいけど……。俺が何もしないとは限らないぞ?」


「だいじょーぶでしょ! もし柊吾くんに何かされても、私が勝手に上がり込んでるんだし仕方ないよ」


「知らないぞ本当に? 俺が夜中に牛タンとか炙り出しても」


「待って何かするのベクトルって飯テロ!? それはちょっとやめて欲しいかも!」


 しかし結構片付けないとなあ……。まだ引っ越して来て日が浅いから、開けてないダンボールとかも普通に残ってるんだよな。せめてクローゼットとかに押し込んどかないと。


「ていうか美乃里、なんで今日帰らないんだよ? わざわざ俺の家に泊まらないといけない用事があるのか?」


「やっとその疑問に辿り着いたの!? 遅くない!? サークルの子たちとご飯行くの!」


「サークル? お前サークルなんか入ってたのか。あれか、入学式の日にやたら勧誘された天気予報が外れた時にめちゃくちゃネットで煽るサークルか」


「違うよ! 何その性格悪いサークル! まさか入ってないよね!?」


「いや入ったよ」


「入ったの!?」


 そりゃなあ、他に入りたいサークルとか無かったし、染髪マンの活動で忙しいし。不意に怪人が出たりしてサークル休むことになっても罪悪感ゼロのところに入りたかったんだよな。そもそもこのサークルなら天気予報が当たればいいんだから。先輩たちは当たってもいちゃもん付けてるらしいけど。なんでそんなに天気予報嫌いなんだよ。


「柊吾くんは知らないけど、私はそんな変なのじゃなくてネイルサークルに入ってるの! 将来はネイリストも視野に入れてるんだー」


「ザは付かないのかザは」


「付かないよ!? ネイリストはネイラーの最上級じゃないからね!?」


「ネイラーは何の比較級なんだ」


「知らないよ!? 私も今この言葉生み出したから! なんでさっきから活用に拘るの!?」


「受験勉強をやりすぎたんだよ」


「だとしてもそれ中学の範囲じゃない!? もしかして柊吾くん英語苦手!?」


「苦手っていうかまあ、暗記科目だと思ってるな」


「じゃあ苦手だよ! 英語を暗記科目だと思ってる人は根本的に英語が言語なことを忘れてるから! じゃあ英語のクラス分けとか初級だったの?」


「いや、英語はもう単位を落としてる」


「早くない!? まだ今までの英語の授業全部飛んでても落とさない段階だよ!?」


「いやだって先生がさ、お前は英語を学ぶ資格がないで候って」


「先生の方が無くない!? ジャパニーズサムライみたいな話し方してるよ!?」


 まあ実際英語は苦手ではあるけども……。どうにかしたいけどな。英米文化論の授業とか取るくらいには英語圏の文化に興味はあるし。

 受験期に文法とか詰め込みすぎたせいでやたら文法が気になるんだよ。適当に店の看板とか見ても文法項目を考えてしまうという後遺症が残ったのは誤算だったなあ。


「とりあえずさ、今日の22時に駅まで迎えに来て欲しーな!」


「なんで俺が行くんだよ。美乃里が勝手に俺の家まで耕運機で来たらいいだろ」


「地面耕しながら移動しないよ!? いやだって私、柊吾くんの家知らないもん」


「じゃあ家の特徴言うから自力で来いよ。家賃は4万8000円で敷金礼金が1ヶ月ずつ、インターネット完備で築浅だ」


「不動産としての特徴言われても困るんだけど!? え、もういーから迎えに来てね!?」


 ええ……。そんな夜に外出たくないんだけどな。めんどくさいな……。

 あれ、ていうか22時なら普通に終電とか余裕で間に合うんじゃないのか? なんで美乃里はわざわざ俺の家まで泊まりに来るんだろう。あれか、女子一人で夜中に歩いてたら危ないからか。変質者とか妖怪とか出るかもしれないしな。化けジャケットとか。じゃあ仕方ないか、めんどくさいけど迎えに行ってやろう。

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