第44話:神威(しんい)
【皇城・玉座の間】
火花と衝撃波が、大極殿の柱を次々と粉砕していく。
クロウが『天叢雲剣』を生成し、光速の斬撃を繰り出せば、ナヤーもまた禍々しい漆黒の魔剣を虚空から引き抜き、それを完璧なタイミングで弾き返す。
「無駄だ。我が力は、貴様の鏡の力をさらに上書きする絶対の真理。貴様が何を繰り出そうと、それは我を強化する糧に過ぎぬ」
クロウが『碧鳥』の力で重力を操れば、ナヤーも同質の波動を放って空間を相殺する。『冥鳥』による瞬間移動(転移)で死角を突こうとしても、ナヤーは先読みしていたかのように、その出現位置に拳を置いていた。
力、速さ、そして特殊能力。そのすべてが完全に互角。
互いに決定打を欠き、消耗だけが重なっていく千日手の状態。しかし、ナヤーの余裕に対し、クロウ——雄介の心に絶望の二文字はなかった。
(……同じ力なら、コピーできないほどの『密度』で叩き込むまでだ)
雄介の脳裏に、おやっさんとの再特訓の日々が去来する。
「雄介、鏡は光を映すだけじゃない。光を集め、増幅し、天の怒りを地上へ落とす導路にもなるんだ」
クロウが静かに構えを解き、深く息を吐く。全身の装甲が、これまでにない高周波で震え始めた。鏡の力が逆流するようにクロウの核へと収束し、漆黒の装甲の隙間から、禍々しくも神々しい紫電が漏れ出す。
「ナヤー、お前が映せるのは『今』の俺までだ。……これがお前には届かない、俺の希望の力だ!」
クロウの背後に、八つの雷球が円環を成して出現する。
究極の力——『八雷神』。
玉座の間に、物理法則を無視した轟雷が鳴り響く。それは教祖が操る魔力ではなく、雄介が人々を護る意志で掴み取った、荒ぶる神の雷であった。




