第42話:看破(かんぱ)
【皇都・目抜き通り】
「忘れ物をした」とえりたちに告げ、一人『天の鳥船』に跨った雄介は、紫に染まった空の下を爆速していた。バックミラーに映る皇都の街並みは、特務局の車両が慌ただしく走り回り、避難を急ぐ人々の不安な表情で溢れかえっている。
(……四方の龍穴。地震、洪水、火事、竜巻。ナヤーは確かにそう言った)
雄介はスロットルを絞りながら、脳内でナヤーが告げた四つの地点を繋ぎ合わせる。一番手薄な地点へ向かい、そこから冥鳥の力で順次転移し、四天王を各個撃破していくべきか。だが、雄介の胸には拭い去れない違和感が渦巻いていた。
(……奴が、そんな単純な「攻略」を許すはずがない。四方に戦力を分散させるのが目的だとしたら、奴が本当に狙っている『空白』はどこだ?)
雄介の思考が、皇都の地図を俯瞰する。
北、南、東、西。
四つの絶望が包囲するその幾何学的な中心点。そこには、皇国の象徴であり、強固な霊的障壁で守られているはずの場所があった。
「……皇城か!」
ナヤーの真の目的は、龍穴を暴走させることそのものではなく、特務局の戦力を四方に引き剥がし、中央の守りを無にすること。自分自身が皇城に乗り込み、そこを「神」を招くための真の祭壇とするつもりなのだ。
「行かせるかよ……ッ! あそこには、まだ逃げ遅れた人たちが大勢いるんだ!」
雄介は『天の鳥船』の進路を強引に切り替え、皇都の中心、皇城へと向かう直線道路へと滑り込ませた。
時速200キロを超える風圧を受けながら、雄介はハンドルから片手を離し、空中で鋭く、淀みなく旋回させる。
「鏡よ……力を貸してくれ。みんなの明日を護るために!」
咆哮と共に、雄介は走行しながら変身ポーズを取る。
「天の鳥船」の車体から漆黒の光が溢れ出し、雄介の全身を冥界の装甲が包み込んでいく。
「変……身!!」
光が弾けた瞬間、そこには一人の守護者——クロウが、黒い流星となって皇城へと突き進む姿があった。
同時刻、皇都の四方では、特務局の部隊がそれぞれの龍穴に到着。後に語り継がれる「四方同時決戦」の幕が、今まさに切って落とされようとしていた。




