第41話:不抜(ふばつ)
吹き荒れる白煙の中から、一人の戦士が歩み出た。
玄武の重装甲と藤岡の肉体が完全に融合した姿。複眼は紅蓮の赤に燃え、胸部は玄武の意志を宿す深い緑。その両脇には銀の2本ラインが走り、首元にはエネルギーの余剰排熱が形を成した赤いマフラーが、戦場に舞う風になびいている。
「な、何だその姿は……!?」
驚愕するキャットフィッシュ。だが、戦士に迷いはない。玄武の特殊機能である「重力制御」が発動し、周囲の重圧が霧散する。
「……ここからは、私の時間だ」
戦士は、先ほどまでの重厚な動きが嘘のように、軽やかな跳躍で空間を駆けた。キャットフィッシュの放つ振動波を、紙一重の動きで「技」によって受け流し、次々と鋭い打撃を叩き込んでいく。魔人の巨体が、初めて恐怖に震えた。
「おのれぇ! 潰れろッ!」
「終わりだ」
戦士は垂直に、空高くへとジャンプした。頂点に達した瞬間、全身のエネルギーが右足の足裏へと集中し、青白い光を放つ。
「玄武・破岩蹴!!」
流星のような軌道を描き、必殺のキックがキャットフィッシュの胸部に突き刺さる。
「……ナ、ナヤー様……万歳……ッ!!」
最期の賛辞を遺し、魔人は龍穴と共に、跡形もなく爆砕した。
【皇都警察庁・対魔特務局 総司令部】
北のモニターに、力強い「CLEAR」の文字が踊る。
『……こちら北の藤岡。北の龍穴、完全鎮圧。……被害、軽微。これより、皇都中央へと向かう』
西、南、東。多くの犠牲を払った三方に対し、北だけは圧倒的な勝利を収めた。その戦士の背中には、散っていった仲間たちの想いが、赤いマフラーと共に刻まれていた。
「……伝説は、生きていたか」
磐城長官の言葉に、司令部は一瞬の歓喜に包まれる。しかし、戦いは終わっていない。
四方の龍穴は封じられた。だが、中心部——皇城には、今まさにナヤーが足を踏み入れようとしていた。




