第37話:爆発(ばくはつ)
朱雀が自らのボディを削りながら放つ高熱エネルギーにより、ワイルドボアの突進が一時的に停止する。
「……今だ、佐々木中佐! 全出力を一点に!」
「待たせたな! これが俺たちの……人間の意地だッ!!」
佐々木中佐は強化外骨格の全リミッターを解除。ブースターを逆噴射させる勢いで、渾身のストレートを魔人の胸部装甲へ叩き込んだ。
「うおぉぉぉぉぉッ!!」
装甲を貫通する衝撃。ワイルドボアは、後方の大型タンクを粉砕しながら吹き飛んだ。
「ぐ、おぉぉ……人間ごときが……ここまで……!」
地に伏したワイルドボアが、憎悪に満ちた目で龍穴を見つめる。
「……ならば、道連れだ! 地の底の火よ、皇都を飲み込め!」
死に体の魔人が、最後の力を振り絞って炎の槍を龍穴の中心へと突き立てた。地脈が暴走し、地下からマグマが噴き出そうとする。これが噴発すれば、皇都の半分が焦土と化す。
「……させません。それが、私の『守護』の定義です」
朱雀が、暴走する龍穴の直上へと静かに移動した。
「朱雀! 何をするつもりだ、戻れ!」
佐々木の叫びも虚しく、朱雀は内部原子炉を臨界まで強制加速させる。
「全エネルギー、逆位相爆発。——さようなら」
朱雀のボディが白銀の光に包まれ、大爆発を起こした。
その衝撃波が、噴き出そうとしたマグマを龍穴の奥底へと力ずくで押し戻し、炎の嵐を強引に中和していく。
【皇都警察庁・対魔特務局 総司令部】
爆音の後、モニターから朱雀の信号が完全に消失した。
静寂に包まれる司令部に、ノイズにまみれた佐々木中佐の声が届く。
『……こちら、南の朱雀隊。龍穴は死守。……繰り返す、死守したぞ……』
通信の向こうで、荒い息遣いと、崩落する建物の音が響く。
『……朱雀、大破。隊員の多くが、殉職……。……だが、火は、消した……』
血を流しながら、焼け焦げた戦場に一人立ち尽くす佐々木の背中。
本部のモニターには、西に続き、南のポイントも「CLEAR(制圧)」と表示された。
「……佐々木。よくやった」
磐城長官が深く帽子を被り直し、モニターを直視できない霧島冴子は、静かに祈りを捧げた。
残る龍穴は、東と北。
東の龍穴では、青龍が「洪水」に立ち向かい、北では玄武が「地震」を止めるべく、最後の戦いに挑んでいた。




