第36話:業火(ごうか)
【皇都・南の龍穴(臨海工業地帯)】
南の龍穴から溢れ出した熱波が、コンビナートの配管を飴細工のように歪めていた。炎が渦巻く極限状態の中、四天王の一角、猪魔人ワイルドボアが炎の槍を振り回し、狂気の咆哮を上げる。
「ヌオォォォ! すべてを焼き尽くし、ナヤー様へ捧げる火祭りにしてくれるわ!」
ワイルドボアが超高速の突進と共に炎の槍を繰り出す。特務局の精鋭部隊が放つ『カドゥケウス銃・改』の高周波振動弾も、槍の圧倒的な回転にすべて弾き飛ばされてしまう。
「退くな! 警察の盾を信じろ!」
指揮官・佐々木中佐の声が響く。彼は特務局が開発した最新鋭の強化外骨格を纏い、最前線で大型シールドを構えていた。駆動系が唸りを上げ、魔人の突進を真っ向から受け止める。
「ほう、人間ごときが私の膂力を押し返すか!」
「……今の警察は、ただ守るだけじゃないんだよ!」
佐々木は盾を捨て、強化外骨格のパワーを右拳に集中。重厚な一撃がワイルドボアの顔面を捉え、巨体をのけぞらせる。至近距離での凄絶な殴り合い。だが、魔人の発する熱量は、強化外骨格の冷却限界をじりじりと削り取っていく。
「——佐々木中佐、下がってください。ここからは、私の熱量で抑えます」
紅蓮の翼を持つ『朱雀』が戦場に舞い降りた。
朱雀は自身のボディを構成するナノマシンを臨界まで励起させ、全身を青白い炎へと変えてワイルドボアに肉薄した。




