第34話:烈風(れっぷう)
【皇都・西の龍穴(西郊外・再開発エリア)】
西の龍穴から噴き出す風は、もはや空気の塊ではなく、巨大な「研磨機」と化していた。巻き上げられた瓦礫がビルを削り、地上にいるだけで肉体が細切れにされそうな暴風が吹き荒れる。
その中心で、エルク四天王の一角、梟魔人オウルは巨大な翼を広げていた。
「ホー……。この嵐の中に飛び込む羽虫がいるとはな」
オウルが低く鳴くと、彼の羽から分離した無数の小羽が、それぞれ小型の梟魔人「オウル・チャイルド」へと変貌し、特務局の包囲網へと急降下した。
「全車、カドゥケウス改、斉射! 弾幕を張れ!」
小林中佐の鋭い号令が無線に響く。
特務局・西方面部隊の装甲車が一斉に火を噴いた。高周波振動弾が空を埋め尽くすが、オウル・チャイルドたちは風の流れを読み、弾丸の間をすり抜けてくる。
「ぐあああッ!」
装甲車の天板を鋭い爪が引き裂き、隊員たちが次々と空へと引きずり込まれていく。
「地上部隊、後退! これ以上は全滅するぞ!」
「……待たせたな。ここからは我々の領域だ」
通信に割り込んだのは、白銀の機体——『白虎』であった。
白虎の両肩のスラスターが青白い火を噴く。小野寺所長が組み込んだ『加速装置』が、大気を激しく圧縮した。
「——システム、アクセル。限界速度へ」
ドォォォォォン!!
音速の壁を突破した白虎が、空中でオウル・チャイルドたちを次々と粉砕していく。目にも留まらぬ速さでビルの壁から壁へと跳躍し、弾丸のような体当たりで敵の編隊を崩していく。
「ホーッ!? 人間が作った機械が、この速度に……!」
オウルが驚愕に目を見開く。白虎はそのまま暴風を切り裂き、主敵であるオウルの眼前へと肉薄した。高周波クローとオウルの鋼鉄の翼がぶつかり合い、夜空に火花の雨が降り注ぐ。
「小林中佐! 奴を龍穴の直上から引き離しました! 今です!」
「よし、全分隊、残存火力を一点に集中しろ! 白虎を援護するんだ!」
西の空で、科学の加速と魔の暴風が、互いの存在を賭けて激突する。




