第33話:分断(ぶんだん)
【皇都警察庁・対魔特務局 総司令部】
ナヤーの宣戦布告からわずか一時間。特務局内は、極限の緊張感に包まれていた。モニターには皇都を囲む四つの龍穴のエネルギー値が異常上昇し、天変地異の予兆が視覚化されている。
磐城長官が、整列した精鋭指揮官たちを鋭い眼光で見据えた。
「作戦時間は24時間。我ら警察の総力を挙げた、四方同時攻略作戦を開始する。……各員、この戦いに『次』はない。覚悟はいいな」
指揮官たちが、一斉に決然たる敬礼を返す。
「東の龍穴(洪水):千葉中佐。君の部隊に『青龍』を託す。湾岸部の水門を死守せよ」
「了解! 我ら青龍チーム、一滴の濁流も街へは通しません!」
「南の龍穴(火事):佐々木中佐。君と『朱雀』は工業地帯へ。延焼を食い止めろ」
「朱雀チーム、了解。皇都を火の海にはさせん!」
「西の龍穴(竜巻):小林中佐。機動力のある『白虎』と共に、突風の核を叩け」
「白虎チーム、出撃します。一瞬の隙も与えません!」
「北の龍穴(地震):藤岡大佐。最年長の貴官には、最も重厚な『玄武』を。寺院の崩壊を阻止しろ」
「……心得た。玄武チーム、不退転の覚悟で行こう」
霧島冴子が、出撃していく彼らの背中を祈るように見送る。
「……皆さん、必ず生きて戻ってください」
【科学技術研究所・地下ドック】
四体の巨躯が、それぞれの重輸送ヘリへと懸架されていく。
小野寺所長は、最後の一枚の装甲を叩き、静かに告げた。
「……行っておいで、四方諸神。君たちが、我々の最後の盾だ」
爆音と共に、四つの編隊が皇都の空へと飛び立っていく。警察の誇りと最新科学の結晶が、それぞれの戦場へと散っていった。
【皇都中央・高層ビルの屋上】
紫に染まった空の下。
四方へと散りゆくヘリの群れを、ナヤーは嘲笑を浮かべて眺めていた。その瞳に映るのは、守備が手薄になり、無防備な姿を晒し始めた皇都の中心部——皇城であった。
「ククク……。愚かな人間どもめ。龍穴という『楔』を打てば、必死にそれを抜きに走る。案の定、守りは脆く崩れた」
ナヤーが杖を振ると、四方の空から四天王たちの不吉な咆哮が響き渡り、大地が微かに鳴動を始めた。それは戦いの合図であり、同時に、ナヤーが皇城へと進軍するための祝砲でもあった。
「分をわきまえぬ『神の座』、余が直接引きずり下ろしてくれよう」
ナヤーの影が長く伸び、皇都の心臓部である皇城を侵食するように広がっていく。
警察が四方の龍穴で四天王と死闘を繰り広げる中、ナヤーは悠然と、自らの真の目的である「皇城への侵攻」を開始した。




