第28話:玄武(げんぶ)
皇都の北、千年の歴史を誇る名刹『北鎮大寺』。
五重塔がそびえ、国内外からの観光客で賑わうその境内に、地響きと共に巨大な影が現れた。
「……ふむ。この古き寺の柱を折る時、人間どもはどんな顔をするかな? 絶望か、あるいは神仏への恨みか」
かつての亀魔人が再構築された姿、キングタートルが重厚な足取りで大山門をくぐった。その全身は、ナヤーの呪いによって黒金色の装甲に覆われ、もはや戦車以上の硬度を誇る。
「逃げ惑え、蟻ども。貴様らの嘆きが、ナヤー様の祭壇を飾る最上の供物となる……!」
キングタートルが巨体を震わせると、甲羅から無数のトゲが弾丸のように放たれ、参道を破壊し尽くしていく。
【皇都警察庁・対魔特務局モニター室】
「敵は動く要塞です! 通常の振動弾では装甲を削ることすらできません!」
霧島の叫びに、磐城長官は冷静に、だが力強く命じた。
「……北の守護を。小野寺、最後の四方諸神を放て」
「了解。四方諸神04『玄武』、出撃します。……あれは『不退転』の重装甲機。彼とクロウが揃えば、破れぬ盾はありません」
【北鎮大寺・本堂前】
「死神クロウ、来たか。貴様の細い剣で、この私の『真実の盾』を貫けるとでも思ったか?」
立ち塞がるクロウに向かって、キングタートルが嘲笑う。
クロウが天叢雲剣を振るうが、その刃は魔人の装甲に弾かれ、火花を散らすのみ。
「無駄だ、無駄だ! ナヤー様より賜ったこの肉体、もはやこの世の理では傷一つ……何だ!?」
その時、北の空から巨大な質量が落下した。
重厚な黒い装甲。四方諸神の中で最も巨大な体躯を持つ機体、『玄武』が、大地を揺らして着地した。




