第27話:疾風(はやて)
【モール北側:白虎 vs グラスホッパー1号】
1号は笑いながら、あえて複雑な立体駐車場へと逃げ込む。
「ここなら貴様の巨体じゃ追えまいて! 押し潰されて死ねッ!」
1号が急旋回し、支柱を蹴って白虎へ体当たりを仕掛ける。だが、白虎は無機質な駆動音と共に、垂直の壁面をタイヤで削りながら走行。1号の頭上から急降下した。
「——逃走経路、遮断。目標を排除します」
白虎の腕から展開された高周波クローが、1号のバイクを前輪から後輪まで真っ二つに切り裂いた。
「なっ、俺の愛車が!? おのれ、人形風情がぁぁッ!」
転倒し、なおも跳躍して逃げようとする1号の脚に、白虎の『瞬撃』が突き刺さった。
【駅前広場:クロウ vs グラスホッパー2号】
一方、2号はビル壁面を駆け上がり、空中からクロウを狙う。
「空なら俺の独壇場だ! 潰れろッ!」
「……させない」
クロウは「天の鳥船」から飛び出し、重力を無視した軌道で2号を追う。
空中。激しい格闘の末、クロウは2号の腕を掴み、そのまま地上へと叩き落とした。
「ガハッ……馬鹿な、この俺の跳躍を上回るだと……!?」
【モニター室】
「両者、追い込みました……今よ!」
霧島の声が響く。現場の二人に言葉は届かずとも、その動きは完璧に同期していた。
白虎は1号の胸部へクローを突き出し、核を貫通。
クロウは腰の『八咫の鏡』から天叢雲剣を抜き放ち、2号を一刀両断する。
「ナ、ナヤー……様。我らの命、捧げ……ま……」
ドォォォォォォン!!
西の空に、二つの巨大な爆炎が同時に上がった。その炎さえも、皇都に渦巻く不吉なエネルギーへと吸い込まれていく。
燃え盛るバイクの残骸の傍らで、白虎が静かに立ち上がる。
そこへ、ゆっくりと『天の鳥船』を走らせてきたクロウが通り過ぎる。
白虎は通信機越しに聞こえる『天の鳥船』の鼓動のようなエンジン音に向かって、低く、力強い駆動音を一度だけ鳴らした。
クロウは速度を落とすことなく、一度だけハンドルを叩いて応え、夜の闇へと消えていった。




