第26話:白虎(びゃっこ)
皇都の西、賑わうショッピングモール周辺。
その静寂を、アスファルトを削り取るような耳障りな排気音が引き裂いた。
「ヒャッハー! 見ろよ2号、このマヌケな面を! 逃げ惑う人間どもは、まるで散らばるポップコーンだぜ!」
1号と呼ばれた蝗魔人グラスホッパーが、高笑いと共に歩行者天国へ突っ込む。
「ハハッ! 1号、どっちが多く『収穫』できるか勝負だ。ナヤー様が仰った通り、こいつらの恐怖は最高の蜜になる……!」
2号もまた、前輪を高く上げ、逃げ遅れた老人の頭上を掠めるように爆走する。
ナヤーの呪印により、死の淵から引きずり戻された彼らの肉体は、黒い脈動を打つ装甲へと変貌していた。もはや「怪人」というより、殺戮のために最適化された「魔の機械」に近い。
【皇都警察庁・対魔特務局モニター室】
「二体同時出現! 奴ら、わざと人口密集地を選んで蛇行運転しています。意図的に恐怖を煽っている……!」
霧島の報告を、磐城長官が苦々しく見つめる。
「……死や恐怖を皇都に集めるのが奴らの目的。……小野寺、西の機体を出せ」
「了解。四方諸神03『白虎』、発進。……奴らの速度を越えられるのは、白虎と、あの男の『バイク』だけだ」
【皇都・西バイパス】
「ケケッ、追っ手か! 警察の玩具が、この俺のスピードに——」
1号がバックミラーを覗き、驚愕に目を見開く。
白と銀の鋭角的なシルエット、四方諸神『白虎』が、一瞬で背後に肉薄していた。
一方、駅前広場へ向かう2号の前には、漆黒の雷鳴が立ち塞がる。
雄介が駆る『天の鳥船』。
エンジンが咆哮を上げ、黒い光の粒子を撒き散らしながら、2号の進路を力ずくでねじ伏せる。
「死神クロウか! 面白い、どちらの首が先に飛ぶか試してやるぜぇッ!」




