第24話:朱雀(すざく)
皇都スタジアム。満員の数万人が詰めかけたサッカーの親善試合は、歓声から悲鳴へと一転した。
上空に現れたのは、かつて雄介を闇から襲った蝙蝠魔人バット。再生強化されたその翼は、肉眼では捉えきれない超高周波をスタジアム全域に放っていた。
「……殺せ。隣にいる者を、憎き敵と思え……!」
バットが放つ『狂乱の音波』。
それを浴びたサポーターたちは、敵対チームのファンのみならず、家族や友人さえも標的にして殺し合いを始めてしまう。数万人の群衆が、巨大な暴力の渦へと飲み込まれていった。
【皇都警察庁・対魔特務局モニター室】
「……地獄だな。映像を遮断しろ、市民には刺激が強すぎる」
磐城長官が苦々しく吐き捨てる。
「霧島、機動隊の突入は」
「不可能です! 現場は敵味方の区別がつかない乱闘状態で、催涙ガスすら逆効果になります!」
霧島がモニターを指す。そこには、上空でより強力な『殺戮の音響』を放とうとするバットの姿があった。
「……小野寺。あれを止められるか」
磐城の問いに、通信回線から小野寺所長の声が響く。
「四方諸神02、『朱雀』。この機体には、対魔音響中和システムを試験搭載しています」
「構わん。数万の命がかかっている。出せ!」
スタジアム。狂気に染まった観客が、警備員を押し潰そうとしたその時。
空から赤い火の粉のような粒子を散らし、翼を模したスタビライザーを持つ赤い機体が降下した。
『四方諸神・朱雀』
それとほぼ同時に、スタジアムの通路を漆黒のバイクが駆け抜け、ピッチへと躍り出る。
バイクから飛び出した雄介は、深黒のクロウへと変身し、上空のバットを睨み据えた。




