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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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36. 富士登山駅伝

 三重県から戻り、8月に入ってからは延々とライブの準備だ。曲作り、ダンス練習、歌の練習、体力づくり、毎日ひたすら準備、準備、準備だ。ライブ自体は8月後半なので、まだ準備時間は多く残っている。曲作りに関しては今回のライブ用の曲はほぼ完成している。ただし、ライブ後のことも考えて新曲もどんどん作る予定だ。


「あ……暑い……」

「……お姉ちゃん……ファイトっ」


 8月に入っても太陽の猛威は衰えることを知らず、猛暑日が続いている。そんな中で前衛組は公会堂広場で体力づくりも兼ねたダンスレッスンだ。木々に覆われている場所なので直射日光は大幅に遮られているけれども、暑いことには変わりない。水分補給をしっかりとして倒れないように気を付けながら何度も何度も繰り返し型を体に覚えこませる。


「ちょっと休憩しよ」


 シャモアちゃんもパステルちゃんも覚えが良く、すでに今回のダンスについては全員が覚えられている。あとは細かい部分のクオリティを上げたり、より良く見せるための調整をするだけだ。


「ふぅ、早め早めに作ってきたから、ライブには間に合いそうだね」

「問題は体力が保つかどうかですわ」


 今回は前回と違って1曲だけという訳にはいかない。すでに山宮さんの調整によって4曲分の時間がもらえることになっている。1stシングル曲「Everyday Happy!!!」、そのカップリング曲、2ndシングル曲、そしてソロ曲。もちろん1stシングル曲以外はすべて初披露だけど、ソロ曲を誰の曲にするかは決まっていない。


「まだ時間があるんだから、少しずつ体力をつければ良いのよ」

「でもゆ~ちゃんは自分のライブもあるんだから、早めに体力戻さないとまずいんじゃない?」

「う……だ、大丈夫よ。もう8割くらいは戻ってる感じがあるから」


 ゆ~ちゃんはわたしたちのライブが終わった後、8月末に大きな野外ライブを予定していてその準備も並行して行っている。そのことについて山宮さんと話をしたところ、一番の問題はゆ~ちゃんが4月のライブ後しばらくぐ~たらしていて全盛期ほど体力が戻っていないことだと言っていた。


「地獄の特訓」

「ちょ、ちょっと走ってくるね」

「無理しないようにね~」


 ゆ~ちゃんが恐怖する地獄の特訓とやらがあるから、最悪それでなんとかなるって山宮さんは言っていた。わたしとしてはそれが発動しないようにゆ~ちゃんに頑張ってもらうだけだ。


「それにしてもこの暑い中わざわざ運動するとか……こっちの世界は謎ね」

「あはは、レッスンスタジオとか借りられれば涼しい中運動できるから良いんだけどね。都会じゃないと無いからなぁ」

「苦行だ……」

「そうそう、苦行といえば、この真夏に駅伝があるんだよね」

「駅伝?」


 そっか、駅伝は知らないか。マラソンについては以前話をしたことがあるし、スポーツニュースでも話題に挙がりやすいけど、駅伝はあんまり紹介されないからなぁ。


「複数人でチームになって、一人ずつ順番に長い距離を走るの。それで一番最初に走り切ったチームが勝ちってスポーツのこと」

「うへぇ、この暑い中長距離走るとか……苦行だ……」

「あはは、しかもその駅伝、あの富士山を走るんだよ!」


「……は?」


 理解できないって顔いただきました。

 

 シャモアちゃん、今日は言葉遣いがずっと崩れてるね。




『富士登山駅伝』

 その名の通り、富士山を舞台にした駅伝のこと。富士山を眺めながら走るわけではなく、実際に頂上まで駆け上がる。富士宮市民としては富士宮口から登らないことに不満が無くはないけれど、御殿場口を利用することでこの駅伝名物の大砂走りが見られるから仕方ないとも思っている。自衛隊の特訓成果発表会のような位置づけにもなっていて、上位は自衛隊のチームが独占。今は自衛隊の部と一般の部が分かれているけれども、総合優勝は変わらず自衛隊のチームだ。


「この国、大丈夫?」


 おおっと、国レベルで心配された。大丈夫、わたしも同じこと思ったことあるから。正気じゃないよね。


「でも見ていて面白いんだよ。今年もそろそろだと思うけど生放送はしないんだよなぁ。いつだったか録画したのが残ってるから後で見せてあげるね」

「……いいよ」

「そんなこと言わずに」




「うわ、本当に走って登ってる……」


 練習が終わって家に帰り、お風呂で汗を流した後に早速録画した富士登山駅伝をシャモアちゃんたちに見せてあげた。


「この駅伝の何がすごいって、鍛え抜かれたプロだけじゃなくて一般の人も挑戦して走り切ってるところなんだ。ほら、この参加チームのところ見て」

「あ、これってあのスーパーの名前だ~」


 そう、『一般』の中には地元のスーパーマーケットの会社も含まれている。はじめてこの名前見たとき、愕然としたもん。ブラック……じゃなかった、スーパーでこんなチャレンジする必要あるの?ってね。


「登り切ったら頂上にある神社でたすきに判を押してもらって引き返すんだ。ちなみにこの神社、浅間さんの奥宮だよ」

「見てるだけで疲れるよ~でも登り切ったから後は気軽に見られるかな」

「ふふふ、それはどうかな」

「あれ?この人さっき登ってたような……」

「そう、帰りも同じ人が同じところを走るんだ。必死に登ってクタクタでも、降りる所までが役目なんだ」

「やっぱりこの国おかしいよ……」


 走ってる人は楽しいんだから気にしちゃダメだって。

 ……楽しんでるよね?


「あ、そろそろだよ、ほら」

「ああああああああ!転んだああああああ!」


 砂場を勢いよく駆け降り、足がとられて何人もの選手が転げ落ちる。この大砂走りこそが富士登山駅伝の醍醐味。迫力のある転がり方を見て楽しむ競技なんて、滅多にないよね。


「うわ、うわわわ、わああああ」


 お、なんだかんだ言ってシャモアちゃん、こぶし握ってわくわくしながら見てるじゃないの。気に入ってくれたのかな。


「はぁ……終わった……」

「シャモアちゃんどうだった?この苦行は?」

「やっぱりこの国はどこかおかしい。でも…………面白かった」

「ふふふ、じゃあシャモアちゃんもやって」

「断固拒否する!」


 だよね~見るので十分だ。あ、でも普通の富士登山ならやっても良いかも。ただ最近は人が多すぎて行列で先に進めない時があるくらいだからオススメできないんだよなぁ。9月に入ってからの平日なら多少空くかな。



富士登山駅伝は浪漫

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