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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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24. ナガシマスパーランド 前編

 朝早めにホテルを出発。今日は一日中遊び尽くすと決めてある。バスにはわたしたち以外にも多くの人が乗っている。平日だけどもう夏休みだからか、子供たちの姿が多い。外は陽射しが強くうるさいくらいに蝉が泣いている。ああ、夏だなぁ。


 バスの中で暑さでぐったりしているシャモアちゃんや、相変わらずスマホをいじっているシェルフなど、異世界組はいつも通りの姿だ。今日の目的地は事前に伝えてあるけど、誰も知らなかったからだろうね。漫画とかで出てこなかったのかなぁ。


 バスが目的地に近づくにつれ、風変わりな建築物が窓から大きく見えるようになってくる。ミカンが最初に気づき、奇妙な風貌に首をかしげている。まだ開いてなくて動いてないからただの変な大きなオブジェにしか見えなかったのかな。


「とうちゃ~く!」


 ちょうどバスが着いたころに開園時間になった。タイミング完璧だね。園内に曲が流れはじめ、重厚な機械音も同時に鳴り響き、異世界組が何が起きたのかと目を白黒させている。


『ナガシマスパーランド』

 ナガシマリゾートと呼ばれる巨大なリゾート地の中にある遊園地。ローラーコースターの総数は日本一で、もちろんそれ以外のアトラクションも大量にある。大人向けの激しいアトラクションから子供向けのアトラクションまで幅広いラインナップ。その分園内はかなり広い作りとなっている。夏の時期は巨大な海水プールが開かれている。

 他にも隣接する地域には日帰り温泉、ホテル群、アウトレットモールなど遊園地以外の遊びどころや休みどころが数多く用意されている。また、園内には広大な広場があり野外ライブが行われることが多い。ゆ~ちゃんは経験済みだ。


 奇妙な音が気になる異世界組を引き連れてチケット売り場へ向かう。一日中遊ぶのでもちろんフリーパス。


 入口に近づくと音の正体も見えてくる。謎の巨大なオブジェと思っていたところを乗り物が高速で移動しているのだ。


「と、ととと、朋殿!?あれは拷問でござるか!?」

「いやいや、みんな楽しそうでしょ、拷問なんかじゃないよ~」

「で、でででも、悲鳴をあげているでござる!」

「あ~うん。でも乗ってる人の顔見てごらん、笑ってるでしょ」


 シェルフはかなり目が良いので見えるはず。


「ああああ、あまりの恐怖に精神が壊れているでござる!」

「え~……」


 高速な乗り物が苦手なシェルフにとっては拷問にしか見えないのかね。


「トモちんトモちん~!あれに乗るの~!乗りたい乗りたい~!」


 逆にミカンはテンションがぶちあがっている。すぐにでも駆け出しそうな勢いだ。


「よし、入ったらひとまず乗り方を覚えるために全員でとある乗り物に乗るよ。その後は自由行動ね」


 そうして全員を引き連れて中に入った。


「ゆ~ちゃんってここでライブしたとき遊ぶ時間とれたの?」

「それが全然。少しぐらい遊ばせてくれても良かったのになぁ」


 あらら、それは残念。


「だから今日すっごい楽しみなの。アレに乗るでしょ。アレにも乗るでしょ。アレにも乗りたい!」


 まわりの乗り物を指さしながら楽しそうにクルクルまわるゆ~ちゃん。こんな無邪気な笑顔、ファンの人も見たことないだろうな。眼福。


「そういえば、ジェットコースターが苦手な人っている?」

「私は大丈夫です」

「俺もOKだぜ。絶叫系は全部いける」

「乗ったことがないから分からないわ」

「あれ?横石さんって遊園地来たことない?」

「ええ、これまで行く機会が無かったわ。でも小さいころから気にはなってたの」


 あとは異世界組だけど、まぁ逞しそうな人ばかりだし、大丈夫でしょ。シェルフが少し心配かな。


 開園して間もない状況だけど、もう列が出来ていた。


『スチールドラゴン2000』

 高度、落差、速度が一押しの純正ジェットコースター。猛スピードで垂直に近い傾斜を駆け降りるんだって。どんだけ気持ち良いのかなぁ。


「終わりでござる……何もかも終わりでござる……」


 シェルフの顔が青ざめている。流石に危ない気がするなぁ。


「シェルフは乗らないで待ってる?そんなに怯えるなら無理して乗らないほうが良いよ」


 ここには絶叫系以外のアトラクションもあるし、そっちでも十分楽しめそうだしね。


「乗るでござる」

「え?」

「乗るでござる」

「だ、大丈夫?無理しない方が良いよ?」

「乗るでござる」


 大丈夫には見えないんだけど、不安だ。




 15分くらい並んだら順番が回ってきた。わたしは迷った末にミカンの隣に座った。先頭だったのと、わたしはミカンと一緒で怖いのを喜べるタイプなので一緒に笑いあえるかなと思ったからだ。


「トモちん~楽しみだよ~」

「うん、そうだね。どんな感じなんだろうね」


 体を支えるバーをセットするけど、足の置き場がなくて空中でブラブラする形なんだね。まだ動いてないのに既に少し浮いているような気分だ。みんな口数少なめで緊張感が漂ってる。やっぱり動き出す前はドキドキするよね。ちょっと後ろを見たらすみれさんの少し緊張しているようなレア顔ゲットだぜ。


 全員のバーのセットが終わり、ガタゴトとゆっくり動き出す。坂を登りながらじわじわと押し寄せてくるドキドキ感がたまらない。そして高く登れば登るほど見えてくる絶景。ナガスパは海沿いにあるので水平線が見えるんだね。そろそろ頂上かな?


「神よ……」


 久しぶりにござる言葉を忘れたシェルフの声が聞こえた。


 そしてその時は訪れる。一瞬ふわっと浮いて宙に投げ出されたかのような感覚があった直後に猛烈な重力が体を襲ってくる。そして地面に向かって猛スピードで強制的に落下させられているような感覚。これは怖い。降りきったら次は二つ目の山を登り同じように降り、旋回やトンネルや小さなコブなど様々な形のコースを激しい重力を受けながら通過してゆく。怖いけど風を切って進むのが気持ち良くて楽しい!思わず笑っちゃったら隣のミカンも大声で笑っていた。


 もう一回乗りたい!


 乗り物が止まってから満足感に浸っていたら思い出した。そういえば後ろに座っていた面々はどうだったのだろうか。大きな悲鳴は聞こえてこなかったような気がするけど。そう思い安全バーを外した後に後ろを振り返る。




 壊滅だった。


ナガスパは数年前に一回行ったことがあるくらいです。ショッピングモールが広くて立派でしたね。あと、土日だったけど午前中は結構空いていました。

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