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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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21. あなたが笑顔でいてくれるだけで 中編

「どう見ても困ってる顔してるだろうが!」


 突然の玲菜ちゃんの叫びに教室内がシーンと静まり返った。みんな私から顔をそらしてくれたから、倒れそうな気持ちが少しだけ和らいだ。それでもまだ体の硬直は解けることなく、何が起きたのか良く分からなかった。


「成績が良いやつがやれば良いんだろ?だったらあたしがやっても問題ねぇよな。一学期の期末テスト、日向の次に成績が良かったのがあたしだってこと、知らないとは言わせないぜ」


 学級委員になるのが自分で無ければ良い。そう思っている人が大多数のようで、玲菜ちゃんの激しい言葉遣いに動揺しながらもどこかほっとしている人がいたのを、動けないながらも見えていたと思う。


「ふんっ、てめえら少し待ってろ」


 そう言うと玲菜ちゃんは私のところにやってきた。


「大丈夫か?」


 その言葉に何か返したいけれども、まだ言葉を発することができないくらい体の緊張が続いていた。玲菜ちゃんが私を助けてくれたことは気付いていた。お礼を言いたくて、早く体が動いてほしいと口を開きたいと強く願った。


「しょうがねぇな、よしっ!」

「きゃっ!」


 突然玲菜ちゃんが私をお姫様抱っこして、あれほどまでに出なかった言葉が口から零れた。


「ん?まぁいいや、ちょっと出てくる」


 これまでとは違った意味で恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった。そんな私のことは気にせずに玲菜ちゃんはそのまま教室を出て私を保健室まで連れて行った。


「ちょっとここで休んでな。すぐに戻ってくるから」


 保健の先生に声をかけてベッドで休ませてもらった後、玲菜ちゃんは教室に戻っていった。


 いったい何が起こったのか分からず混乱したものの、体の硬直は解けていた。突然の学級委員指名からの玲菜ちゃんのお姫様抱っこまで、起こったことがあまりにも色々とありすぎてベッドの中で悶々とする時間が続いて、保健の先生との会話もまともに出来ていなかった。


 そうしてどのくらい経っただろうか、玲菜ちゃんが戻ってきた。


「調子はどうだ?」

「うん、もう大丈夫だと思う」

「そっか、それじゃあ戻るぞ」

「え?」

「大丈夫大丈夫」


 あの教室に戻るのは気が進まなかった。学級委員に指名されたいざこざによる気まずさとお姫様抱っこされた姿を見られた恥ずかしさがごちゃ混ぜになって逃げ出したいくらいだった。


 そんな私の気持ちを知ってか知らずか玲菜ちゃんは私の手をグイグイ引っ張って教室に連れて行き、私は躊躇う時間も与えられずに教室の中に引き込まれた。


 みんな、不自然なほど露骨に私と視線を合わせないようにしていた。


「下手くそなんだよ……」


 そんな玲菜ちゃんの言葉を聞きながら、私はゆっくりと自分の席に戻った。結局、学級委員はまた翌日決めなおすことになって、この日はこのまま解散することになった。クラス全体がぎこちない空気の中、帰りの挨拶をしてホームルームが終わった。




 何がどうなったのか良く分からないまま、とりあえず帰りの支度をしていたら、隣の女の子が私に話しかけてきた。


「あの……日向さん?」

「は、はいぃ!?」


 まさか話しかけられるとは思っていなかったので変な声が出てしまった。恥ずかしくてまた顔が真っ赤になる。


「ごめんなさい!日向さんに学級委員を押し付けるようなこと言ってしまって本当にごめんなさい!」


 ものすごい綺麗な角度で頭を下げられてしまった。


「え?え?」


 いきなりの謝罪に私は目を白黒させることしかできなかった。


「日向さんが人前に出るのが苦手だって知らなかった……怖がらせちゃったよね。本当にごめんなさい」


 後で知ったことだけど、玲菜ちゃんは私が困っている姿を見て人前に出るのが苦手では無いかと予想し、私を保健室に運んで教室に戻った後、先生に確認したらしい。だからクラスメイトもそのことを知っていた。先生は私の心の病気のことを知っていてフォローする立場だった。ただ、今回の件は私が病気を治すきっかけになるかもしれないと思って先生が暴走して止めなかったって、玲菜ちゃんが怒りながら教えてくれた。


「私も良いかな?」

「え?」


 今度は別の女の子が話しかけてきた。


「ごめんなさい!」


 そしてまた同じように謝られた。二人とも本気で申し訳ないと思ってくれているようで、表情がとても悲しげで後悔に満ちていた。みんなに悪意が無いことは知っていたし、私も逆の立場なら同じことをしていたかもしれないので、みんなを悪くは思っていなかった。そのため真摯に謝られると申し訳ない気分にすらなっていた。


「私も……」

「え?」


 三人目?ようやく頭が落ち着いて何かが変だと思い周りを見ると、誰も帰ろうとしていないし、露骨に私の方を向こうとはしていない。三人目、四人目と続く謎の謝罪の連鎖。しかもご丁寧に一人ずつやってきた。何人目だったか、みんな待ちきれなくなったのかいつの間にか私の前に謝罪待機列ができていた。もちろん目線は私の方を向いてない。


「なにこれ?」


 もしかしてクラスメイト全員が本気で私に謝ろうとしているの?しかも人に見られるのが苦手な私の方を向かないように変に気を使いながら行列作ってる。何この光景。


「ふ……ふふふ……ふふふふふ…………あははははははははははははははは!」


 シュールな行列の光景があまりにも面白くて思わず大声出してお腹抱えて笑ってしまった。みんなポカーンとしていた。ううん、玲菜ちゃんだけは一緒に笑ってた。こんなにも心の底から笑ったのは久しぶりだった。あまりにもおかしくて、クラスメイトが素直な良い人ばかりでうれしくて、心が喜びに満ち溢れた。


 笑いすぎて涙が出てきちゃった。


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