27…吐露する。
王城の庭園へ向かってミアは1人でコソコソ向かっている。
パーティの後から、ミアは時折ため息をつくようになった。
アルカル国の滞在はあと3日。
ミアの様子を心配したカイもジュゼも重度の過保護になっているので、部屋を出るミアに勿論付いて来ようとしたが、ミアは1人になりたかったのでお手洗いと言って出てきたのだ。
前日にもこっそり1人で庭園に行って、途中からビターがやって来て、1人と1羽でのんびり過ごしたのが忘れられず、先ほども抜け出てきてしまった。
ミアは2人を上手く巻けたので、満足そうにコソコソ歩いているところだ。
安心し始めた時、ミアは鼻歌まじりに廊下を曲がった。
子猫だったアーティとチョークによく歌っていた歌を。
すると、すぐそこにアーティとチョークがいた。
えっ?!
ミアはつい後退りして、先ほどあんなにウキウキしながら曲がった角を静かに後ろ歩きで戻ってしまった。
確実に目が合ってたわ……私は何やってるの。
ミアが手で顔を覆ってため息をついた時、アーティとチョークがミアの手をつかんだ。
「ミア、顔を上げて」
チョークが焦るアーティの口を押さえながら言ったけれど、ミアは下を向いたまま首を振る。
アーティが、辛そうな顔をしてミアを見た。
「ミアも知ってるように、俺たちミアより年上になったんだ」
チョークもミアの手を握って真剣な顔をした。
「もし、もしだよ。決めきれないとかでどちらも拒否しようとしてるなら、もう僕たちどちらかを選ばなくて良いよ」
ミアは2人の言葉に動揺してしまった。
選ばなくて良いなんて、必要ないみたいな言い方をされてしまったから。
もう婚約者が決まったのだろうとミアは理解して、どこを見ているか分からない目を諦めの感情で閉じた。
「冷静になってちゃんと考えた。俺たちはミアを母親として求めてない。俺たちは、ミアという女と一緒に居たいんだ。ミア、こっちを見て」
ミアは閉じた目を恐る恐る開いてアーティを見た。
アーティは真剣にミアをずっと見ている。
ミアがどんな言葉を返してくるか恐くて緊張しているような表情で。
「ミア、僕たち話し合ったんだ。どっちもミアが好きなんだけど、どっちも相手が振られるのを見たくないんだ。だから、僕たち2人といることを選んでよ」
どちらも得るなんて、ミアは考えもしなかったことを言われてしまい、ミアは顔を上げて疑うようにチョークを見た。
「……何を言っ」
「どっちかじゃなくて良い! どっちも、が良いんだ。俺たちを嫌ってはいないだろ。俺たちと一緒にいてくれないか」
ミアの言葉に被せるように、アーティが懇願のような焦っているかのような言葉を投げた。
スフィル辺境伯邸の庭園で頑なに拒否されたのが最後だったので、アーティはまた拒絶されるのが恐いのだ。
ミアは我慢しきれず一粒の涙を落とした。
心の底で喜んでいる自分を、2人と一緒にいたいと思う自分を、ミアは受け入れる心の準備なんできていない。
この気持ちは何なのか。
分かっているけれど、ミアは答えを認めるのが恐くて止めてしまう。
そんなのダメでしょ。
「待って……」
「僕たちは十分待った」
「僕やカイのいないところで口説くの、やめてくれる? ミアの、護衛兼付添いで、来てるんだから」
急いで来たのだろう息を切らしたジュゼが、アーティとチョークからミアを引き離した。
「ジュゼ、俺たちはミアを皇太子リカルドの妃に迎えたいんだ」
アーティはジュゼに正面から真剣に伝えた。
思いがけない言葉に、ミアは目を丸くしてアーティを見ている。
「婚約者候補はどうするの? 2人でミアを? 常識的にどうなの。無責任なこと言ってないで、婚約者を早く選定したら。次は側室候補もね」
ジュゼがミアを確認すると、ミアは側室候補という言葉にも動揺して動けなくなっている。
もしアーティとチョークと一緒にいられたとしても、側室がいるのよね。
きっと耐えられない……
アーティとチョークに見せつけるように、ジュゼはミアの頬にキスをして、近くの部屋へ入ろうとした。
「持てっ。俺たちとミアの話はまだ終ってない。連れて行くな」
「側室は持たない。ジュゼは関係ないから、引っ込んでて」
ジュゼが珍しくイラつきを隠さずため息をついた。
「すぐに喧嘩腰でこられると、相手は不快でしかないって知ってる? 分かっていてもそうでなくても、その振る舞いは一国の皇太子として愚かだとしか言えない。ちゃんと教育は受けてる?」
いつになく話し倒してくるジュゼ。
相当怒っていることを、ミアもアーティもチョークも感じ取った。
ジュゼはもう1つため息をついて、廊下にいるアーティとチョークへ振り返った後、ミアへ近寄った。
そして優しく耳元でささやいた。
「ミア、思い出をちょうだい」
ジュゼはミアを部屋へ引き入れてミアの首元にキスをし始めた。
「ジュゼっ?! 今? 待っ……てっ」
「うん、今が良い」
ジュゼは無表情のまま、扉を閉めた。
怒りながらも傷付いた顔のアーティとチョークと目を合わせながら。
そして、魔法で鍵をかけた。
「ミア、良い?」
ミアはジュゼを見て、腹をくくった顔をして、うなずいたが……
「えっ?! ジュゼ、待って待って?!」
ジュゼがミアの服をはだけさせたので、ミアは必死に胸元を握りしめている。
「何?」
ミアだけがかなり焦っていて、ジュゼは通常運転だ。
「これ、約束……??」
「うん、出ている肌にキスさせて」
出ているじゃなくて、ジュゼが今出したわよ?!
ジュゼは戸惑うことなく、ミアの首にも肩にも胸元にも優しくキスをし始めた。
まるで今の瞬間を考えて待っていたかのように。
「ひゃぁっ、ちょっ……あっっ」
途中からキスではなくなってきているそれを、ミアはどう受け取ったら良いか分からない。
自分の真っ赤な顔を隠したかったけれど、ミアは今胸元を握りしめているからできないし。
「ミア。ミアが思っているより、僕はミアを好きなんだよ。これくらいさせてくれないと、手放せない。思い出にできない」
ジュゼが苦しそうな悲しそうな顔をしたのを見て、ミアも胸が苦しくなって涙がこぼれた。
「ジュゼ、ごめ」
ジュゼがミアの言葉を遮るようにキスをして抱き上げて、ソファまで優しく運んだ。
ふわりと一緒に座る。
もうこの美人は普通にキスしてくるのね。
「聞きたくない。でも、ミアを困らせたくない。だから、約束通り、もう黙ってて」
再びジュゼは、ミアの肌に顔を埋め始めた。
成長しても変わらず真っすぐな感情をミアに向ける双子を見て、
嬉しそうなミアを見て、
動揺するミアを見て、
本当に悔しくて。
ちょっと意地悪したくなったんだ。
だから、こんなタイミングで。
ミア、ごめんね。
ありがとう。
諦めきれないことはわかってる。
だから、僕らしく静かに、
ずっとずっと、愛してる。




