64.アンチドーテ!
「じゃあ、取り敢えず……」
ボクは、トモエに渡した時と同様に、物質創製魔法で、しょい籠一杯分のクリペアタを出した。
ただ、物質創製魔法のことは、周りには内緒だ。
ボクの不注意で、ジノンにはバレちゃったけど、他の人達には知られたくない。
なので、ここでは飽くまでもアイテムボックスから出した振りをした。
「スゴイ! こんなにいっぱい! こんなの初めて!」
リマが、目を輝かせながら、ちょっと危ない言葉を発していたけど、これは、飽くまでも大量のクリペアタを見た感想だ。
Hなこととは、多分、関係ない。
「これだけあれば、大量に増やせると思う。これを、今すぐ使っちゃうんじゃなくて、先ず、鉢か何かに葉挿しするんだ。根が出たら畑に移植する」
「そんなこと出来るんだ! でも、色々準備をしている間に萎れちゃわない?」
「じゃあ、ボクの方で保管しておくよ。ただ、これを全部、ギルドで買い取れる? とんでもなく価格が高騰しているみたいだし、結構な額にならない?」
「……だね。じゃあ、畑の件とかも含めてギルド長と相談しておく。でも、これだけの量を何処で調達したの?」
この世界の何処を探しても生えていなくて、誰も採取できない状態なのに、いきなり、しょい籠一杯分だからね。
その前にも、同じだけの量をトモエに渡しているわけだし。
何処で手に入れたかは、誰だって気になるだろう。
答えられないから、誤魔化すしか無いんだけど。
「ええと、それは秘密」
「……まあ……、たしかに特殊な情報は冒険者にとって貴重な財産だもんね」
「まあね」
「それに、女は秘密の一つや二つ持っているモノだし」
「ええと……」
今回のは、ちょっと意味が違うような気がするんだけど?
それで、ボクは一瞬、言葉に詰まった。
たしかに、ボクが物質創製魔法で作り出しているわけだから、秘密なのはクリペアタの生息地じゃなくて物質創製魔法の方が正しい。
ただ、今回は、会話上、秘密なのはクリペアタの生息地ってことになる。
有名な言葉で、
『女は秘密を着飾って美しくなる』
とかあるけど、少なくとも、その秘密って植物の生息地じゃないよね?
物質創製魔法でもないと思うけど。
とは言え、ここで突っ込んでも仕方が無いので、ボクは、
「そ……そうだね……」
と言いながら苦笑した。
「じゃあ、ルカの方で持ってて。ただ、他のところには絶対に売らないでね。うちのギルドで買えるだけ買いたいから」
「了解」
ボクは、しょい籠ごとクリペアタをアイテムボックスに収納した。
アイテムボックス内なら時間が停止しているし、当然、劣化しない。
仮に劣化しても、新しいのを作ればイイだけだ。
「ただ、ギルド間通信の情報からだと、十日くらい前に、ルカ達ってハイテイ市にいたんでしょ?」
「うん」
「そこから、ココに戻ってくるまで、何処にいたの?」
「馬車に乗ってたんだ」
「馬車? 転移魔法は使わなかったの?」
「たまには、景色が見たくてさ」
「そうなんだ。でも、ハイテイ市で色々事件があったみたいね。レッドドラゴンが現れたりクラーケンが現れたり」
「まあ、あったね」
「あと、超美女のストリーキングがあったって話も聞いたよ」
なんか、リマの視線が痛い。
もしかして、それがボクだって知っていて、カマをかけているんだろうか?
「そ……それは知らないけど」
「そうなんだ。私は、てっきりルカがやっちゃったんじゃないかって思ってたんだけど。超美人だし、なんとなく脱ぎっぷりも良さそうだから」
別に、この世界に来て、人前で脱いだりしていないと思うんだけど……。
この間の件は例外として。
『脱げ脱げ』
と言う輩はいるけど。
『取説君:ステータス画面の表記の意味は、次の通りです。
STR:Strippingの略です。ここでは『脱ぎっぷりの良さ』を意味します。
人間の場合、極めて高い人でも100前後が上限となります』
たしかに、ボクのSTRは常人よりも高くて……300もあるけどさ……。
でも、普段から脱いでいるわけじゃないのに(今回は、やっちゃったけど)、すぐに脱ぐイメージを持たれているってヒドくない?
ちょっとオチ〇コ出て……じゃなくて、落ち込んでくる。
「なんで脱ぎっぷりがイイって思われてんの?」
「いや、何となく」
「でも、所構わず脱いだりしていないけど?」
「たしかに、言われてみれば、そうなんだけど……。何でだろ?」
ふと思ったんだけど……。
もしかすると、STR値が高いってことが、みんなに感知されているのかも知れないな。
それで、ボクが、すぐ脱ぐって勝手にイメージされているんじゃないかな?
だとすると、ヤロウ共が、
『脱げ脱げ!』
とか言うのも、その影響か?
HP……ハレンチパワーみたいにSTR値も調節できるとイイんだけど。
丁度この時だった。
突然、若い男性冒険者がギルド内に駆け込んで来た。
「誰か、治癒術師はいないか? 仲間が魔獣の毒攻撃にやられて」
「私、アンチドーテできます!」
一人の杖を持った若い女性冒険者が、そう言いながら立ち上がった。
ボクがホウテイ市に来たばかりの時には見かけなかったから、多分、最近冒険者になったんだと思う。
ただ、この時、ボクの中では、毎度の如く、しょうもない機能が働いていた。
そして、悪気なく、ついつい、その女性冒険者に聞いてしまった。
「アンチ童貞って?」
「えっ?」
「童貞だからって、アンチになっちゃ可哀相だよ。ただ、出会いが無かったり、勇気がちょっとだけ足りなかったりしていただけなんだからさ」
「???」
その女性冒険者は、目が点になっていた。
『取説君:ルカ‐0721号は、聞いたり読んだりした単語を即座に下ネタに変換することが多々あります』
すると、リマが、
「一刻を争うんだから、サッサと行ってあげて」
と、その女性冒険者に声をかけ、軽く背中を叩いた。
これで女性冒険者は、ハッとした顔をした。
「あっ! はい!」
そして、その女性冒険者は、助けを求めてきた男性冒険者と一緒に、大急ぎでギルドを走って出て行った。
「もう、ルカったら。このギルドの全員が、ルカのエロボケに慣れているってわけじゃないんだから」
「えっ? エロボケしてた?」
「まあ、自分じゃ気付かないんだろうけど。彼女はアンチ童貞じゃなくて、アンチドーテ、つまり解毒魔法が使えるってこと」
「ああ、そう言うこと!」
なるほど。
それなら、たしかに毒攻撃のことと話が通じるか。
なんで、いきなり、
『アンチ童貞』
が出て来るのかなって思ったよ。
「あと、ルカは、Sランク冒険者なんだからさ。新人冒険者とかだと、ルカに何か言われたら緊張しちゃうから。その辺は、自覚してね」
そう言えば、ボクってSランクだったっけ。
全然自覚が無いけど。
むしろ、周りからは、同じSでもS嬢のイメージを持たれている気がするし。
「分かった。気を付ける」
でも、口ではそう言ったモノの、きっと似たようなことを今後もやらかすだろう。
そう言った機能が搭載されている以上、自力では回避できないんだよね。
この後、ボクとジノンは掲示板に向かい、依頼を探した。
しかし、これと言って魅力的な依頼は無かった。
この日は、依頼を諦めてギルド近くの宿にチェックインした。
再び、ここに長期宿泊することになると思う。
勿論、ジノンとは別室だ。
と言うか、ボクは個室だ。
でないと、日課が出来ないからね。
『取説君:ルカ‐0721号のフェロモン魔法を最大値から下げた場合、それにより放出できなくなったエネルギーを別の形で放出する必要が生じます。代行処置として24時間毎に1時間、ルカ‐0721号の陰部に何かを挿入してください。この際、男性器を用いることが推奨されます』
❖ ❖ ❖
その頃、メンチン大森林のド真ん中に建てられた小屋の中では、魔導士エロスが次なる発明のために日夜奮闘していた。
「聖女バージン……じゃなかった、聖女バージョンのルカに逃げられて約半年。やっと材料も揃って来たことだし、そろそろ制作に取り掛かるとするか。今度は、賢者バージョンなんてのはどうだろう?」
勿論、作っているのは、女性の姿を模った等身大の自律式性魔玩具である。
これを使って何か行動を起こそうとか言うのではない。
自分のナニが行動を起こしたいだけである。
飽くまでも自分用だ。
「ただ、賢者だと凄い魔法が使えないとイケないか? 相手の服を一瞬で切り刻んで全裸にさせるためってことでウィンドカッターはあってもイイが、ファイヤーボールはどうするかなぁ。まあ、相手の服を一瞬で燃やして全裸にするってことでイイか。あと、アイスランスも賢者だから使えるようにしたいところだが、それをHに使える理由が見つからないなぁ。いや、しかし、先端を尖らせずに大人のオモチャ(女性用)として使える棒状のアイスランスを出すと言うのはどうだ?」
それは、既にアイスランスとは言えないのではなかろうか?
ファイヤーボールもウィンドカッターも、服だけで済むとは思えないが……。
いずれにせよ、材料が揃っているのだ。
構想が固まり次第、ルカの後継機である賢者バージョンは、猛スピードで製作されることだろう。
大きな災いと共に……。




