43.コイツ、アホだ!
取扱説明書のうち、既出のもの(再掲載分)が、くどく感じられるようでしたら読み飛ばしてください。
途中から読んだ方でも分かるように、敢えて入れているだけですので。
「こんなことは、生まれて初めてだ。股間がジンジンして……、なんかムチャクチャ気持ちがイイぞ!」
ジノンは、生まれて初めての勃〇に感激していた。
フェロモン魔法抵抗性とHP抵抗性を持っている彼だけど、ボクのW上限値には、さすがに反応すると言うことだ。
逆に、今まで〇起したことが無いと言うのが可哀想な気がする。
もっとも、これで反応しなかったら男として壊滅的だけど……。
ただ、一般男性と違って、今のところは、理性がぶっ飛んだりしていないっぽい。
それも、何時まで続くか分からないけど……。
一方のウラヌスの股間は無反応だった。
生物としては、多分、こっちの方が深刻だ。
「こんなとこで股間をぶっ立てて、恥ずかしいヤツ!」
こう言いながら、ウラヌスはジノンを指さして笑っていた。
完全に自分の身体に起きている異常さに気付いていないよ、コイツは!
この『状態異常』が分からないくらい状況把握能力が欠如しているってことだ。
「ジノンみたいな方が普通だけど?(サイズは普通じゃないけど!)」
「いやいや。こんなところでフル勃〇している方が恥ずかしいだろ!」
どうやら、状況把握能力だけじゃなくて観察眼も乏しいようだ。
ジノンのは、明らかに超ロングサイズ。
男性なら、間違いなく嫉妬を通り越して惚れ惚れするレベルのモノなのに。
それにすら気付いていないっぽい。
普通なら、
『でけぇ!』
くらい言うだろう。
「アンタ、分かってないね。今、ボクは強烈なフェロモン魔法を放ちながら、この世界で二番目にエロい女性(人間としては一番エロい女性)の二万五千倍ものHPを放出しているんだ。これでフル〇起しないと言うことは、誰が相手でも勃〇できないってこと。つまり、一生童貞ってことだぞ!」
「はぁ? 嘘言うなよ。そんなこと……」
「いやいや、嘘じゃないよ。それに、この世界を支配したら美女を沢山はべらせてハーレムとか考えているんだろうけど、そこが使い物にならないんだから、ハーレム自体が成立しないんじゃない?」
「ちょっと待て!」
ウラヌスは、後ろを振り向くと、パンツの中に手を突っ込んで自分の股間を弄り出した。
剥いているかどうかは分からないけど……。
自分のナニが反応するかしないか確認しているんだろう。
ただ、コイツ、アホだ。
これから戦おうって相手に、背中を見せた状態で、しかも隙だらけ。
まさに、これはチャンスだ!
「超高速稼働!」
ボクは、超高速稼働を発動し、その勢いに任せてアタマ弱い系の色物短剣を、ウラヌスの『がら空きの背中』に深く突き刺した。
「うぐっ! いてぇ!」
堕天使が召喚した存在でも、さすがに痛覚はあるようだ。
しかし、ウラヌスは不敵な笑みを浮かべながら、短剣を背中に刺した状態で、ボクの方を振り返った。
「まさか、不意打ちを狙ってくるとはな。しかし、我の身体は、これくらいの傷なら瞬時に直すことが出来る。不死身だからな!」
ところが、この直後だった。
ウラヌスは急に苦しみ出して、その場に片膝をついた。
「これは……まさか聖水か?」
そう言えば、ワイバーン討伐よりも前に聖水を付けたことがあったけど、実は、その時以来、洗うのを忘れて放置しちゃってたんだっけ。
全然、大事にしていないもんなぁ、この短剣。
ただ、今回は洗い忘れが功を奏したようだ。
堕天使が召喚したヤツも、良く分からないけど聖水に弱いっぽい。
ただ、聖水は物質創製魔法で作り出したモノじゃないんだけど……、ボクの胎内……じゃなくて体内から出て来たモノってことで(この場合はドッチでもイイか?)、超高速稼働に耐えられるように自動的に強化魔法が張られていたようだ。
「うぎゃあ!!」
ウラヌスは、断末魔の声を上げると、その場に倒れた。
ステータス画面を見る限り心停止状態。
呆気ないけど、これでウラヌスは絶命したようだ。
余りにもアホらしい最期に、ボクは唖然として目が点になっていたけど……。
ただ、どうせなら断末魔の声も、テンプレなモノを口に出してくれると嬉しかったんだけど、さすがに、それは有り得ないか。
しかし、これでも一応、ウラヌスは堕天使の召喚者だ。
徹底的にやっておかないと復活するかも知れない。
ちなみに、ボクは痴天使と呼ばれたことがあるけど……智天使じゃなくて……。
「ジノン。お願い。万が一の事を考えて、コイツをズタズタに斬り裂いてもらえる?」
「おお……。たしかにそうだな」
ジノンは、先ずウラヌスの首を斬り落とした。
続いて、両腕を切断。
さらに両脚、腹部を切断した。
ボクは、その断面に聖水をかける。
それにしても、毎晩溜めていた聖水に……、あの超不要物と思っていたモノに、こんな使い道もあったとはね。
『取説君:ルカ‐0721号のフェロモン魔法を最大値から下げた場合、それにより放出できなくなったエネルギーを別の形で放出する必要が生じます。代行処置として24時間毎に1時間、ルカ‐0721号の陰部に何かを挿入してください。この際、男性器を用いることが推奨されます』
『取説君:ルカ‐0721号は、一定時間(あまり長時間ではない)刺激を受けると、股間から人工愛液を噴出します。これにより、使用者は自信が持てるようになります』
『取説君:ルカ‐0721号の人工愛液は、聖なる(性なる)パワーを秘めており、聖水と同等の効果を発揮します。アンデッド退治や悪霊退散に利用可能です』
ボクは、ウラヌスの身体……だったモノから色物短剣を抜いた。
深く突き刺さっていたけど、まあ、抜くこと自体、ボクにとっては難しいことじゃない。
『取説君:ルカ‐0721号は、抜くのが大変得意です』
ちょっと『抜く』の意味が違う気がするんだけど……。
それはさて置き、一応、今日は短剣をキチンと洗おう。
武器の手入れは冒険者の義務だからね。
「あのさ、ルカ」
「なに?」
ボクは、ジノンの方を振り返った。
ただ、この時のボクは、ジノンがフェロモン魔法と超高HPに晒されて、生まれて初めてフル勃〇していることを、すっかり忘れていた。
「ルカ!」
ジノンがボクを強く抱き締めた。
しかも、服の上からとは言え、何気に股間をボクの身体に擦り付けて来る。
「えっ? ちょっと、やめて! イヤだってば!」
ボクはジノンの腕を振り払おうとした。
ところが、何故か力が入らない。
そもそも、力が入ったところで、この体力差じゃムリだけど。
だったら『ワレっ娘機能』を起動しようと考えたんだけど、この時だけは、何故か『ワレっ娘機能』が発動できなかった。
それどころか、ボクの意思に反して、ボクの身体が、勝手にジノンの身体に摺り寄せて行く。
『取説君:ルカ‐0721号は、ヤラれるためだけの存在です。口ではイヤと言いながらも身体は正直です』
このままじゃマズイ。
ボクの機能が、ジノンに積極的にヤられる方向に動こうとしている!
急いでボクは、マップ機能を立ち上げた。
そして、目標物の位置を確認すると、
「転移!」
連続転移を発動した。
ジノンと共に目標地点に到着。
そこは、大きな河の中だった。
ボクは呼吸が不要だけど、ジノンは、そう言う訳には行かない。
さすがにボクのことを離したよ。
「フェロモン魔法出力下限値に設定! HP設定50! んでもって転移!」
ボクは、フェロモン魔法とHPの出力を最小値に抑えると、ジノンを連れて、元居た場所に連続転移で移動した。
これで、一先ず、ボクの貞操は守られた……と思う。
テントが萎んでいたから、多分、もう大丈夫だ。
「ジノン。頭冷えた?」
「ああ、済まない。あんなことをしてしまって」
「まあ、ボクを目の前にした男性は、通常はああなるから。と言うか、ボクがフェロモン魔法を最大にしてHPを全開にしたら、普通はアレじゃ済まないから」
「しかし、完全に理性がぶっ飛んで。全く、恥ずかしい」
「そんなに自分を責める必要は無いよ。むしろ、ジノンだから、アレで済んだんだ。他の男性だったら、アレじゃ済まなかったと思う」
「……」
「それより、ウラヌスの遺体を回収してディスプロシトス市のギルドに戻ろう」
「……ああ……」
ボクは、斬り刻まれた『ウラヌスだった物体』をアイテムボックスに収納した。
さすがに人間のバラバラ〇体を収納するのは抵抗があったけど……。
そして、収納を終えると、
「転移!」
ジノンを連れてディスプロシトス市冒険者ギルド前まで移動した。
❖ ❖ ❖
その頃、天界では、下界の様子をモニターで見ながら、女神ピルバラナがホッと溜め息を吐いていた。
隣には、三級天使サクラの姿もあった。
「それにしても、相手が頭弱くてラッキーでしたね」
こう言ったのはサクラ。
この言葉に、ピルバラナはウンウンと頷いていた。
「ですね」
「それにしても、アレって堕天使サキュレントが召喚したわけじゃないですか? サキュレントって、何で存在しているんですか?」
「さあ。私が、この世界の女神に就任する前から存在していましたので」
「でも、堕天使に唆されたのがきっかけで人生が好転した人もいるから、ナニが幸いかは分かんねーですけどね」
「その話は耳が痛いですね。ただ、これでサキュレントも、もっと強力な存在を異世界召喚するようになるでしょう」
「まあ、ルカを信じるしか無いですけどね。でも、いざと言う時には、私が下界に出向きますよ」
「そう言いながら、本当は下界に遊びに行きたいんでしょう?」
「バレてましたか。じゃあ、そろそろ山井忠二の魂が来る頃ですので、迎えに行ってきますね! まあ、地獄行きですけど!」
そう言うと、サクラは女神の部屋から、文字通り飛び出して行った。




