42.第一種接近遭遇!
ディスプロシトスの街の冒険者ギルドは、騒然としていた。
ホルミアの街まで、ウラヌスが接近しているのだから当然と言える。
そんな中に、ボク達は足を踏み入れて行った。
受付にいるのは、男性職員だった。
いつも女性職員が受付にいたから、もの凄く新鮮に感じる。
なので、今回はボクが受付に状況を確認する。
少なくとも塩対応されることは無いとの判断だ。
「アサスズメ王国冒険者ギルド本部経由で依頼されて来ましたルカとジノンです」
「はぁっ? お嬢ちゃんが?」
ただ、どうやら考えが甘かったみたいだ。
どう見てもボクの場合は、一般的には戦闘要員じゃなくて、Hバトル要員にしか見えないからね。
受付の男性職員は、ボクのことを完全に舐めた目で見ていた。
戦闘力なんて無いだろうって決めつけた感じだ。
ついでに、全身を舐め回すような視線も送って来たよ。
殺意を持った対応じゃないけど、これはこれで困ったちゃんだ。
「これでも、一応、S級冒険者ですので」
ボクは、ボクとジノンの冒険者カードを職員に提示した。
これを見た途端、職員の態度が変わった。
「し……失礼しました!」
「ええ、大変失礼ですね。ディスプロシトス市の冒険者ギルドに失礼な職員がいると、ギルド本部に報告しましょうか?」
「それは勘弁してください」
「では、今後は見た目や先入観で人を判断しないようお願いします」
「はい。肝に銘じます」
そのギルド職員は、まるでボクを拝むように両手を合わせていた。
一応、これでマウントは取れたと思うので、イジメるのは、これくらいにしておこう。
とにかく、現状確認が必要だ。
ボクは、その男性職員に質問をした。
「それで、ウラヌスがディスプロシトス市に侵入するのは何時くらいになると予想していますか?」
「恐らく、三~四日後になると予想しています」
「ウラヌスに攻撃を受けた街の人達は、どうなっていますか?」
「全滅。皆殺しです」
「では、ウラヌスの賛同者達が、ソイツに同行していると言うのは?」
「ありません。皆殺しですので」
同行者の数が多ければ、転移魔法とか飛翔魔法での移動が困難になる可能性がある。
ボクの場合だって、同行者は100人が限界だからね。
その場合は、魔法に頼らず、徒歩で移動せざるを得ない。
『取説君:ルカ‐0721号は、男性だけでしたら異性愛者同性愛者を問わず、転移魔法で同時に100人運べます。これは、乗っても大丈夫な数と同じです』
しかし、ウラヌス一人での移動なら、それらの魔法で移動するのが普通だろう。
となると、ウラヌスは、転移魔法も飛翔魔法も使えない可能性が高い気がする。
天空の覇者の名を騙るくせにね。
ただ、敢えて徒歩で遅く移動することで、次の街の人達の不安を煽って遊んでいる可能性も否定できない。
万が一、中二病をこじらせていたら、そう言う発想だって有り得る。
なので、今は、一応、ウラヌスが転移魔法や飛翔魔法が使える可能性を視野に入れておいた方がイイだろう。
「では、明日の朝、ボク達はホルミア方面に向かいます。敢えて、ディスプロシトス市に侵入してくるのを待つ必要も無いと思いますので。むしろ、この街を戦闘の場にした方が住民に被害が出ますし」
「そうですね。分かりました。他の冒険者達の同行は?」
「先ず、ボクとジノンの二人で行きます。応援が必要になりましたら転移魔法で戻ってきますので」
「了解しました。ただ、万が一のこともありますので、街の方では非常線を張らせていただきます」
「是非、そうしてください」
ボク達は、受付の人に会釈すると、そのままギルドを後に……しようと思っていたんだけど、急にヤロウ共がボクの周りに集まって来た。
ボクが受付と話し終えるのを待っていたみたいだ。
「姉ちゃん綺麗だね。俺と付き合わない?」
「俺と突き合おうぜ!」
「俺と結婚して!」
「俺の子を産んでくれ!」
ある意味、よくあるパターンだ。
でも、この様子を見ながら、ジノンは不機嫌そうな顔をしていた。
やはり、エロ男子達がパートナーに言い寄ってきて面白くないんだろう。
ただ……、このエロ男子達は、ボクがSランク冒険者だとは思っていないんだろうな。
「おい。行くぞ、ルカ」
そして、ジノンはボクの手を引いてギルドを出た。
エロ男子達は、この時、初めてジノンの存在に気付いたようだったけど……。
コイツ等はコイツ等で、イケメンでHP98のジノンの存在を無意識に視界からカットしていたようだ。
❖ ❖ ❖
翌朝、ボクとジノンは、ボクの転移魔法でホルミア市とディスプロシトス市の中間地点まで移動した。
ここでウラヌスが来るのを待つ。
それから数時間後、前方から一人の未成年男性が、コッチに向かってゆっくり歩いて来る姿をボク達は捉えた。
左目には十字架の模様が描かれた眼帯をしているし、右腕には包帯が撒かれている。
如何にも中二病をこじらせたって感じだ。
ソイツのステータス画面が開いた。
ボクのステータス覗き見スキルが発動したんだ。
ステータスには、以下の記載があった。
『本名:山井忠二
トリフィオフィルム世界での通り名:ウラヌス
出身:日本(地球)
年齢:十四歳
召喚者:堕天使サキュレント
特記事項1:幼少期から、自分が特別な人間であると信じて疑わない典型的な中二病患者。悪い意味で特殊である。美女を好む。
特記事項2:童貞。トリフィオフィルム世界に召喚されたのは、ルカ‐0721号が転生する一か月ほど前。ルカ‐0721号と戦うことを予見した堕天使サキュレントによって、『任務全うのため女性の色香に惑わされないようにする』との理由でフェロモン魔法完全抵抗性かつHP完全抵抗性の身体とされた。そのため、HP2500000でも永遠に反応しない』
よりによって、日本人かよ。
しかも、名前からして中二病だし……。
それにしても、完全抵抗性ってナニ?
多分だけど、ボクがフェロモン魔法強度を最大にしても、HPを上限まで上げても、絶対に反応しないと言う意味だろう。
その若さで既に完全な不能にされているとは。
多分、本人は、それが如何に深刻なことかを理解していないだろう。
多分だけど、美女を好むってことは、この世界を征服した後は、美女をはべらせてウハウハとか考えているかも知れない。
しかし、そう言った希望を持っていたとしても、それは、もはや叶わない。
ナニが既に使い物にならないんだから。
山井忠二……一応、ここではウラヌスと呼んでやるか。
ウラヌスが、ボク達の存在に気付いた。
「左目に封印された漆黒の力が解放される。うう……右手が疼く」
彼は、そう言うと、あいさつ代わりと言わんばかりに強烈な一発……巨大なファイヤーランスをボク達に向けて右手から放って来た。
Hな方の一発は、二度と放つことが出来ない身体だけど……。
それから、ボクと会ったら、普通の男性の場合、疼くのは右手じゃなくて全身か、もしくは股間だと思うんだけど。
『取説君:ルカ‐0721号は、エロ要素の入ったオヤジギャグが好きです』
ボク達は、ファイヤーランスを避けた。
特段、ファイヤーランスは追尾式とか言うわけではなく、そのまま一直線に突き進んで行ったんだけど……。
ただ、そのファイヤーランスは、後方の山に直撃。
その衝撃で、山が半分消失した。
もの凄い威力だ。
さすが、魔人と比喩されただけのことはある。
突然、背後から、恐ろしいほどの殺気を感じた。
後を振り返ると、そこにはウラヌスの姿があった。
まさに、第一種接近遭遇!
普通に走ったところで、この一瞬で、ここまで来られるとは思えない。
何らかの魔法手段で移動して来たと考えるのが妥当だ。
「まさか、一瞬でここまで来るとはね」
「我は飛翔魔法を使えるからな」
一応、天空の覇者を騙るだけはあるってことか。
もしかしたらとは思っていたから、特段、驚きはしなかったけど。
「だったら、何故、街から街への移動に飛翔魔法を使わない?」
「制圧前進って知ってるか? ゆっくり歩いた方が、次の街の連中が恐怖に怯えるだろう? その方が楽しくないか?」
概ね予想していた通りの答えだ。
多分、この世界に召喚された際に強大な力を堕天使から授けられて、中二病症状が悪化しちゃったんだろう。
人間、こう言う風にだけは、なりたくないものだ。
「悪趣味だね」
「我は、この世界の支配者だ。何をしようと構わないだろう?」
「構うだろ! いったい、何を考えているんだ?」
「そんなことより、お前、今まで我が出会ってきた誰よりも美しいな。我の妻第一号にしてやろう。我のメガネにかなった初めての存在だ。大変名誉なことだぞ」
さすが、ステータスに、
『美女を好む』
と記載されていただけある。
なんだかんだで、早速、ボクの、この容姿に魅かれたか。
だったら、そっち方面で揺さぶってみるか。
「フェロモン魔法全開! HP上限値まで上昇!」
ボクは、フェロモン魔法強度とHP値を初期値に戻した。
つまり、共に最大値だ。
すると、ボクの背後で、
「何だ、こりゃぁ!」
とジノンが大声をあげていた。
股間に見事なテントを張っていたよ。
『取説君:ルカ‐0721号は、服の上からでも正確にサイズを図ることが可能です』
『取説君:ルカ‐0721号は、長さ30センチまで受け入れ可能です。太さは、一般男性の頭くらいまで許容します』
しかも、長さ30センチに達する巨大サイズ。
まるで、測ったかのようにボクを使用できるギリギリのサイズだった。
って言うか、そこまでのサイズのヤツは、普通いねえぞ!




