36.仲間?
「君がルカ君か」
「はい」
「儂がアサスズメ王国冒険者ギルド本部長のズヴァルトだ。今日は、是非、君の本気を見せてもらいたい」
「はい。頑張ります」
見せてやるよ、ボクの本気を!
後悔すんなよ!
とボクは心の中で中指を立てながら言っていた。
「私がギルド副本部長のメラース。今日は楽しみにしてるよ」
「はい」
ボクも楽しみにしてるよ。
三人の失態に。
「俺は王都リンシャン市冒険者ギルド長のノワール。まさか、こんな綺麗なお嬢さんがワイバーンを討伐するとは、人は見かけによらないモノだ。是非、我々の前で、その勇姿を見せて欲しい」
「はい」
勿論、見かけ通りの方の勇姿も見せてあげるよ。
ワイバーン討伐後、試験会場でね!
「では、ルカ。先ず、ワイバーンのいるところまで移動したいんだが、ここにいる全員を転移魔法で移動できるか?」
こうボクに聞いて来たのは、ギルド長のレッド。
ボクが転移魔法を使えることをズヴァルト達に見せたいんだろう。
「可能ですけど、連続転移ですので体調不良を起こす可能性がありますけど?」
「その件は本部長、副本部長、王都ギルド長にも既に報告済みだ。その上で連続転移をお願いしたい。勿論、その後の治療も併せてだな……」
つまり、ボクにピンヒールで、この三人を踏ませたいってことだな。
ギルド長としても、仲間が欲しいんだろう。
「分かりました。では、皆さん。準備はよろしいでしょうか?」
「特に問題はない」
「では行きます。転移!」
ボクは、御一行様……ズヴァルト、メラース、ノワール、レッド、ベルデ、ジノン、リマを連れて連続転移に入った。
ルートは、前に行った(イッたじゃないよ!)時と完全に同じ。
中間地点のチェックも既にしてある。
一分もしないうちに目的地に転移終了。
それと同時に、ジノンが簡易結界を張った。
万が一、ワイバーン共が襲ってきても大丈夫なように安全確保したってことだ。
ただ、連続転移を終了した直後、レッドとリマは勿論だけど、ズヴァルト、メラース、ノワールも体調を崩して顔が蒼褪めていた。
やはり、急発進急ブレーキの連続みたいなものだから、結構、身体に来るようだ。
元気なのはジノンとベルデのみ。
ジノンが大丈夫なのは想定の範囲内だけど、ベルデも身体付きから想像した通り、かなり頑丈なようだ。
ボクは、アイテムボックスからピンヒールを取り出すと、それに履き替えた。
そして、先ずゲストの中で一番偉いズヴァルトに、念のため確認した。
「治療してもよろしいでしょうか?」
「頼む……」
「方法は御存じでしょうか?」
「分かっている。頼む……」
魔法石に記憶した映像を見ているなら知っていておかしくはない。
ただ、それでいてボクに踏まれることを前提に、ボクに転移魔法を発動させたのなら、コイツは既にベルデの仲間な気がする。
『取説君:ルカ‐0721号は、ピンヒール等のハイヒールで治療対象者を踏むことで、高次治癒魔法を発動できます。しかし、女性異性愛者にはハイヒールを発動することが出来ません』
『取説君:例外的に、男性に懇願された場合は、ルカ‐0721号は女性異性愛者にハイヒールを発動することが可能になります。その際、懇願者がHP50以上の男性であれば一人で条件クリアとなりますが、懇願者がHP50未満の男性の場合は、同時に複数人からの懇願が必要となります』
ボクは、ズヴァルトの背中をピンヒールで踏んだ。
これで高次治癒魔法が発動。
ズヴァルトは瞬時に回復。
ただ、これに加えて妙に気持ち良さそうな表情をしていた。
やはり、コイツはベルデの仲間だ。
「ご気分は如何ですか?」
「おっ……。おお……お陰で元気が出て来たよ」
ズヴァルトは、取り繕ったかのように真面目な顔を作っていた。
しかし、中身はベルデと同じってことが証明されたし、ボクにとっては既に威厳もへったくれも無い。
続いてボクは、メラースに確認した。
コイツは副本部長だから、ノワールよりも立場が上のはずだ。
「治療してもよろしいでしょうか?」
「頼む……」
「方法は、先程ズヴァルト本部長を治療した方法と同じになりますが」
「構わん。頼む」
メラースが、ボクに背中を向けて来た。
良く言えば踏まれることを覚悟している。
悪く言えば……ベルデと同類だ。
ボクは、メラースの背中をピンヒールで踏んだ。
つまり、高次治癒魔法を発動させた。
勿論、メラースも瞬時に回復。
ただ、コイツは、
「あっ! イイー!」
って思い切り歓喜の声を上げていた。
予想通り、やっぱりコイツも間違いなくベルデの仲間だ。
「ご気分は、如何ですか?」
「お……おお……。随分と楽になった。ありがとう」
メラースもズヴァルトと同様に真面目な顔を取り繕ったけど……。
喜びを大きな声で表現しちゃった後だし、既に時遅しと言えよう。
ボクは、さらにノワール、レッドもピンヒールで踏んで治療して行った。
この様子を、ベルデはモノ欲しそうな顔で見ていたけど……。
やっぱり、お前も踏まれたいんだな!
でも、今日はおあずけ……放置プレイしておこう。
「リマの方も頼む」
こうボクに言ったのはジノン。
ボクは、男性に頼まれないと、女性異性愛者を治すことが出来ない。
それを知って言ってくれたんだ。
「了解。あと、ありがとう」
「まあ、いつものことだ」
ボクは、リマの背中をピンヒールで踏んだ。
リマの口からは、別に喜びの声とかは出てこなかったけどね。
むしろ、出た方が怖い。
急斜面に点在するワイバーンの巣を指さしながら、
「それでルカ君。ここで、あそこに居座るワイバーンを討伐するわけだな?」
と、ズヴァルトがボクに聞いて来た。
この時、彼は完全に頭がM男から本部長仕様に切り替わっていた。
「はい」
「儂の記憶が確かなら、ここは、旧ダイスーシー村の先か?」
「そうです」
「では、ここでワイバーンを三体、討伐してもらおうか」
「三体ですか?」
「せっかくならと思ってな。よろしく頼む」
「わ……分かりました」
ただ、ココまで来たら、一体も三体も変わらないか。
一気に片を付ける。
ボクは、アイテムボックスから普通の靴を取り出し、それに履き替えた。
さすがに、ワイバーン討伐をピンヒールでヤルのはムリがある。
続いてボクは、アイテムボックスから、武器屋の女から貰ったアタマ弱い系の短剣と、ゼリオンの毒……インゲノールの入ったビンを取り出した
そして、その短剣の刃にインゲノールを塗る。
「それは、ゼリオンの汁か?」
「そうです」
「しかし、そんなにたくさん。どうやって手に入れた?」
「秘密です。では、そろそろ行きます。ジノン、下に落ちて来たヤツの処理をお願い」
「了解。じゃあ、結界解除」
ジノンが簡易結界を解除した。
ここからが本番だ。
ちなみに、Hな本番じゃないよ!
「転移!」
前回と同様に、ボクは、山の斜面の上方……ワイバーンの巣よりも、さらに上の位置に空間移動した。
そして、
「超高速稼働!」
一つ目の巣に向けて超高速で移動した。
勿論、ターゲットはメスだ!
ボクは、一頭目のメスの背中に、勢いに任せてインゲノール付き短剣を突き刺した。
当然、そのメスは、苦痛から、
「グギャー!」
と悲鳴にも似た声を上げた。
ただ、超高速稼働で勢いがつき過ぎちゃって、短剣が深く突き刺さっちゃってね。
ワイバーンの背中から短剣を抜くのに、ちょっと苦労したよ。
『取説君:ルカ‐0721号は、抜くのが大変得意です』
これって、ちょっと意味が違うような気がするんだけど……。
それはさて置き、ボクは、超高速稼働で移動しながら、二頭目、三頭目の背中を、インゲノール付き短剣で斬りつけて行った。
頭から真っ逆さまに地に向かって落ちる三体のワイバーン。
それを、地上ではジノンが待ち受ける。
彼は、魔法で身体強化すると共に、剣に魔法付与を施し、ワイバーンの首を刎ねた。
ボクは地上に降り立つと、
「回収!」
ワイバーンの死体三体を、アイテムボックス内に収納した。
そして、
「皆さん、急いで戻ります。転移!」
ボクは連続転移魔法を発動し、みんなを連れて、一気にホウテイ市冒険者ギルド前まで移動した。
転移終了。
案の定、体調不良者多数だった。
ただ、今回はベルデも辛そうな表情で地に寝転んでいたんだけど……。
念のため、ボクは、ベルデのステータスを覗き見した。
すると、
『仮病』
って記載されていたよ。
つまり、これに乗じてボクに踏んで欲しいってことだ。
やっぱり、コイツはMの上級者だ!




