28.昇格試験資格!
ボク達は、ギルド本館に戻って来た。
ここからが本題だ。
早速、ボクはリマに確認する。
「今回の成果を以て、ジノンはSランクの昇格試験って受けられますか?」
「十分可能です。と言いますか、お釣りが来ます」
「では、そのお釣り分で、ボクの昇格試験資格を得ることは可能でしょうか?」
「そうですね。さすがに、Sランクへの飛び級は認められていませんけど……。確認しますので、少々お待ちください」
一旦、リマが奥に引っ込んだ。
ボクがまだBランクになって数日しか経っていないってのもあるし、判断が難しいんだろうと勝手に推察する。
待っている間、ちょっと手持ち無沙汰になった。
すると、武器屋の女がボクに話しかけて来た。
「短剣だったわね。一つ、似合いそうなのを持って来たけど」
「でも、今回のワイバーン討伐用に必要だっただけで、当分使いませんけど?」
「普段から使う用じゃないの?」
「はい」
「まさかとは思うけど、ワイバーン相手に接近戦でもするつもりだったの?」
丁度この時だった。
ジノンがボクの肩を叩いた。
ボクが彼の方を振り返ると、彼は首を横に振っていた。
こっちの手の内を、他人の漏らす必要は無いってことだ。
ある意味、こう言った作戦内容は、パーティの知的財産だからね。
「ええと、企業秘密です」
「どう言う使い方をしようとしていたのかは気になるけどね」
「まあ、ジノンの短剣を借りて使ったんですけど……。まあ、これ以上は話せません」
「気になるけど……。ただ、護身のために持っていてイイと思うので、今回のお詫びとお近づきの印ってことで、この短剣を差し上げたいんだけど」
武器屋の女が、カバンから短剣を取り出してボクに差し出して来た。
その短剣は、柄が濃いピンクで鍔部分は金色、鞘は真っ赤。
鞘から抜くと、刃は淡い青緑色を帯びていた。
随分と色物……と言うか頭悪そうな雰囲気が滲み出ているような気がしてならないんだけど!
「随分と派手ですね」
「まあ、女性用として、うちの亭主が作ったモノなんだけど、なかなか似合う人がいなくてね。でも、アナタなら絵になるかなって」
なんか、売れ残り品を押し付けられた感がある。
あるいは、この短剣に似合うレベルでボクが頭悪そうに見えるとか。
でも、タダなら貰っておこう。
今後も、使うことがあるだろうし。
「では、ありがたくいただきます」
ボクは、その短剣を受け取るとアイテムボックスに収納した。
さすがに、その短剣を、ここで腰に付ける勇気は無い。
「あれっ? しまっちゃうの?」
「無くすとイケませんので。有事にはキチンと使わせていただきます」
武器屋の女は、ボクに、この短剣を腰に差して欲しかったみたいだけど。
でも、冷静に考えると、売る側も恥ずかしいんじゃないかな、これ。
今回は、売買じゃなくて譲渡だけどさ。
それから少ししてリマがギルド長を連れて戻って来た。
その後には、初めて見る大柄でマッチョな男性の姿があったけど、彼からは凄まじいほどの闘気が湧き上がっていた。
魔獣との戦いでも、Hな方でも、きっと凄まじいレベルの戦闘力を見せつけること間違いないだろう。
ギルド長は、開口一番、
「二人とも絶好調らしいな。先に結論を言おう。今回のワイバーン五体の討伐を以て、ジノンにはSランクの昇格試験資格が、ルカにはAランク昇格試験資格が得られるものとする」
と言ってくれた。
グダグダ長々と評論を言ってから結論を言うんじゃなくて、先に結論を言ってくれたのは、精神的に非常に助かる。
「ありがとうございます」
「まあ、審査には、それぞれ50000Genかかるが、それは、今回の討伐代から差し引いておく」
「了解です」
「試験は、最速で明日の十時。それ以降なら、ここで試験担当官の予定確認と併せて日程調整するが、どうする?」
ボクは、明日十時で全然問題無い。
ジノンはどうだろうかと思って彼の方を振り向くと、笑顔で親指を立てていた。
明日の十時で大丈夫と言うことだろう。
「じゃあ、明日の十時で。ジノンもイイよね?」
「ああ。勿論」
あとは、試験内容なんだけど……。
何も知らずにOKしちゃったけど、大丈夫なんだろうか?
Aランク昇格試験は、過去にジノンも受けているわけだし、非人道的な何かがあるってわけではないと思うけど。
「それと、紹介しておく。コイツが、ルカの昇格試験を担当する副ギルド長のベルデだ。ワイバーン討伐を成果とすると聞いたので、治癒魔法での昇格ではないとの判断になる。なので、ベルデと直接戦ってもらうことになる」
ギルド長が、例の大柄なマッチョマンをボク達に紹介した。
ただ、ベルデって、スペイン語で緑って意味じゃなかったっけ?
ギルド長はレッドだし。
あと白が揃ったらおもしろいな……なんて思ったよ。
「ルカです。よろしくお願いします」
「ベルデだ。よろしく」
ボクは、早速、ベルデのステータスを覗き見した。
情報があった方が作戦を立てやすいからね。
彼のステータス画面には、
『異性愛者で、傍目にはSを装っているが、中身はMの上級者』
と書かれていた。
毎度の如く、取説君が読み上げてくれたけど。
勿論、これは勝ったと思ったよ。
完全に、女王様モードには抗えない体質に違いない。
「あと、ジノンの担当は、ギルド長の俺がやる」
やはり、Sランク試験ともなると、ギルドのトップが直々にってことになるんだろう。
と、この時、ボクは思ったけど、後々、これが間違いだったことを知らされる。
まさか……なんだけどね……。
「よろしくお願いします」
そう言うと、ジノンは深々とギルド長に頭を下げた。
受験資格アリと判断してもらえたことに、それだけ感謝しているんだと思う。
「こっちこそ、お手柔らかにな。それにしても、ワイバーンの死体を見てみたが、全部綺麗に首が刎ねられていたな。首を刎ねたのはジノンか?」
「はい」
「ただ、死体全部の背中に切り傷が一つ。鑑定士の話では、そこからゼリオンの毒を感じ取ったとのことだ。これをやったのは、ルカだな?」
「その通りです」
「どうやって背中を斬りつけたかは分からんが、ルカがゼリオンの毒でワイバーン五体を弱らせ、ジノンがソッコーで首を刎ねた。そして、急いで死体を回収して他のワイバーン共の反撃に遭う前に転移魔法で戻って来た。そんなところだろう」
ギルド長には、かなり、こっちの手の内を読まれている。
さすがとしか言いようがない。
ただ、超高速稼働のことは知られていないから、多分、ギルド長は、ボクが小転移でワイバーンの背の上に移動して短剣で斬りつけたって推察していると思う。
小転移での移動も一つの手だけど、それだと転移後に、ワイバーンの背に乗った状態で短剣で斬りつけるモーションに入ることになる。
しかし、それだと、斬りつける前に、ボクが背中の上にいるってことが、ターゲットとなったワイバーンに気付かれてしまうだろう。
そうなれば、ワイバーンはボクを振り落としにかかる。
ボクは、ワイバーンを傷つける前に簡単に振り落とされるに違いない。
ところが、超高速稼働なら、その素早い動作の中でワイバーンの背中を斬りつけることが可能だ。
これなら、ボクの存在が、『傷つけられる時点』でワイバーンに気付かれることは無いって判断した。
だから、小転移ではなく超高速稼働を使ったんだ。
ただ、このギルド長の言葉を聞いて、武器屋の女は驚いていた。
思わず、
「本当に接近戦したの?」
と声を上げた。
「ええ、まあ」
「だって、空飛ぶ相手でしょ? どうやって背中を斬りつけたのよ?」
「それも企業秘密です」
多分、バレたところで、他の人には、そう易々とマネできない倒し方だとは思う。
しかし、簡単にできないだけであって、絶対にマネできないわけではない。
超高速稼働が発動できる人がいれば、同じことをやるのは十分可能だ。
なので、他言する必要は無いし、むしろ、他言しない方がイイってことだ。




